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皇妃コーミの企み

 リックはスケベな妖怪ハンターです。


 リックが地下牢で妄想に耽っていた頃、イナガンヒ王国の国王のネールは、魔王ジュカブの配下のザースにそそのかされ、軍を率いてベカサク帝国に向かっていました。


「陛下、やはりイナガンヒ王国のネール陛下は、魔王に取り込まれているのですわ」


 自分も魔王の手先なのに、そんな事を臆面もなく言い出す皇妃コーミです。


 顔は綺麗ですが、心の中は四十年前の隅田川より汚れていると思う地の文です。


「お黙り!」


 的確な指摘をしたはずの地の文に切れるコーミです。


「そのようだな。直ちに皇軍を出撃させ、叩き潰してみせるぞ、愛しい君」


 皇帝ケスウヨリは白々しい芝居をして言いました。


「頼もしいですわ、陛下」


 コーミは微笑んで応じました。恐ろしい人だと思う地の文です。


(ベカサク軍とイナガンヒ軍が戦って疲弊すれば、我が魔王軍の圧倒的な勝利になる。できるだけ戦わせねばならぬ)


 コーミは心の中で非道な策略を練っていました。


 


 ネール率いるイナガンヒ軍はケスウヨリの皇宮の直前で進軍を停止しました。


「ケスウヨリ陛下に申し上げる。貴公がお匿いになっている猫をお引き渡し願いたい。さもなくば、我が軍はこのまま貴公の城の門を突き破るまで」


 ネールは部下が用意した台の上に立ち、大きな声で言いました。


 しばらく辺りを静寂が支配しました。


「おのれ、ケスウヨリめ、惚けるつもりか!?」


 ネールが歯軋りした時でした。皇宮の門が開き、遊魔とリックが出て来たのです。


「え?」


 そんな展開は想定していなかったネールは呆気に取られました。


「ネール陛下、貴公のお望み通り、猫をお引き渡し致す」


 門の上にある見張り台に姿を見せたケスウヨリが言いました。


(何してるのよ、ボケ皇帝!)


 隣で引きつり笑いをしているコーミです。


(作戦開始するにゃん、皇帝陛下)


 イナガンヒ軍に向かって歩きながら、リックは思いました。

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