騙された国王
リックはスケベな妖怪ハンターです。
その世界を我がものにしようと企む豚のせいで、イナガンヒ王国とベカサク帝国は戦火を交えようとしています。
「誰が豚だ! 余は魔王ジュカブだ!」
地の文の気の利いた比喩的表現に切れる魔王ジュカブです。
イナガンヒ王国の宰相であるザースは、実は豚の配下です。
「だから余は豚ではない!」
続けざまにボケる地の文に更に切れる魔王です。
ザースはジュカブの命に従い、国王ネールを唆し、隣国のベカサク帝国と戦争を始めさせるつもりです。
彼は執務室を出て、玉座の間に出向きました。
「恐れながら、申し上げます」
ザースは跪いて言いました。
「何だ?」
ネールは鬱陶しそうに尋ねました。ザースは頭を垂れて、
「逃亡した猫をベカサク帝国が匿っておるとの情報が入りました。如何致しましょう?」
ニヤリとしました。ネールは熱り立って椅子から立ち上がり、
「軍を送り、猫を引き渡すように告げよ。応じぬ場合は、実力行使だ!」
すでにザースの術中であるネールは目を血走らせて叫びました。
「はは!」
ザースは再び頭を垂れ、不敵に笑いました。
「私も出陣するぞ、ザース! 馬を引けい!」
ネールは脇に控えていた小姓に命じました。小姓はすぐさま玉座の間から出て行きました。
(これは願ってもない事だ。猫にでも討たれてくだされ、愚かなる国王陛下)
ザースは腹の中でネールを嘲笑いました。
ベカサク帝国の皇帝ケスウヨリは遊魔を客間に通して、自分は玉座の間に戻りました。
皇妃コーミも戻って来ています。
「申し上げます!」
そこへ帝国軍の司令官が入って来ました。
「如何した?」
皇帝は玉座に座って尋ねました。
「イナガンヒ王国から大軍がこちらに向かっております。如何致しましょう?」
司令官は蒼ざめた顔で言いました。
(敵は思ったより動きが早いな)
皇帝は腕組みをしました。




