皇帝の真意

　リックはスケベな妖怪ハンターです。

　そのスケベさが災いし、リックはまたしても地下牢に入れられてしまいました。

　ところが、何故かそこへ皇帝ケスウヨリが現れたのです。

「お前と二人で話せる場が持ちたかった」

　皇帝は皇妃コーミが実は魔王ジュカブの手先だと知っていました。

「お前様」

　皇帝の後ろには美人幼妻の遊魔もいました。

「遊魔！」

　リックは遊魔が無事なのを知って涙ぐみました。

「全て猫神の魔遊（まゆう）から夢のお告げで聞いておる。私に力を貸して欲しい」

　皇帝が真顔で言いました。でも、リックにではなく、遊魔にでした。

「そうなんですかあ」

　何も事情を知らない遊魔は笑顔全開で応じました。

（この人、信用して大丈夫なのかにゃん？）

　眉をひそめて訝（いぶか）しむリックです。

「案ずるな、リック。皇帝は信用できるぞ」

　また突然、遊魔に降臨した魔遊が言いました。

「魔遊、現実で会いたかったぞ。私が悪かった。よりを戻してはくれぬか？」

　皇帝はいきなり魔遊を口説き始めました。リックは遊魔の身体を抱き寄せているケスウヨリに嫉妬し、それを跳ねつけない魔遊にムッとしました。

「ケスウヨリ、もはや我（われ）はリックのもの。そのような事を申すでない」

　魔遊はリックの嫉妬を感じたのか、皇帝を押しのけました。

「何と、そうなのか？」

　今度は皇帝がリックに嫉妬の目を向けました。リックはその目の鋭さにビクッとしました。

「ケスウヨリ」

　魔遊が窘（たしな）めるように言うと、皇帝は肩を竦めて苦笑いし、

「失礼した、リック殿。魔王ジュカブは我らの共通の敵。力を合わせ、討ち取ろうぞ」

「はい」

　リックも苦笑いして応じました。皇帝はチラッと上を見て、

「そろそろ戻らぬと、コーミが怪しむ。では、またいずれ」

　遊魔を伴って、隠し通路を使って帰って行きました。

「あの綺麗な皇后様が魔王の手先だなんて……」

　少し残念に思うスケベなリックです。