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ベカサク帝国

 リックはスケベな妖怪ハンターです。


 猫神ねこがみ魔遊まゆうから魔王を倒すように頼まれたリックは、魔遊の言葉に従って、イナガンヒ王国の隣にあるベカサク帝国に向かいました。


 以前、旅を共にし、その後成り行きで再会したリックを上回るスケベな仙人からパクった大型きんと雲で、すんなりとベカサク帝国に辿り着きました。


「順調過ぎて怖いくらいにゃん」


 リックは嬉しそうに呟きました。


「そうなんですかあ」


 遊魔は笑顔全開で応じました。


 実際、これから怖い目に遭うのを知っている地の文です。


「話の先取りはやめて欲しいにゃん!」


 地の文に涙目で猛抗議するリックです。


「リック様と遊魔様ですね。お待ちしておりました。ベカサク帝国の侍従長のウゴンでございます」


 腰の曲がった白髪頭の老人が出迎えてくれました。


(さすが魔遊しゃん、手回しがいいにゃん)


 リックはニンマリしました。


 


 ここは、ベカサク帝国の皇宮の地下深くにある秘密の部屋です。


 でも、魔法小僧は出て来ません。


「間抜けな猫がお話の通り、参りましたわ」


 大きな姿見の前で話しているのは、皇妃のコーミです。


 この世界で一番の美女と言われ、まだ皇太子であったケスウヨリに見初められて結婚しました。


「手筈は良いか?」


 誰かの声が尋ねました。コーミはフッと笑って、


「もちろんにございます、ザース様」


 姿見に映っているのは、何故かコーミではなく、イナガンヒ王国の宰相であるザースでした。


「頼んだぞ、コーミよ。全ては魔王ジュカブ様のおんために」


 ザースが言いました。コーミは胸に手を当てて頭を下げ、


イザンバ、ジュカブ(ジュカブ様に栄光あれ)!」


 何やら謎めいた言葉を発しました。


「イザンバ、ジュカブ」


 ザースは真顔で応じました。


 リックはともかく、遊魔が危ないと思う地の文です。


「僕の事も心配して欲しいにゃん!」


 どこかで聞きつけたリックが叫びました。

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