大魔王の存在
リックはスケベな妖怪ハンターです。
魔王ジュカブが予想以上にあっさり倒されたので、拍子抜けした地の文です。
「大魔王の存在など、全く知らなかったぞ」
ジュカブの結界が消えたので、ようやく美人幼妻の遊魔と入れ替われた猫神の魔遊が言いました。
「全知全能の猫神様でも、ご存知なかったのですか?」
美人三姉妹の長姉のコーミが言いました。
魔遊は全知官能だと思う地の文です。
「黙りゃ!」
ちょっとお口が過ぎた地の文に切れる魔遊です。
「あ、何かが出てくるよ」
大神官のサーギナが魔王の城の更に先を指差しました。
「え?」
一同は一斉にそちらに目を向けました。
魔王の城の尖塔が崩れ落ち、その向こうにそれよりも遥かに高い漆黒の城が地面からせり上がってくるのが見えました。
「おお!」
どさくさに紛れて、またコーミ達の母親であるキーミの肩を抱いて驚くベカサク帝国皇帝のケスウヨリです。
「陛下」
目を吊り上げてケスウヨリの背後に立つコーミです。
「はい!」
慌ててキーミから離れるバカ皇帝です。
(陛下、私も見て!)
三女のサーミは相変わらずです。次女のユーミは項垂れています。
「もしかしてあれが大魔王の城かにゃん?」
大魔王が女と聞き、行く気満々のリックが呟きました。
「リック、其方は一体何を期待しておるのだ?」
魔遊がリックの背後に立ち、血も凍るような声で囁きました。
「ひい!」
リックはもう少しで全部漏らしてしまいそうになりました。しかし、何とか堪え切り、
「もちろん、大魔王を倒すためにゃん。何を言っているにゃん、魔遊しゃん」
顔を引きつらせて言いました。魔遊はフッと笑い、
「そうであるな。本来なら、ジュカブを倒せば其方と遊魔は元の世界に帰れるはずであったが、そうはならなかったのは大魔王の魔力のせいであろうからな」
「そうにゃんですか」
某お師匠様の口癖で応じてしまうリックです。




