魔王の最期
リックはスケベな妖怪ハンターです。
魔王ジュカブは立ち位置的には絶体絶命です。
(あの小娘、これを狙っておったのか?)
ジュカブは大神官のサーギナを睨みました。
「何?」
のほほんとした顔でジュカブを見るサーギナです。
それほどの知略を使える人相ではないと思う地の文です。
「魔王ジュカブ、今は亡き我が愛する夫の仇!」
美人三姉妹の母親のキーミが言いました。
「え?」
その言葉にギクッとしてしまう生まれついての女たらしのベカサク帝国皇帝のケスウヨリです。
「其方達が揃ってしまったのが一番の失策……。それもこれもこの小娘のせいだ!」
ジュカブは改めて憎しみの目をサーギナに向けました。
「何よ、私は豚さんに何もしていないよ」
不満そうに口を尖らせて腕組みをするサーギナです。
(可愛いけど手に負えない……)
リックとケスウヨリとジュカブは心の中で思いました。
「余は豚ではない! 魔王ジュカブじゃ!」
ハッと我に返り、きっちり突っ込むジュカブです。そしてニヤリとし、
「わしを倒しても、大魔王様は倒せぬ。決してな」
意味深な事を言いました。
「え? 大魔王がいるのかにゃん?」
リックは仰天して尋ねました。ジュカブはリックを見て、
「そうだ。お前達には決して勝てぬ。大魔王様の魔力は無限。どれほど力を付けようとも、人間には勝てぬ!」
高笑いをしました。
「ジュカブ、覚悟!」
キーミの掛け声で、四人が光の波動を発しました。
「わしを倒せば、更なる地獄の門が開く! 後悔するぞ!」
ジュカブは高笑いを続けたまま、光に飲み込まれ、ジワジワと消えていきました。
(もう無理だにゃん。逃げるしかないにゃん)
リックは荷物をまとめ始めました。
「大魔王様は最強の魔女であらせられる。恐怖に打ち震えるがいい!」
ジュカブはそう言い残すと、遂に消滅しました。
「え? おんにゃのこなのかにゃん?」
俄然やる気が出るリックです。




