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第五十一話 再始動

『お疲れ様です。俺、今日から活動再開するので、パソコンとデスクと椅子持ってきてください』


運命は変わり始めていた。

かつて、天才配信者と言われ、活動休止から2年がたった今も熱狂的なファンが多い彼。

多くの配信者に夢を見せ、この業界の先頭に立った男。

八剣健斗、年齢不明、性別男、職業配信者の彼。


個人情報の漏洩を活動期間中、いや、休止期間中でさえ、一切出さなかった用心深い配信者。

そして、彼の素顔を知っていのは、親族、彼女、マネージャー、そして元カノだけだった。


誰も予想していない、なにもない春の日。


八剣健斗の公式Tmitterからとある呟きが投稿された。


《重大発表》

本日の日本時間20時より、一時間限定の配信を行います。

健斗、再始動です。


すると、その呟きには瞬く間に、いいねがつけられ、拡散されていった。

1分もすれば、いいね数は10万を超え、30分後にはネットニュースにもなった。

そして、突然なる再始動に慌てて、ファンは動画を回し、緊急報告の動画をアップする人もいた。


そう、彼の影響力は凄まじい力である。


この呟きは海外まで渡り、海外ファンも配信を見る準備をしているだろう。

呟きが投稿されてから、2時間が経過した頃。

俺の家には一人の男性がやってきた。


「健斗さん、突然なんですか!?再始動って!今までこんな話なかったじゃないですか!」


「まぁ、変わったんですよ。気持ちが」


【奈々餅 晴也】

Tmitterで俺が推薦した、マネージャー。

仕事が早く、特に動画編集や裏方作業には抜かりがない。

そして、仕事とプライベートをしっかり分けれる、出来る男。


正直、俺よりも仕事が出来る。


年齢は20歳で大学に在学中。

旧帝大なのは、置いといて、IT系に優れており、機械のこととなれば右に出るものはいない。


「はい、じゃあ組み立てますよ!」


「お願いしまーす」


椅子や机を組み立てたのち、デスクトップPCもパーツを買ってきて、家で組み立てる、いわゆる自作PCだった。

デザインにもこだわっており、俺の部屋は全体的に白が多いので、白のケースのパソコンだった。


配信に必要不可欠なグラフィックス性能はグラボが最新型なので、大丈夫。

CPU性能も申し分ないものとなっていた。


総額300万円の現環境最強PCを約30分程度で組み立てた。


「じゃあ、今日の夜。よろしくお願いしますね」


「了解です、家からやるので、リンク貼っといてくださいね」


「あ〜い」


そう言って、全ての作業を終わらし、帰っていった。




★☆★☆★☆★




「再始動って本当!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!」


信じられないほどの声量でドアを開け、叫ぶ美鶴。


「本当だよ、今後、コラボ配信とかもやっていけたらいいな」


「カップル系Vとかありかも〜」


「そんなことしたら、炎上するわ」


「Vが恋愛しちゃダメとか、いつの時代の話?」


「美鶴ちゃんはよくても、俺が嫌」


「え〜〜」


フラフラと歩み寄ってき、俺のベッドに寝転ぶ。

無防備な姿で目を瞑る美鶴。


ーーーえ?もしかして、究極の選択を迫られてる?


突然なるラッキーイベント(?)に動揺する俺VS全くそんな気がない美鶴。


ーーー和也くんのベッドふかふか〜


全く持って、そんな気はなかった!

というか、これ以上にない積極的な行動をしているのにも関わらず、幸せな顔をしている。

さらに動揺する俺。


「な、なぁ。そこ、俺のベッドなんだけど、、、」


「あぁ、うん!彼女なんだし、いいでしょ?」


か、可愛い、、、!

俺のHPは1になり、瀕死状態。

崖っぷちになった、俺、さすがに限界を迎えたので、スマホで木葉に連絡。


『助けて!』


とだけ送ると、俺の部屋まで駆けつけてきた。


「兄ちゃん、、、よばないでくれr、、、」


「え?」


「美鶴さん、、、?兄ちゃんが夜な夜な一人で【自主規制】してる場所だよ、、、?」


「あ、、、え、、、あ、、、」


美鶴は顔を耳まで赤くして、部屋を出ていった。


「もっと違う言い方あるでしょ!!!!」


俺は泣く泣く、その場を乗り越えたのであった。

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