表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/166

残る火種と新たな依頼

うっかり騎獣の名前を間違えていたので、訂正しました(^^;)


どうもすみません<(_ _)>

王都からの帰路は、いつも以上のハイペースで飛ばした。ヒューイが暫く放っておかれた鬱憤を晴らすように走った為だったが、早く帰れる分には構わない。移動中、自分達に掛ける防護結界(バリア)を厚くしたのは当然の措置だ。


「やっと帰って来れた」

「このところ、出先でのトラブル続きで、帰りが遅れてばかりだったからね……」

「ホッとするよ。当分の間、面倒事は勘弁だな」


家に帰り着くと、ステフと二人して愚痴めいたことを口にしてしまった。やはり、我が家が一番だ。従魔達も寛いでいる。ウルリヒはご機嫌な声を上げていた。何を言っているか分からないが、赤ん坊言葉はそんなものだろう。


街に戻ってから数日後、冒険者協会経由で奪われていた装備品の一部が戻って来た。インナーなどの量販品はともかく、外套や軽鎧、魔法鞄(マジックバッグ)などの特注品は、王都でも知名度のある『翠聖』の物との認識が高く、売りに出されてすぐ足がついたそうだ。


そのおかげで、拉致実行犯の一部は王都警備隊に捕縛された。やはり傭兵だったという。しかし、こちらの隠形潜伏スキルを上回る手練れは、まだ捕まってはいないらしい。今後必ずしも敵対するとは限らないが、不安要素が残ってしまった。


「ヴィルさん、ステフさん、お帰りなさい」

「よう、疲れた顔して、どうした?」


帰って早々に会いに行ったランディとフェルから、挨拶がてら声を掛けられた。それにステフ共々返答する。


「ただいま。王都でちょっと厄介な事に巻き込まれたんだ。まあ、無事に終わったから良かったけどね」

「とりあえず、目的の物は手に入ったよ」


何はともあれ、王都から持ち帰った小型通信魔道具を、ウルリヒの預け先となるランディ達に無事渡せた。これで漸く、突発的な依頼にも対応出来る。ステフと二人、ホッと胸を撫で下ろした。


それからは、大した波乱も無く過ごした。ウルリヒはすくすくと育ち、首も据わり躰付きもしっかりして来ている。乳以外に食べられる物も徐々に増えて、動きが活発になっていった為に、常に親である自分とステフや従魔達が監視の目を光らせていた。


「俺は長老(育ての親)から『手のかからない子だった』って聞いていたんだがな……」

「じゃあ、ウルはオレに似たんだね! オレはよく動く子だったらしいからさー」


ウルリヒに振り回された一日の終わりにそう呟くと、ステフから笑いながら返された。ぐったりしているうちに、飛ぶように日々が過ぎて行く。そんなある日──


「ヴィル、浄化の指名依頼入ったよ。今度は南の国境付近だって」


冒険者協会に依頼の確認しに行っていたステフが、帰って来るなりそう言った。


「へぇ、南か。行ったことないな」

「オレはアベル達と護衛依頼で行ったことあるよ」

「どんな所だ?」

「やたらと暑くて賑やかな所だよ。西の国境付近とは全然、雰囲気が違うな」


ランディに連絡をしてウルリヒを預ける算段をし、手早く荷造りすると、ステフと共に南へ向かう用意をした。まずは、国境にある商業都市に行く。そこにある冒険者協会の支部で、今回の依頼に関する詳細を聞かねばならない。


ウルリヒはランディ達が迎えに来てくれた。彼らの家で預かってくれるという。有難い。


そして、出発しようといつものようにヒューイを先に街の外で待たせ、ステフやデューイと一緒に東門へ行くと、そこに見知った顔ぶれが並んでいた。


「やあ、今回の依頼もこの面子のようだな」

「協会の人材不足のせいだろうよ。変わり映えしないメンバーだが、よろしくな」


瘴気溜まりの浄化依頼でよく顔を合わせる上級冒険者達──『黒槌』『紅刃』『蒼牙』『白爪』が勢揃いしている。彼らの騎獣達も、こちらに身を乗り出していた。ライの騎獣である大山猫のセスが一早くこちらに近付いて来て、撫でて欲しそうに足元に擦り寄る。


「セス、久しぶり! ヨシヨシ」

「ヴィルの騎獣(たら)しは相変わらずだな」

「人聞きの悪いこと言う奴だな。セス、主に似るなよ」


絡んで来たライに軽口で返し、その隣のトールに話し掛ける。


「王都から来たのなら北門が近いだろう? 何で皆、東門にいるんだ?」

「協会に寄ったら、ヴィル達はもう依頼を受けた後だったから、まだ街にいるか確かめに来たんだよ」

「早めに合流出来たらと思ってね!」


トールの返答に、サイラスが付け加えた。レフは黙って、辺りをキョロキョロと眺め回している。その不審な様子にステフが突っ込んだ。


「レフ、何してるんだ? 探し物?」

「いや、お前らの赤ん坊、何処行ったかと思って」

「ウルなら、依頼を受けてすぐ預かって貰ったよ。もう危険に晒したくないからね」


そう答えるステフに、レフは目を丸くしていた。


「何だよ、レフ、どうかした?」

「ステフが親っぽいこと言ってる……すげぇ違和感!」

「何だよ、それ! 親っぽい、じゃなくて親なんだけど!!」


一人息巻くステフを囲み、皆が笑っている。こっちはそれ処ではなく、騎獣達に取り囲まれて撫でて攻撃に遭っていた。


「ディーン、フロル、あんまり押さないで! おい、ルド、甘噛みするなよ! セス、さっき撫でてやっただろう?」


騎獣に埋もれてあわあわしていると、デューイが間に入って助け出してくれた。うちの子は頼りになる。その上空で、ルーイがふよふよ飛び回りながら、暢気にギョエーと鳴いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ