辺境伯の思惑
予約投稿の設定ミスで、二話同時に公開してしまいました。
m(_ _)m
翌朝、朝食のために広場へ行くと、先に広場へ来ていた伯爵令息に見つかり纏わり付かれた。
「おはよう『翠聖』、今日も麗しい」
「はぁ……」
「朝食を一緒に……」
「遠慮する」
食い気味に断るが、諦めが悪い。広場中逃げ回って、トールや『紅刃』を盾にし、何とか距離をとる。その途中で見かけた支部長に、伯爵令息のしつこいストーカー行為を抗議した。
「あれ、何とかならない? 迷惑だ」
「……堪えてくれ。スポンサーである辺境伯の関係者だから、無碍には出来ない」
支部長が宛てにならないとなると、あとは辺境伯軍の司令官か。拠点内の軍エリアを探して、司令官に訴える。
「辺境伯の息子が、邪魔なんだが、何とかならないか?」
「君は顔に似合わず、歯に衣着せないのだな。言い分はもっともな話だ。彼はこちらの命令系統には属さないが、こちらもまた、彼の意向を汲む義理もない」
司令官はそう言って、副官に何事か指示すると、数人の兵が動いた。彷徨く伯爵令息を兵が取り囲み、上手く丸め込んで遠ざけてくれたようだ。辺境伯軍の軍人は有能らしい。
ようやく朝食にありつけて、人心地がついたところで、支部長の指示が飛ぶ。瘴気溜まり本体が片付いたので、掃討戦に本腰を入れる方向だ。この先、魔物の数が落ち着けば、いずれ軍は手を引いて冒険者が主体になるだろう。
軍の出動を皮切りに、冒険者達も後に続く。荒れ地に散開して、魔物の間引きにかかった。騎獣に乗った上級冒険者達も、他の冒険者達の先陣を切る形で進む。こちらもステフと共にヒューイに乗って、掃討戦に参加する。デューイは、ウエストポーチのように腹に貼り付いていた。
武器に魔法を纏わせ戦う上級冒険者達の中にあって、ヒューイは異色な存在だ。こちらは簡単な口頭指示のみで、ヒューイは自由に動く。魔物の群れに当たると、群れ単位で瞬く間に行動不能にした。要するに、オーク戦の再現で、魔物の頭だけ食い散らかすのだ。
「もう大丈夫かな。じゃあ、始めようか」
「了解」
周りに動くものが無くなった頃合いで、ヒューイから降りてステフと二人、魔石の回収に勤しむ。めぼしい素材を剥ぎ取った後、ヒューイに残った魔物の残骸を与えた。ヒューイが満腹になったところで、拠点へ引き上げる。
拠点に、あのストーカー令息の姿は無く、協会の連絡員が居残っていた。ちょうど良いと、戦果報告がてら雑談して、情報を探る。伯爵令息の来訪に、伯爵の思惑がどう絡んでいるのか、気になるところだ。
「令息に絡まれて災難だったそうだな、『翠聖』のヴィル」
「まさか、あのストーカー行為が伯爵の指示って訳じゃないだろうね?」
「憶測に過ぎないが、あのストーカー令息は伯爵の三男でな、父親と長男の話を聞き囓って暴走したんだろうよ」
「暴走した?」
「伯爵も、有能な上級冒険者と繫ぎはとりたいだろうし、会話の端々で『聖女』並の能力だとか凄い美人らしいとか、いろんな形容詞も出るさ」
「それで?」
「それを三男が脳内変換して、自分に都合良く話を繫ぎ合わせた結果じゃないか? 自分が美人の『聖女』を籠絡出来たら、辺境伯家で有利な立場になれるってな」
「はぁ……迷惑なのは変わらないが、何だかなぁ……」
協会職員の憶測は、当たらずとも遠からずだろう。伯爵三男を振り切るには、伯爵本人か長男を動かすしか無さそうだ。順次、拠点に戻って来た辺境伯軍司令官や協会支部長を捕まえて、対策を相談した。
今朝の対応から言って、支部長は宛てにならない。軍の司令官はどこまで権限があるか分からないが、頼りになるのはこちらだ。果たして、彼らの返答は、予想通りだった。
「伯爵本人と連絡取れるかって? 代理人止まりだよ」
「軍からは定時報告を上げる。そのついでに、苦情のひとつも捻込めば、伯爵の方から動くだろう」
迷わず、対応を求めた。
「頼むよ、司令官」
「任された」
その日の内に、軍の伝令が走り、翌朝には伯爵側からの返答を持ち帰って来た。掃討戦が一段落し、軍が引き上げるタイミングで、上級冒険者達全員を伯爵邸に招待したい、との事だ。辺境伯領出身のトールは感激していたが、他の面々は微妙な顔をしている。そんな中、ステフが寂しそうに言った。
「上級冒険者を招待ってことは、オレ、外で待ってるの?」
「そんな訳あるか!」
即座に否定するが、思わぬ指摘を他から受けた。
「いや、外で待機していた方がいい場面があるかもな。暴走した馬鹿が何をしでかすか分かったもんじゃない」
「あったら困る!」
「あの伯爵三男絡みだぞ? 無いとは言えん」
「……」
『紅刃』が嫌な憶測をするが、否定し切れないのが辛い。それから、伯爵家ご招待案件の対策を皆で考え、詰めていった。
これでストックが尽きたので、更新が不定期になります。
(°∇°;)




