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オークの討伐

翌朝、協会でアベル達に落ち合い、オーク討伐の依頼を受ける。場所は、街から北東方向の山岳地帯だ。山間(やまあい)に村が点在しており、その村からの依頼で今回のオーク殲滅クエストを行う。オーク討伐の後、東の森に寄って採集クエストを片付ける算段だ。皆で、まず東門を出る。


「ヴィルさん、ヒューイは?」

「門を出てから呼ぶよ」

「オレ達んち、外壁沿いだから、出てから呼ぶ方が手間が省けるんだ」


ヒューイはとても手間のかからない自立した騎獣だった。寝床とグルーミングなどの世話さえすれば、食事や運動は外壁を飛び越えて自ら済ませてしまう。普段、騎獣の証明になる首輪のみで、特に繋いでおくことはない。今回も、手綱だけ持って出て、外から呼ぶとすぐ飛んで来た。


「凄い……騎獣って、こんな風なのか?」

「いや、ヒューイが特別だと思うよ。そもそも飛ぶ騎獣は少ないし、ウチはたまたま外壁沿いにあるから」

「何人乗れる?」

「まだ訓練してないから、分からない」


アベル達は、騎獣に興味津々だ。手綱を持ってヒューイの横を歩くと、代わる代わる傍に寄って来ては構いたがる。ステフに手綱を預け、ヒューイの背に乗って見せると、こちらを見るアベル達の目が、羨望で潤んでキラキラした。皆、騎獣好き過ぎだろう。


「乗ってみる?」

「「「「是非!」」」」


全員から元気よく返事があった。手綱をステフと交代し、まずステフを背に乗せ、アベル達を順に引き上げる。結果、ヒューイが機嫌良く乗せてくれる人数は三人までと分かった。アベル達も、一度はヒューイの背に乗れて満足げだ。


依頼主の村には、昼過ぎに到着した。アベルが村長と会って、被害状況を聞き取りする。農作物や家畜など、オークの被害は多岐に渡っている。オークの群れは、この村の背後にある山からやって来るらしい。


アベル達が村に居る間、ヒューイを連れてステフと村の外で待っていた。そうしていると、村の人達がヒューイを物珍しそうに見に来る。大人から子ども達まで、翼犬は大人気だ。まるで、見世物小屋の主人の気分を味わった。


聞き取りを終えてアベル達が出て来ると、早々に村を離れた。名残惜しそうな子ども達が、後を付いて来たそうな目をしていて、居た堪れない。山に入ってから、ネイサンが斥候で見回る間、その場で待機する。ネイサンは程なく戻って来ると、オークの痕跡を幾つか見つけた方向を示す。そちらに向かって、アベル達はパーティー陣形を組んで進む。ヒューイを連れて、殿(しんがり)を歩いた。


「ん、あれか?」


先頭のグスタフが、足を止める。どうやらオークの巣だか集落だかに行き当たったらしい。皆をその場で待機させて、ヒューイを先行させる。


「いいかい、ヒューイ。まずはオークの頭だけ食べていいからね?」


言い聞かせがどこまで通用するか分からないが、とりあえず言っておく。ヒューイを放して暫くすると、オークの巣に動きがあった。慌てふためいたオークが数頭、巣から転び出て来た。アベル達は、落ち着いてオークを捌く。前衛のグスタフが受け、アベルが攻撃する。アベルが仕留め損なった分は、ネイサンやステフが止めを刺す。後方から、ホリーが矢を放ち、援護する。なかなかの連携プレーだ。こちらも、ただ見ているのも何だし、小石を拾っては投擲して援護に加わった。


やがて、オークの巣が静かになる。巣の殲滅が完了したらしい。中に入ってみると、頭の無いオークの死骸が累々としていた。ヒューイは何かを咀嚼している。巣の中に、一際大きな個体があった。オークの上位種だろう。巣のリーダーだったと思われる。皆で黙々と魔石の回収をして、上位種を含む幾つかを取り分けると、残りをヒューイに回す。ヒューイは喜んで平らげた。


取り分けたオークを捌く。アベル達は一人一つずつ受け持ち、上位種の解体は引き受けた。ステフも最初に比べたら、解体の腕が上がっている。アベルやグスタフ、ネイサンが器用に解体を進めている隣で、思ったより不器用なホリーが悪戦苦闘しながら捌いている。いつもは穴を掘って埋めるような不要部分も、当然ヒューイの腹に収まった。オーク素材を部位別に纏めて、袋に仕舞うと、山から引き上げた。


村に戻って、討伐完了の報告をする。村長は、オークの数と討伐の早さに、目が点になっていた。日も暮れてきたので、そのまま村で一泊させて貰う。アベル達は村長宅で宿を借り、こちらは村の広場でヒューイと野営する。ステフも一緒がいいと野営に加わる。食事は皆、村長宅で頂く。食事や宿泊のお礼に、オーク肉をお裾分けした。


翌朝、村を出て東の森に向かった。

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