撤収
体調不良の為に更新が滞り、随分と間が空いてしまいました(-_-;)
スミマセンm(_ _)m
再び目を醒ました時、一瞬、自分が何処で何をしているのか分からなかった。頭が重いし、躰も怠い。これは過去何度も経験した魔力切れの症状だと思い当たる。それからゆるゆると今に至る出来事を思い出していった。
だらりと寄り掛かる躰の正面には、デューイのモフモフな毛皮があった。背後からは、硬い筋肉質な躰にぴったりと寄り添われている。腹辺りに廻された腕から、じんわり温かい魔力が伝わって来ていた。
ちらりとそちらに目を遣ると、傍らに空いた薬瓶が数本転がっているのが見える。恐らくマジックポーションの瓶だろう。こっちの魔力もすっからかんだが、ずっと魔力譲渡していたライも同様らしい。二人共、元の潜在魔力の多い方なのにコレとか、今回の浄化は尋常じゃない。
「……ん、起きたか、ヴィル」
「ああ。ライ、此処、何処?」
「浄化した所から動いてないよ。元瘴気溜まりの真ん中だ」
「どの位、寝てた?」
「一刻位って処か……そう長い時間経って無いぞ」
ライはそう言いながら、自分の魔法鞄を漁り未開封のマジックポーションを取り出した。
「気を失ってからも魔力譲渡を続けてたから、少しは魔力戻ったろう。念の為、飲めたらこれも飲んでおけ」
「うん」
身を起こし、ライから薬瓶を受け取る。そのままライが手を添え蓋を開けて口元に持って行った。介添を受けゆっくりとポーションを嚥下する。うーん、不味い。
「この味、何とかならないもんかね」
「薬師によれば、飲み過ぎ防止にわざと不味いままにしているんだとよ」
「マジか……」
青臭く苦い後味に辟易としながら飲み終える。まだ躰の怠さは抜けないが、頭の重さは随分と楽になった。これでやっと人心地つける。こんな気絶する程消耗の激しい浄化は久し振りだ。
「今の戦況はどうなんだ?」
「ヴィルのひっくり返ってる間に、粗方の魔物は掃討出来てる。ディートが下層への階段を見つけたんで、ルーイをお伴にして偵察に行った。もうすぐ戻るだろうさ」
「まだ下に階層が続いてるんだな」
「瘴気溜まりが最下層じゃなくて良かったじゃないか」
こっちが気絶している間にも、着々と仕事は進んでいたようだ。ライと話しているうちに、周囲に散っていた同行パーティーの面々が三々五々戻って来ていた。その彼らに向かってライが声を掛ける。
「もう魔物は浚え終わったか?」
「そうッスねぇ、めぼしい所は浚え終わったと思うッスよぉ」
「いやぁー参りましたー蜈蚣ばっかりでー」
「黄金虫もいたろう?」
「軍隊蟻もな」
本当に此処は虫系の魔物三昧だったらしい。彼らの軽口を聞きながら、またうとうとしかけた頃、偵察に行っていたディートが戻って来た。
「ただいま。ライ、ヴィルの容態は?」
「先刻目を醒ました処だ。それでディート、下の様子はどうだった?」
「下は森林地帯だった。索敵した限りでは魔物もそこそこいるな。ただ、広範囲に散らばってるし、もう瘴気溜まりは無さそうだったよ」
「なら、これで魔物流出は収束と見ていいな」
ディートはライと反対側になるデューイの隣を陣取り腰を下ろした。此処で暫く休憩をとるらしい。同行パーティーの面々もそう遠くない位置に陣取り、各々荷物から携帯食を出して齧り、水を飲む。
「何か食えそうか?」
「食欲無い。水でいい」
「無理にでも口に入れとけ。保たないぞ」
ライに問われて返答する。が、あっさり覆され、水と一緒に携帯食も持たされた。一口齧り取ると、もそもそ咀嚼しながら水で流し込む。腹がどんよりと重い。もう無理だ。残りはデューイに食べて貰った。ルーイはディートから干肉を貰い、ご機嫌だ。
「休憩後、ダンジョンから撤収する。再出現に警戒しながら進むぞ、気を引き締めて行け!」
「「「「おう‼」」」」
皆は回復出来たようだ。ライの掛け声に、元気な声で応じていた。一方、こちらは回復も追い付かず歩くのも覚束なくて、デューイに抱えられている状態だ。それだけ、放置されたダンジョン内の瘴気溜まりはとんでもない濃さだったという事だろう。
酷い目に遭ったが、取り敢えず、これで帰れる目途は立った。地上に向けてダンジョン班は帰路に着いた。




