どう見ても付き合ってる喧嘩ップル
思いつき短編です。
ラブコメですが直球ではないので、糖度は低めです。
……多分。おそらく。メイビー。
どうぞお楽しみください。
「嘘つき!」
「嘘つきは言い過ぎだろ!」
朽川瑠衣と阿玉夏大の大声が、帰り支度の開放感に包まれた教室に響く。
「一緒に帰るって約束でしょ!? 何よ『先に帰れ』って!」
「ぎゃーぎゃーわめくな! 仕方ねぇだろ!? クラス委員として先生から資料整理の仕事頼まれたんだから!」
「だったらあたしにも手伝わせなさいよ! あたしだってクラス委員じゃない! 一人でやる事ばっかり考えて、そういう事も考えつかないわけ!?」
「お前今日咳き込んでたろ!? 埃っぽい資料室の仕事なんかさせられるかってんだよ!」
「おあいにく様ー! ちゃんとマスク持ってるんだから問題ないわよーだ!」
「早く帰って家でくつろいでる方が身体にいい事くらい、考えりゃわかるだろ!」
「あんた一人に仕事を押し付けて帰ったら、気分悪くてくつろぐどころじゃないの! そっちこそ察しなさいよ!」
「ちっ、お前と話してても時間の無駄だ! さっさと作業終わらせてくる!」
「何よ! 逃げるの!?」
「はぁ!? 逃げてねーし! ただお前がどーしても残りたいって言うなら、俺の荷物番させてやってもいいぞ?」
「ばっかじゃないの!? 二人でやった方が絶対早い……、あ! あんたもしかして、あたしが手伝ったら自分の仕事の遅さがバレるとでも思ってんの!?」
「んなわけねーだろ! 荷物持って行くの面倒だから、手伝うって言うならその方が俺の役に立つって話だよ! それとも何か? 俺の邪魔したいのか!?」
「そんな退屈な仕事させんなって言ってんの! それに荷物くらい持ってくのすぐでしょ!? それを変な理屈こね回して……!」
「理屈こねてんのはどっちだよ! あー! わかった! そこまで言うなら手伝わせてやる!」
「最初っからそう言えばいいのよ!」
「その代わり、帰りの『月熱亭』の生姜ラーメンは俺が奢るからな!」
「はぁ!? 何それ!」
「手伝わせるんだから当然だろ!? 生姜ラーメンは喉にもいいしな!」
「くっ……! じゃあ餃子とトッピングの味玉代はあたしが出すからね! 文句は言わせない!」
「ちっ、仕方ない……。じゃあとっとと終わらせるぞ!」
「あたしの仕事ぶりに驚きなさい!」
「する事なくてまごまごさせてやる!」
言い合いを続けながら、荷物を持って教室を出て行く夏大と瑠衣。
残されたクラスメイトは、
(あぁ、今私は猛烈にご飯が食べたい……)
(ウソみたいだろ……。付き合ってないんだぜ、あれで……)
(これ絶対籍入ってるよね?)
(喧嘩ップルのイチャ喧嘩からしか得られない栄養がある……)
(彼女超えて妻)
などと微笑むのであった。
読了ありがとうございます。
『喧嘩するほど仲が良い』ではなく『喧嘩自体が仲が良い』で書いてみました。
これには喧嘩ップル苦手勢もニッコリ。
名前? 口が悪い子と頭の固い子です。
以上! 解散!
お楽しみいただけたなら幸いです。




