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クラリアスノート  作者: ゆさ
第六章 『新生リセレンテシア』
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第六章 13 『異変』


挿絵(By みてみん)




ラクリマを顕現したリアは勢い良く走り出す。

ゼノ・エクスクァトは隙が多いため、相手の動きが分からない以上、一人で使用するのは危険だ。


エイド・リセルクスはリアの動きを真剣な表情で捉え、動きを見逃さないように剣を構えていた。

トーナメント初戦のオルフェイア達のような"驕り"の一切を感じない。


重心をのせたリアの一撃は幻想的な音色を奏で、エイドの剣に打ち込まれる。

エイドの剣は上質だが、硬度でラクリマに勝るはずも無く、しばらく受け止めていると、ピキピキと剣身が音を立てる。成長した今のリアが繰り出すラクリマの一撃は、ただの物理攻撃とは似て非なる領域に到達していた。


──ピキっ。大きな音と共に剣身に亀裂が走る。


エイドは一瞬驚いた様子を見せるがすぐに冷静になると、


「──リライゼ」


剣身が淡く光ると、亀裂が入り折れる寸前の剣が再生したのだ。

その一瞬、リアに隙がうまれた。エイドはすかさず力を込めるとラクリマをはじき返す。

バックステップにより少し距離をとると、懐から立方体の鉄塊を複数とりだし前方に放る。


「──アルネン」


リアの前方に迫る鉄塊は広範囲に渡り、極細の格子状に拡散する。咄嗟に逃げようとするが、その範囲と無数の針のような刺突攻撃に被弾は免れない。


致命傷クラスでは無いが、おそらくあと数回被弾すれば蓄積ダメージにより試合は決着するだろう。




「面白いな……アルゼン、どう思う?」


「…………騎士としてはわかりかねますが、"錬金術士"としての才能はあまりにも薄い」


アルゼンは少し不服そうに答えた。


「辛辣だな。確かに"才能"と呼べるものは持ち合わせていないのだろう。だが、稀にその壁を超えるものが存在する。私はそういうもの達を好ましく思っているよ。エイド・リセルクスをリストに追加だ」


「ついに剣聖のお眼鏡にかなう者が出たか。筋は良いが、正直意外だよ」


「ロゼリア、今日も来てくれたんだな。嬉しいよ。彼のようなタイプはアストルディアでは貴重なのさ。ある意味では才能よりも貴重なものを持っていると言える」


「その考えには同意する。私も嫌いではない。今日は私も見たい試合があってな」


「次の試合だな?」


「ああ。アイズ階級のガーディアン、レナと言うヒトの男だ。一部では真実味のない噂ばかりが蔓延していた。だが、実績は事実だ。そして一体どのような人物なのか、それを確かめたい」


「待て、ガーディアン階級の最高位はセラフィスでは無かったか? そしてロゼリアはセラフィスだろう?」


「そうだが」


「だとすれば、レナがアイズ階級と言うのはおかしい。 私は彼が戦っているところは見ていないが、近くで一度会っている。断言できる。」


「──レナは君が例え十人いてもおそらく勝つことは不可能だ」


ミシェルの言葉にピクリと耳を動かすと眉をひそめた。

背後に立つアルゼンも目元だけで驚いている様子が分かる。


「……なんだと?」


「不快にさせたのなら謝罪しよう。けれど、決してロゼリアを軽んじたわけではない。彼が強すぎるんだよ。一度対面すれば分かる。特に、私は"こちら側"だからな」


ロゼリアは、フンッとやや不服そうに前を向き、再び試合を観戦する。"こちら側"という真意も気になるが、レナについては実際に戦闘を見ればわかるだろう。




「──ゼラ・グラキエス!!」


リアは巨大な氷柱を生成する。

エイドは上位魔法で応戦する。上位魔法の火力は魔術に比べると遥かに威力が高い。それでも、おされているように見えた。



その理由に最初に気づいたのはルミナだった。


「リア詠唱から魔術が行使されるまでの時間、あまりにも早い……」


エイドの上位魔法は確かに高威力だが、リアが魔術を行使するまでの時間が短すぎるあまりに、対応が後手に回っているのだ。かと言って、接近するのも厳しい。


「修練の時から薄々感じてたがやはりそういことか……」


アルテミシアは思い当たる節があるようだった。


「何か理由があるの?」


「理由は分からないが、リアは無意識下で空間中の魔素を利用している。それに見てみろ、一度や二度じゃない。強度の高い魔術をこう何度も連発できるファースト階級がいてたまるものか……」


「確かに……」



エイドは複数の氷壁により押し出されるように後方に距離をとる。

束の間、リアの魔術による猛攻が止まる。氷壁により、移動経路を制限されているように感じたエイドは、


「──テラ・イグニス」


前方に立ち塞がる氷壁を大きな火球により、一気に蒸発させる。

そして気づくことになる。

氷壁は移動経路を制限していた訳では無いということに。


リアは前傾姿勢で"ラクリマだったモノ"を構える。

神々しい光の大槍のような、その半分はラクリマの色と形状を残していた。


「──パーシヴァル」


ゼノ・エクスクァトと思われた"異能"は、リアが突進することなく、光の一閃としてエイドを穿ち、一瞬にして試合を決着させた。


目の前に広がるは一線上広範囲に抉れた地面と既に転移されていなくなった対戦相手。


「……あれ、私……今何を…………」


リアは勝利の喜びを感じられずに、ただ立ち尽くしていた。



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