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クラリアスノート  作者: ゆさ
第四章 『リグモレス』
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第四章 7 『作戦会議』


挿絵(By みてみん)




主要拠点のとある酒場にアルテミシア達はいた。


酒場といっても、年齢的に酒を飲めるのはアルテミシアだけである。酒を飲んではいけないという規則がある訳ではないのだが、店主が「子供はやめとけ」と基本的に売ってくれない。


「そう言えば、レナって何歳なんだ?」


アルテミシアは既に十杯を超える果実酒を飲み干していた。僅かに顔が火照っているようにも見えるが、変化はそれだけである。


「僕にも分からない。見た目からするとリア達と同じくらいには見られるようだが」


「見た目からするとって、そもそもレナは男にすら見えないぞ。本当についてるのか? 見せてみろよ」


「何の話だ?」


アルテミシアはニヤニヤしながら「……恍けるな」と向かいの座席からレナの下半身へ足を伸ばす。


「……なっ」


「……お? これは一応あるっぽいな」


顔が火照っいるだけでは無い。このエルフ完全に酔っている、不幸にも達の悪い酒癖だ。

そして不幸は重なる。今、レナの隣にいるのはルミナだった。


「作戦会議するんじゃ無かったの? さっきからもじもじと……何やってるのさ」


ルミナはレナがいる方に向く。そして流れるように視線は下に向いた。


「──ぶっ!!!! ……きゅっ、本当に何やってのっ?!」


ルミナは水を吹き出し、目を背ける。お酒を飲んでいないにも関わらず一番顔を赤くしていた。


「はっはっはっ。相変わらずルミナは初だな。実に面白い!! 今日はレナと二人きりで相部屋決定だ!! これはアイズ階級からの命令であるっ!!」


「──はああああっ?! 意味わからないよ何それ?!」


「異論は認め……」


アルテミシアが絶好調の様子で言いかけるが、「──チッ」と言う声に反応し急激停止する。

ここは酒場だ、誰かが舌打ちすることもあるだろうと流すこともできるが、アルテミシアの優秀な耳はその音源を明確に捉えていたのだ。


そう、リアである。


「い、異論は認め……」


「──チッ」


「あ、あの……リア様? 何か言いました?」


「いいえ、なんでもないですよ。ただ、作戦会議ってどうなったのかなって」


満面の笑みでアルテミシアを見る。笑顔のあまり、目が糸のようになっている。そしてどこか顔がひきつっている。

アルテミシアは悟った、これ以上刺激するとこの少女は何をやらかすか分からない。

アルテミシアはすっかりシラフになっていた。


「えー、さっきまでのは全部冗談です。作戦会議をしましょう。まあ、作戦会議と言っても未探索領域故、作戦という作戦は無いがね。まずはアステリアのことをできるだけ知りたい。さっきはああ言ったが、話せることだけでも良いから話してはくれないだろうか」


「……僕は賢者の命でここに来た。その命とは対象の護衛だ。僕はレナとリア、この二人を最優先で護衛して欲しいと命じられた」


ルミナは不機嫌ながらも少しほっとした表情を見せた。それは、リアが護衛対象という事実を知ることができたからである。

だが、それに反しアルテミシアの顔は曇っているように見えた。


「ありがとう。アステリアの戦力はどの程度と考えれば良いのだろうか。私より強いことは見た瞬間分かった。だが、それ以上は私にも推し量れなんだ」


アルテミシアのその言葉を聞いたリゼはつい「……え」ともらしてしまう。


「リゼ、私の事を信頼してくれるのはとても嬉しい。一つ現実的な話をしよう。なぜリグモレス以降の領域が未探索領域と言われているかということ。ガーディアンはフェルズガレアを守護する組織だ。だが、それは基本的にリセレンテシア内部の話。そして、その中で私はアイズと言う準最高階級にいるが、あくまでもガーディアンと言う組織内であってそれ以外は含んでいない。例えば今、この主要拠点にいる者たちは多くがガーディアンでは無いということだ。失望させてしまうかもしれないが、私は未探索領域に足を踏み入れる者の中では、弱い部類に入るだろう。だからこそだ、アステリアの戦力は私達の遠征を生存率を上げる鍵にもなるんだ。情けない限りだがな」


それは嘘偽りの無い言葉、不甲斐なさそうに話すアルテミシアを見たリゼは「……ごめんなさい」と一言。

リゼは改めてことの深刻さを理解した。アルテミシアがネイトに食ってかかったその理由を。自分はきっとリグモレスのことを甘く見ていると、そう再認識した。


「で、僕の戦力だったよね。そういうのよく分からないけれど、僕は戦闘担当だから、主の命にてリグモレス第三領域までは単独で探索に出てるよ」


「すまん、ちょっと待ってくれ。今、『単独で』第三領域と言ったか?」


アルテミシアは理解が追いつかず聞き返してしまう。リグモレス第三領域を単独で生き延びるには、セラフィス階級のガーディアンでさえ厳しいと言われている。

目前の少女は最強のガーディアンさえ超えた実力を有していると、そう言ったのである。


「そうだけれど。なにかおかしいことでもあるのか?」


「いいや、すまん。世界は広いなと再認識されられたよ」


そう言えば、クラリアスを生み出したのは賢者アウレオだった。そんな人物の従者であるならば、常識でものを推し量ること自体無意味だろう。



「ちょっといいかな?」


そこでルミナが異を唱える。


「アステリアがそんなに強いならさ、なんで私達がリグモレスの探索に出なきゃならないのさ。バランスがおかしいでしょ普通に考えて。ガーディアンの使命はフェルズガレアを守護することだよね? レリックの探索だとしても、私達を捨て駒に使い捨てるならいつもの事かもしれないけれど、そこにアステリア程の戦力を投入する理由が分からない。一体何がしたいのさ」


ルミナはギロっとアステリアを睨む。理由は言うつもりがないと言っていた。それでもやはり納得できない。


「君は本当に目つきが悪いね。そこのエルフが言っただろう。話せることだけでも良いと。僕が話さないという事はそういうことなんだよ」


「──こいつっ!!」


ルミナはぐわっと怒りの感情を露わにする。ルミナがここまで感情的になるのは珍しい。

アステリアもまた、ルミナには冷たい気がした。相性が悪いのだろうか。


「まあまあ、少し落ち着こう。アステリアの戦力も把握出来た。アステリアは命に従いレナとリアの護衛をするという話だ。私はリゼとルミナを全力でフォローしようと思う。リア、ルミナ、リゼの三人は異例の事態が起きたら他人のことは考えず、自分が生き残ることだけを考えて行動して欲しい。約束だ」


「僕もできる限り三人のフォローを心がける」


「助かる、が、レナは力を上手く制御することを常に意識してくれよ。下手したら私達が全滅しかねない」


レナは言い返す言葉もなく、「……気をつける」と一言。



アルテミシアの果実酒二十杯目が空になった頃、作戦会議は終わりを遂げた。




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