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第12話 兄さんを見送ろう!

「もう行くんですね」

「ああ。世話になったね、テオドルフ」


 黄金竜を倒した三日後。

 迎えの人が来たパトリック兄さんは、この村を出ることになった。


 兄さんは王国の王座を父上から奪おうとしている。やることはたくさんあるんだろうね。


「本当はもっとこの村にいたかったけど仕方ない……くっ」

「はは、兄さん毎食たくさん食べてましたからね」

「ここのご飯が美味しすぎるのが悪い! ここの物を食べたら他の土地の食べ物など全て味気なく感じてしまう! 温泉は気持ち良すぎるし、住む人はみんないい人だ。王座奪還など忘れてこの村に住もうかと思ってしまったくらいだ」


 兄さんは本当に名残惜しそうに言う。

 そこまで気に入ってくれたのは素直に嬉しい。僕のやってきたことは間違っていなかったみたいだ。


「もし王座を手に入れた時には、この村に負けないくらいいい国にしなきゃいけないな」

「ありがとうございます兄さん。光栄です」

「私もお前のような弟を持てて光栄だよ。きっと君の母上も喜んでいるだろう」


 兄さんはそう言うと、見送りに来ていたガーランに目を向ける。


「ここまでありがとうガーラン。弟のことは任せたよ」

「はい。この命に代えましても」


 ガーランはそう言って恭しく頭を下げる。

 それを見た兄さんは満足そうに頷くと、僕の方に視線を戻す。


「そうだ。テオドルフにはこれを渡しておこう」

「え? なんですか?」


 兄さんは懐を探ると、金色に輝く石のような物を取り出す。

 大きさは手のひらに収まるくらいだけど、それからは大きな力を感じる。最初は黄金竜の鱗かなにかかと思ったけど、違いそうだ。


「これって……」

「黄金竜の『魔石』だ。解体した時に見つかって、譲り受けていたんだ」


 黄金竜から取れる素材は全て兄さんに渡すように言ってあった。

 そっか、あの黄金竜からも魔石が取れたんだ。見た目だけじゃなくて魔石まで金色になってるとは思わなかった。強い力が込められているのが見るだけで分かる。


「テオドルフ、これは君が使ってくれ」

「え? いいんですか?」

「ああ。もともと黄金竜の鱗や牙は王に渡す契約だが、その中に魔石は含まれていない。つまりこれをどう使おうが私の自由というわけだ」

「でもそれなら兄さんが使えばいいんじゃないですか?」


 魔石は加工すれば武器や防具に、他にもエネルギーにもなるという万能素材だ。

 いざとなれば換金すればいいし、持っていて困ることはないはずだけど。


「そうだね。本当は私も喉から手が出るほどほしい。だけど……この村を見て思った。テオドルフなら私よりこれを有効に活用できる。ならば私はテオドルフに賭ける(ベット)する」


 そう言って兄さんは強引に魔石それを握らせてくる。

 黄金竜の魔石はずっしりと重くてほんのり温かかった。


「本当にいいんですか?」

「ああ。黄金竜を討伐したのはテオドルフの力だし、渡した方が巡り巡って私のためにもなるだろう。ぜひ有効活用してくれ」

「……分かりました。じゃあありがたく使わせてもらいますね」

「ああ」


 兄さんはもう一度嬉しそうに頷くと、迎えの馬車に乗り込む。


「それじゃあまた会おうテオドルフ! 世話になったな!」


 そう言って兄さんは去って行った。

 きっとこれからも大変なことが多いだろうけど、兄さんなら大丈夫だろう。


「行ってしまわれましたな」

「うん。僕たちも兄さんに負けないよう、頑張らないとね」

「はい! このガーラン、畑仕事から竜退治まで、なんでもいたしますぞ!」

「ふふ、頼もしいや。これからよろしくね、ガーラン」


 僕はガーランの大きな手と握手をかわす。

 去る人がいれば来る人もいる。これからも人との縁を大切にして、村をどんどん大きくしていこう!


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