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カルテット、4/10000。  作者: 三香


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39/82

10000人レース ー39

「「「「これは……」」」」


 1000ポイントの11連ガチャを4回した結果。


 10パーセント魔力増強オーブ×10

 10パーセント回復力増強オーブ×8

 という増強系オーブが18。


 解析魔力×1

 土壁魔法×4

 土穴魔法×4

 風槍魔法×4

 風網魔法×4

 水網魔法×4

 火槍魔法×4

 というレベル1の魔法が25。


 そして最後に、『女神の世界の基礎知識』が当たった。


「まああ! 『女神の世界の基礎知識』ですって。凄いわ。この世界のことを知りたかったのよ」

「やった! さすが幸運様!」

「幸運様、ありがとうございます!」

「ミー!」

 と鳴いてスライムが三色団子を机の上に恭しく置いた。


「この世界のことが少しでもわかれば、対策もたてやすくなる。で、誰が使う?」

 祐也の言葉に、彩乃と高広と理々が眼差しを向けた。じっと祐也を見る。

「わかった、僕が使って知識を高広と彩乃と理々に教える。それでいいか?」

「ええ。ついでに他のスキルも分配をお願い」

「魔法って自力では生えることがほとんどないから、たくさん当たってラッキー!」

「よかったね!」


「よし、じゃあ分配するぞ。まず彩乃。魔力6、回復力2、土壁1、土穴1、風槍1、風網1、水網1、火槍1」


「高広は、魔力2、回復力2、土壁1、土穴1、風槍1、風網1、水網1、火槍1」


「理々は、魔力2、回復力2、土壁1、土穴1、風槍1、風網1、水網1、火槍1。で、残りが僕でいいか?」


「ええ、それで『女神の世界の基礎知識』の内容は?」

「ザックリでいいから」

「教えて、教えて」

 ワクワクと目を輝かせる彩乃と高広と理々。いきなり転移させられて6日、無我夢中で頑張ってきたが日本ではないこの世界の知識を欲する気持ちが強くあった。


 祐也は苦笑すると真摯な口調で告げた。

「以前、金貨の共通性で話したことを覚えているか? この金貨はダリオス金貨と言って、100年前にこのアンドレア大陸を統一していたダリオス帝国の名残なんだ。現在は大小様々な国にわかれて、各国あるいは種族毎に言語や貨幣はあるのだが、共通言語としてダリオス語が、共通貨幣としてダリオス金貨が流通しているんだ」


 ふむふむ、と高広と彩乃と理々が真剣に頷く。


「『女神の世界の基礎知識』は、一般常識や慣習、歴史や文化など色々なことの知識を授けてくれたけど、それは追々として最初に必ず必要とされる言語から、つまりダリオス語のことだ」

 祐也は忌々しげに顔を歪めた。言葉が続く。

「ポイント交換には言語知識がないんだよ。いや、この世界に関しての知識そのものがポイント交換にはない。日常生活において、聞く、読む、話す、書く、の言語生活面が日本語のみの僕たちが、レース後にどれほど困難に直面することか。異世界人は奴隷と断言されている世界なんだ、大陸の隅々まで浸透しているダリオス語を喋れず手振り身振りでの会話のみの僕たちを、種族変換されたとしても不審がる者は多いだろう。それほどダリオス語は共通言語として絶対的なんだよ」


 祐也は嘆息した。

「不信感をいだかれるだけならまだしも、僕たちもそうだが相手も善人ばかりではない。極端な話、宿に泊まったとして宿帳に署名を求められてもそれが奴隷契約書だとしてもわからないんだ。言語行動にかかわる全ての面でダリオス語の知識がなければ不利だ。最小限度、ダリオス語を喋れる知識がないと」


「ねぇ、辺境の出身だから共通語のダリオス語を話せない、とかの設定はダメなの?」

 彩乃の質問に祐也は首を振った。

「辺境になればなるほどダリオス語オンリーなんだ。ダリオス帝国が滅んだ後、自国の言語を辺境までも教育指導できる国は少なかったし、商取引も外交もダリオス語が使われる。自国の言語よりもダリオス語の方がぶっちゃけ便利なんだよ。自国の言語は貴族階級の教養って国も多い」


 彩乃の表情に影が差した。長い睫毛が伏せられて淡い影を瞳に落とす。頬が強張っていた。

「女神様は……、団体1位の学校を種族変換する、としか言わなかったわ。言語スキルを与える、とは言っていない。ねぇ、種族変換されてもダリオス語が喋れない私たちは、胡散臭い存在として疑いの目を向けられるんじゃないの?」

「そうだよ。僕たちよりも以前のレースの参加者で種族変換された者たちも、結局はほとんど奴隷にされてしまっているんだ。言語スキルが貰えるクエストとかあればいいんだけど、あの女神が親切なはずはないしなぁ」


「幸運様に頼るしか手はないのか?」

 高広が熟慮した末、問いかける口調で言った。

「そうだな、細い蜘蛛の糸だが今のところ幸運様しか思い浮かばない。だが、言語スキルに繋がる可能性のある糸がある僕たちはまだマシだ。僕たち以外の1万人はダリオス語のことも、このレースの本当の苛酷さも知らない」


「本当の苛酷さ?」

「この森は、《女神の遊技場》というダンジョンなんだ。普段は開放されているが、不定期に10日間森が結界で閉鎖されることがある──転移させられた異世界人のレースのために」

 祐也は拳を握りしめた。

「今、森の外では続々とこの世界の人間が集結しつつあるはずだ。強い光源となる光系の魔法があるんだ。信号灯などの迅速な通信によって、もうこの世界の人々は、この森でレースが行われていることを知っているからね。《女神の遊技場》は別名《女神のゴミ捨て場》と言うんだ、女神が遊んで不要になったものを棄てる場所なんだよ。10日後、森の結界が消滅した時、奴隷狩りが始まるんだ。各種の優秀なスキルを保持した異世界人がタダで狩り放題になるんだ。それに学校という建物も宝の山だ。異世界の物品がタダで取り放題なんだから、血で血を洗う早い者勝ち──第二のレースの始まりだよ」


 暗澹たる未来に、4人は顔を見合せた。誰もが深々とため息をつく。


 祐也が口を開いた。

「僕は『女神の世界の基礎知識』の内容のあらましを紙に書くから、悪いけど彩乃と高広と理々はそれを写してくれるかい?」

「写してどうするの?」

 彩乃が訝しげに問い返す。

「僕たちと敵対しない生徒に渡す。情報は生き残るための大事な鍵だ。わずかでも役に立つかもしれない」


 高広と彩乃と理々の心が少しだけ上昇する。瞳が星のように煌めいた。


「「「何枚でも書くよ」」」

「できたら学校のみんなにも教えたいね」

「書いたら持って行こうよ」

「うんうん。学校がどうなっているのか心配だし」


「だったら、洞窟を出たら高校に様子を見に行こうか? 生徒会長の水原さん、あの人ならば信用できるから」

 

 同じ頃、4人の属する桐島高校に大きな変化があった。

 高瀬高校からの接触があったのである。

読んで下さりありがとうございました。

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