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カルテット、4/10000。  作者: 三香


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26/82

10000人レース ー26

「「防御力が弱いからダメかな?」」

 彩乃と理々は水着姿であった。

 Tシャツ型の水着でボトムのショートパンツは、彩乃が青い花柄、理々が黄色の花柄で、二人とも凄く可愛らしい。

「「衣料品の100年セットの中にあったの」」


「とっても可愛いよ」

「うん。似合っている。足はどうする? 足ヒレにするか俺たちみたいにスニーカーにするか」

 健全な年頃の男子高校生である祐也と高広は、内心グッジョブ! と幸運様に手をあわせていた。可愛すぎるんだけど、と。

 ちなみに祐也と高広はジャージである。


「「川底も歩く予定なんでしょう? スニーカーにする」」

「よし。スニーカータイプのマリンシューズだな。100年セットに色々そろっているから、どれかいい?」

「水陸両用で便利だよな。岩や石や貝から足を保護してくれるし」

「私は、この青いの」

「理々は黄色のマリンシューズにする」


 川の中へ入る緊張をほぐすかのように、ことさら4人は明るく会話する。

「セレオネちゃん、スライムちゃんと寝ちゃった。お腹がいっぱいになったからお昼寝するみたい」

 セレオネはビーズクッションが気に入って、自分専用としていた。ふかふかと柔らかく伸縮性があり、どんな姿勢や体勢でも体に合わせて形状が変わり包み込んでフィットするビーズクッションをスライムも好んでいて、セレオネはスライムを抱き込んで眠っていた。

「スライムちゃん、寝息も子猫みたいにミーミーなのね」

「かわいい」

 4人はセレオネとスライムのかわいい寝姿をほっこりと堪能して、静かに家を出た。


「最初は少し苦しいけど、すぐに耐性が生えてくるから。特に水中呼吸が生えてきたらグッと楽になるから」

 と、高広が彩乃の手を引き歩く。

「川の水は冷たいけど、環境適応が良好な体調を維持してくれるから体温が奪われることはない。高広とふたりで魚も大量に捕ってあるからポイントを気にする必要もないから、理々と彩乃は水中に慣れることだけを優先すればいいからね」

 と、祐也が理々の手を引き川に入る。


 高広と祐也の言葉通り、彩乃と理々はみるみる水中での移動動作が巧みになり泳ぎがなめらかに上達していく。幾つかの耐性と念願の水中呼吸が生えたところで、4人は川底へ向かって深く潜った。


 水面から水中に、木々の木漏れ日のような光が差し込む。

 水面の波紋が水の底に紋様を描き、上昇してゆく泡が貝に密やかに育てられた真珠のように煌めく。

 鳥は飛ばずとも、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と空にかかる虹のような鮮やかな魚が流れるみたいに泳ぎ。

 木々の繁りはなくとも、水草や藻や水中花が水底に小さな森を作り。

 水の中は音のない、幻想的な美しい世界が広がっていた。


 そして4人が見つけたその場所は、川なのに水流の感じられない静かな冥界みたいな水底だった。あるいは、惑星の柔らかな肌のような水の底であった。


 水深の深い場所であった。水深70メートルで届く光は地上の約0.1パーセント。ここは、川の大きさを物語るみたいに光の恩恵が届かない場所だった。

 地形と水流と水位が組み合わさり、流されてきたものが貯まる場所となっていた。堆積物は長い歳月とともに地層となり、まるで水に沈んだ大王の墳墓のように丘を成していた。


〈シークレットクエスト「水竜の骨を拾おう」が達成されました。報酬は10000ポイントです〉


 半ば埋もれた巨大な骨を祐也が拾った途端にアナウンスが響いた。水竜、と口の中で呟いて祐也は周囲に散らばる白い骨を残らず魔法袋にいそいそと入れた。


〈シークレットクエスト「水竜の魔石を拾おう」が達成されました。報酬は10000ポイントです〉


 理々が人間の頭ほどの純青色の魔石を拾う。


〈シークレットクエスト「水竜の牙を拾おう」が達成されました。報酬は10000ポイントです〉


 高広が自分の身長よりも長い鋭い牙を拾った。


〈シークレットクエスト「水竜の爪を拾おう」が達成されました。報酬は10000ポイントです〉


 彩乃が尖った大きな爪を何本も拾っていく。


 4人が何かを拾う度にアナウンスが流れる。どうやらこの場所はクエストの宝庫らしく、シークレットクエストも通常クエストも拾えば拾うほど達成されていった。


〈通常クエスト「鎧鰐の魔石を拾おう」が達成されました。報酬は50ポイントです〉


〈通常クエスト「翡翠を拾おう」が達成されました。報酬は10ポイントです〉


〈シークレットクエスト「天空大鷲の魔石を拾おう」が達成されました。報酬は天空大鷲のマントです〉


 次から次へと流れるアナウンスに高揚感が高まり、川底を掘って拾うことに夢中になって、理々が精密探査で気がついた時には遅かった。その魔物の方が、理々の感知力よりも動きが速いことも致命的であった。 


 ゴボッ、と口から空気が吐き出される。

 血が水の中で滲むように広がり溢れた。

読んで下さりありがとうございました。

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