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【Lost Dragonia】ドラゴンと生き残りの少年達は、前人未到の浮遊大地を目指す  作者: 桜良 壽ノ丞
3・【Fake】追い求める者の町

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Fake 07


 気落ちしているラヴァニに代わり、ヴィセはラヴァニの旅の目的を告げる。


「ラヴァニは、ちょっと落ち込んでいます。その、ラヴァニは再び仲間に合流し、ドラゴニアに帰りたいだけなんです」


「ドラゴンも仲間を恋しがるものなのか。ならば人が家族を失う悲しみも分かっているだろうに……」


「ラヴァニは500年間封印されていて、霧の発生も、この町の兵器の事も、何もしりません。無意味に襲うつもりはないし、ラヴァニは人の悲しみを十分理解しています」


「そうか、ならばその小さきドラゴンに怒りをぶつけても仕方がない」


 ミハイルはため息をつき、ラヴァニをじっと見つめる。


 ドラゴンは人を襲うのではなく、世界を破壊する行為を止めさせている。人と共に行動し、仲間の死を悼み、無害な者を殺そうとはしない。少なくとも、無慈悲で感情のない生き物ではない。


 それはミハイルにとって、ショックでもあった。恐れるべきはドラゴンではなく、人の行いだと気付いてしまったからだ。


 腕を組んで考え込むミハイルに、ヴィセはまた1つ質問を投げかける。


「7年前のドラゴンの襲来の時、変わった人を見かけませんでしたか」


「怪しい?」


「あのね、頭まで全部黒い鎧を着たおじさん! 俺その人に助けられた」


「黒い全身鎧の男……さあ、わしはそれどころではなかった。そいつがどう関係しているんだ? まさか手引きしていたと」


 黒い鎧の男を悪く言う意図はない。ヴィセは慌てて否定し、自身は3年程前、バロンは数か月前にその男に助けられたと話す。


「そのおじさんがね、俺を助ける時に霧の中から歩いてきた」


「ドラゴンの死骸があった場所からそう遠くない所らしいんです」


「3年程前……と、数か月前か。この町が襲撃された時期とはズレているな。だがこの町のせいで死んだであろうドラゴンの死骸の場所を知る男……全くの無関係かと言われると」


「はい、ドラゴンの何かを知っているんじゃないかと」


 ドラゴンの血の事は隠し、ヴィセは関係があるのではないかと言うにとどめた。ミハイルが鎧の男を見ていない以上、教えても意味がないと思ったからだ。


「あんたはその男に会おうとしているのか? そのために旅をしているのだな」


「そうです。ラヴァニもドラゴンに関係している事を感じ取って、仲間へと辿り着く手がかりになるのではと考えているようです」


「そうか。何やらそれだけではない雰囲気もあるが、わしは首を突っ込む立場にない」


 そう言うと、ミハイルはゆっくりと立ち上がった。立派なふさふさの尻尾を手ではたき、自分が座っていた椅子を奥へと運んでいく。これ以上話せることはないという事だろう。


 ヴィセとバロンも自分達の椅子を運び、そして頭を下げてお礼を言った。


「貴重なお話、有難うございました」


「気を付けて旅をしなさい。そして出来るだけ早くこの町を出なさい。ドラゴンを憎む者は多い。ドラゴンの正しい理解を広めたとしても、素直に受け入れられぬ者も大勢いる。力なき正しさは負けるものだ」


「……となると、ラヴァニを肩に乗せて歩くのはやっぱりまずい、か」


 ヴィセはバロンと自身の荷物で余裕のない鞄を見つめる。短時間ならいいが、ラヴァニに何時間も耐えさせるのは可哀想だ。


「あの、バロン用の背負えるバッグがありませんか。それと、俺も背負えるものが1つ欲しいんです」


「勿論だ、任せろ」


 店主は壁沿いの棚から鞄をいくつか取り出し、1つをバロンに背負わせた。そのスクエア型の黒いバックパックは新品独特の匂いがし、少々固い。


「使ううちになじんでくる。バンドの部分は調節できるから、坊主の背が伸びても使い続けられる」


「ヴィセ、いいの? これ俺に買ってくれるの?」


「ああ、その代わり自分の荷物は自分で背負うんだぞ」


「やったあ!」


 バロンは喜び、まだ値札が付いたままなのに飛び跳ねてはしゃぐ。ヴィセは縦長の筒状になったオレンジ色のバックパックを選び、ラヴァニをその中に入らせた。


 ラヴァニが前足を掛ければ、顔を覗かせることも出来る。


 ≪もしや荷物用ではなく、我のためか≫


「ああ。どうだい、羽を伸ばせるわけではないけど、衣類で底上げしたら顔を出したい時に出せるだろう」


 ≪感謝する。中で丸くなり休むのにも丁度良い≫


 ヴィセは決まりだと言って2つの代金を支払う。2つで7万イエンとなれば流石に安い買い物ではない。だが、これからの事を考えるなら、丈夫で納得できるものを選んでおきたかった。


「ヴィセ君。君のバックパックは、裏地との間に防水のためのビニル加工がなされている。表面は濡れてしまうが、ドラゴンも荷物も濡れずに済む」


「それはいいですね。バロンの濡れて困るものは防水袋かビニルにくるめばいいな。それではミハイルさん、有難うございました」


「ああ、何だかうちの製品まで買って貰って、気を遣わせたね。どうか、元気で」


「おじさんばいばい」


「ああ、坊主も元気でな、バロン」


 バロン用の書き取り帳を貰うと、ヴィセは店の札を元に戻し、ミハイルに見送られながら入り口の扉を開けて通りへと出た。


「さて、次の店に……トカーチ織工房はこの3つ隣の区画だ」


「ねえ、俺のかばんかっこいい!」


「ああ、大事に使ってくれよ」


 植物の鉢が店先に並ぶ店舗に辿り着くと、ヴィセはトカーチ織工房と書かれた扉を開いた。


 女性の店主が対応してくれ、それなりにドラゴンについて理解も示してくれたが、残念ながら新しい情報はこれといってなかった。


 ヴィセは律儀にバロンと自身用のハンカチ、それに半袖のシャツを買って店を後にした。




 * * * * * * * * *




「ねえ、どうするの? 次どこに行くの? ごはん?」


「お前ほんと食べる事ばっかりだな。あっと言う間に太るぞ」


「いっぱい動くからだいじょうぶ」


「まあ、今のガリガリよりは少し肉が付いた方がいいか。先に紹介所に行ってから」


 もうこの町で他に聞き込み出来るような伝手はない。やはり紹介所を頼るしかないと判断し、ヴィセ達は中央に戻っていた。


「ラヴァニ、しばらく外の様子を覗けないけど、我慢してくれ」


 ≪問題ない。ヴィセの意識を通じて見させてもらう≫


「……便利だな」


 今朝開館を待っていた階段を上り、両側に開かれたままの扉の中へと入っていく。やや暗い石造りの館内は、モニカやユジノクの紹介所より随分と広い。


 だが、然程利用者がいる訳でもないのか、とても閑散としていた。ヴィセは2つある木製のカウンターのうち、1つの前に立つ。


「あの、すみません」


「はい? ……あっ」


「あっ」


「あー! 朝のいじわるなお姉ちゃん! 俺きらーい!」


 そこにいたのは朝に話しかけてきた職員の女だった。ヴィセの顔が引きつる寸前で、バロンの容赦ない大声が響く。職員たちや数人の利用者は、何事かと視線を向ける。


「……あの、職員として対応する前に、謝らせて下さい。朝の事はすみませんでした。ドラゴンを怖がる人も多いので、放し飼いじゃなくゲージなどに入れて欲しかったんです」


「こちらこそ、配慮が足りず申し訳なかったです。けれど、売れと言う奴がまだマシだ、殺そうとするのが当然などと言った事に対しては納得していません。出直します」


 ヴィセはこの職員の考えがラヴァニを刺激するのではと思い、別の担当が窓口業務をしている時に来ようと踵を返す。


「あの、待って下さい! お願い、待って!」


 女は慌ててヴィセに駆け寄り、前に立ち塞がる。猫のような耳が少し倒れ、一瞬何か困ったような表情を見せた。


 ヴィセはため息をついて腕を組む。女はそんなヴィセではなく、バロンへと視線を向けた。


「イワン……あなたイワンよね? お願い、そうだと言って」

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