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【Lost Dragonia】ドラゴンと生き残りの少年達は、前人未到の浮遊大地を目指す  作者: 桜良 壽ノ丞
2・【Misty Ground】霧に潜む過去たち

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Misty Ground-05


「メイヤ? メイヤか!」


「バロン?」


「そうだ、良かった、無事か! みんなは?」


 声の主は探していたバロンの仲間のようだ。疲労からか、ガスマスク越しでも声が枯れているのが分かる。バロンは廃墟の中に飛び込み、窓際にいた少女と抱き合って再会を喜んだ。


「他のみんなは」


「みんないる。昨日まではなんとか水で凌いで。あんまり長くいるからダニルとソフィアがちょっと心配」


「ヨハンとディミットは動けるんだな、案内してくれ!」


 バロンがメイヤと呼ばれた少女の後についていく。廃墟の中を2棟ほど通り抜けた後、メイヤが1メルテ四方程の鉄の扉を開けた。


 ≪隠れてやり過ごしていたのか≫


「そのようだ。霧の中を彷徨っているよりは懸命な判断だ」


 人が1人通れるほどの通路が数メルテ続き、その先には真っ暗な空間が現れた。ヴィセは懐中電灯で最後部から照らしてやる。


「……誰? メイヤ?」


「バロン達が助けに来てくれたよ、やっと帰れる」


「ああ、良かった……」


 数人の子供の安堵のため息が聞こえてくる。明かりがよほど心強く感じるのか、皆がヴィセの許へ近づいてきた。


 まだ7,8歳と思われる男の子が2人、女の子が1人、バロンと同じくらいの男の子が1人、そしてメイヤ。5人はこの空間を偶然見つけ、霧の化け物から身を隠すため、潜んでいたのだという。


「この人はヴィセさん。助けに来てくれたんだ」


 バロンはここでようやくヴィセを皆に紹介した。ガスマスク越しでは顔など分からないため、ヴィセは自身の名前と旅人である事だけを告げる。


「それと、肩に止まっているのがラヴァニだ。驚かないで欲しいんだが、彼はドラゴンだ」


「ドラゴン……え、ドラゴン!?」


 表情は分からないが、皆が驚き、1、2歩下がったのが分かった。そんな皆を落ち着かせようと、懐中電灯を床に立てて置いた時……皆がガスマスクを装着していない事に気付いた。


「マスクは……そういえば、この部屋の中には霧がない」


「うん、この中は大丈夫みたい。暗くて分からないけど、部屋が広いから息も苦しくないよ」


「そうか。でも早くここを出よう。まだ霧の上が明るいうちに」


「はい」


「化け物、もういない?」


「追い払ったさ。しばらく歩く事になるが頑張ってくれ」


 年長の3人が幼い3人とそれぞれ手をつなぐ。ヴィセはその前を、ラヴァニが一番後方を見張る形で外に出た。


「こんな幼い子達が、この霧の下に……」


 ≪生きるとは、かくも過酷なものなのか≫


 化け物の気配を察知すると、ラヴァニが炎を吐きながら追い払う。そうして2時間以上歩いた頃、ようやく7人と1匹は霧の上へと帰還した。




 * * * * * * * * *




「ヴィセさん、本当に有難うございました!」


「おにいちゃん、ありがとう!」


「ああ。みんなよく頑張った。後で食べ物と水を持って来よう。バロン、もう少し付き合ってくれるか」


「うん」


 バラックに戻ると、孤児達や数名の支援者が集まって帰還を喜んでくれた。


 年に1、2回、あのように戻れなくなった子供達が亡くなっている。その亡骸の回収もままならず、バロンが覚えているだけでも2、30人は霧の中で行方不明か、亡くなっていた。


「それにしても、皆が隠れていた場所は探索済み地点よりかなり前だったな」


「うん、探索地点のずっと右側へ歩いていたんだけど、その先が牧場の跡みたいになっていて、そこを探していたら化け物に出くわしちゃったんです」


「なるほど。逃げ回っているうちに、ってことか」


 猛獣なら森や草原などにもいるが、霧の中で遭遇する危険度はその比ではない。収穫があったようにも見えないが、命があっただけでも良かったと言える。


 ≪黒い鎧の男は、あの霧の中から現れてバロンを救ったと言ったな。あの先に何があるのだろうか≫


「ああ、それは気になる。なあ、あの探索地点より先はまだ何も分からないんだよな」


「え、うん……そうだと思う」


 バロンや他の者も、決められた地点より先には行った事がないようだ。だが、どうやら今日救出したパーティーは散策途中や逃げている間、その先の光景をぼんやりとでも目にしていたらしい。


「私たち、多分みんなより一番先まで行ったと思う。そうだ、その時とっても凄いものを見つけたの!」


 そう言ってメイヤがニッコリ笑う。茶色の栗毛に切れ長の目。あどけない少女は霧の中での戦利品をポケットから取り出す。


「これ、すっごく綺麗なの! きっとドラゴンの鱗よ」


「うわあ、すげえ!」


「いいなあ、これ売ったらご飯いっぱい食べられるかなあ」


 メイヤの手のひらよりも大きな円鱗は、漆黒とも言える程深い色味ながら、少しの光でも反射しキラキラと輝く。


 ≪……間違いない、我らの鱗だ≫


「……何だって?」


 ≪どこで、どこでこれを手に入れた! 問うてくれ!≫


 ラヴァニは落ち着きなくヴィセの頭上を飛び回り、鱗の在り処を知りたがる。今にも霧の中へと飛んでいきそうだ。


「その鱗、どこで見つけたんだ? ああ、心配ない、横取りをするつもりはないんだ。ラヴァニが仲間の手がかりになるかもって知りたがってる」


「……分かった。命の恩人だし、特別に教えてあげる。隠れてた場所の扉を出てずっと右に行ったら牧場の跡地、その小屋の中にあったの」


 ≪他には、他には鱗が無かったのか、ドラゴンの姿は!≫


「鱗はその1枚だけ?」


「他にもあったかもしれないけど、見つけたのは1つだけ。霧も濃いし、すぐ化け物が出たからちゃんと探せなかった」


 偶然1枚だけ転がっていたのか、それともそこにドラゴンがいたのか、今の時点では何も分からない。しかし、この鱗はドラゴンと直接結びつく初めての有力な手がかりだ。


 黒い鎧の男が訪れていた地にドラゴンの鱗が落ちていた。ヴィセもラヴァニもそれが単なる偶然とは思っていなかった。


「もし鱗がたくさんあれば、俺が持って帰って来る。だからみんなは地上で待っていてくれ。戻って来たら霧の下へと潜らなくてもいい生活をみんなで考えよう」


「……分かった」


 ヴィセは皆と約束をし、そして食材を買いに繁華街へと向かう。施しばかりでは子供達の為にならないが、霧の下に降りないでくれと頼んだのはヴィセだ。


 この町に着いてからもう4、5万イエン使っている。だがヴィセは金が無くなっても紹介所に行けば稼ぐ事が出来る。日々の生活がやっとな子供を差し置き、自分の目的だけを果たす気にはなれなかった。




 * * * * * * * * *




 翌日、ヴィセは早朝からラヴァニと共に霧の下へと向かう坂道を歩いていた。


 昨晩は子供達の為にじゃがいもや根菜や肉、それにパンを大量に買い込み、スープの作り方などを教えている。乾燥干し肉なども用意しているため、明日の分くらいはあるだろう。


 拾ったという大きな鍋を2つ使えば、全員に行き渡るはずだ。


 そうやって万全の準備をして向かったのだが……。


 ≪ヴィセ、あれはバロンではないか≫


「ああ、何で霧の手前に……まさか、子供達が霧の下に!」


 視線の先にはバロンがいる。ヴィセは坂を駆け下り、霧のわずか数十メルテ上で何かを待っている彼へと声を掛けた。


「バロン、こんな所で何をしてるんだ。朝飯は食ったのか」


「おはよう、ヴィセ。飯は食った! 遅いからもう行ったのかと思ってた」


「何か俺に用……おい、何でガスマスクを持っている」


 バロンの恰好は昨日と同じだ。防護服を着込み、首からガスマスクを下げている。


「道案内」


「大丈夫だ、場所は聞いている」


「俺も行きたい」


「駄目だ」


「黒い鎧の人に会った場所にも案内できるよ。昨日は仲間を探さなきゃいけなかったし、時間もなかったけど」


 黒い鎧の男と出会った場所と聞けば、興味が沸いてくる。


 ≪この調子だと置いて行っても後から付いてきそうだ。男と出会った場所に手がかりがあるやもしれぬ≫


「……ハァ、分かった。行こう」

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