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【Lost Dragonia】ドラゴンと生き残りの少年達は、前人未到の浮遊大地を目指す  作者: 桜良 壽ノ丞
19・【operations】救世主たち

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operations-04



 * * * * * * * * *




 海面から顔を出した時、上空にはドラゴンが数体飛び交っていた。


 ドラゴンよりやや遅い程度の飛行艇が追い回し、機関銃で狙っている。


「くっ……!」


 ヴィセの右半身がビリビリと痺れている。ドラゴン達の感情に引きずられ、ドラゴン化が始まったのだ。船の上ですらこの状況なら、島の方も無事か分からない。


 ≪ヴィセ、この飛行艇は我らを狙った! 焼き払い、海に叩き落としても文句は言わせぬぞ!≫


「文句を言うつもりはない、だけど皆怒りを堪えてくれ! 逃げられるドラゴンはドラゴニアへ向かうんだ!」


 ≪人の子、我らは戯れておるだけだ。逃げるだと? 見ておれ、空で我らに敵うものなし≫


 ≪怒ってはおるが、我を忘れてはおらぬ。皆、ヴィセらに恩義を感じておるのでな≫


 ヴィセと潜水艇の操縦士が船の甲板に上がり、操舵室に転がり込んだ。船はすぐに島へと引き返す。ドラゴン達は逃げるどころか飛行艇を揶揄い始めた。


「あ、あんた、その腕……」


「ドラゴンの血の副作用です、ドラゴン達が本気で怒り狂ったなら、俺もドラゴンの姿となり飛行艇を襲うでしょう」


 ヴィセがドラゴン化した腕を見せていると、船のすぐ後ろで轟音がし、飛行艇が1機墜落した。


「うおっと! 馬鹿め、無理して墜落してやがる」


「ラヴァニ! やられた仲間はいるか!」


 ≪1体撃たれたが尻尾の鱗が剥がれた程度だ、それだけでも万死に値するが堪えてやろう≫


 飛行艇は数機、対してドラゴンは数十体だ。大昔に人と戦った事があるドラゴン達は、進歩のない飛行艇との戦い方を忘れていなかった。


 人は150年前までの技術の多くを失い、飛行艇を進化させるどころか維持するだけで精一杯だ。慣れたドラゴンの動きに全くついていけない。


 整備が行き届いていない機体は無理が出来ず、速度も出ない。機関銃の連射も遅く、その弾道はもはや狙って撃っているのかさえも怪しい。


 ドラゴン達はヴィセ達の無事を確認するまで待っていたかのように、飛行艇を追い回し始めた。


 ≪おーい! 海が汚れる! もう……まあいいか、サカナの棲み処になるし≫


 ≪サカナが集まると、ジャブジャブも集まるからね!≫


 ≪ドラゴンさん! もっと叩き落としておくれ! ジャブジャブ狩りが楽になる!≫


 ≪あ、そうだ。汚いどろどろを消すために浄化石を使わせてもらうよ≫


 ラハヴ達は溺れまいともがく戦闘機乗りに目もくれず、漏れ出た油の除去を始める。ガラクタも歓迎していないが、バラバラになって沈んだ飛行艇は、やがて沈没船のように魚礁となる。仕方ないといってせっせと沈め始めた。


 ラハヴ達の言葉は船長にも伝わる。船長たちもまた、飛行艇には目もくれていなかった。


「ヴィセさんよ! 先に言っとくが、墜落した飛行艇の奴らを助ける気はないぞ。人質にだってごめんだ」


「彼らも覚悟の上だろう。見捨てるのは心苦しい気持ちもあるけどよ、島が心配さ」


「島に連れ帰りゃ、結局島の掟で水責めだ。今死ぬか後で死ぬかだ」


 飛行艇はドラゴンを狙うどころか、ドラゴンから逃げ惑うだけとなっている。この船に助けを求めるようなそぶりも見せるが、船長は知らん顔だ。


「浮遊鉱石は! 盗られていないか!」


 ≪盗られる? 仲間は浮遊鉱石の浮力を借り、あっと言う間にドラゴニアだ。あのような鈍き飛行艇に奪われるものか≫


 ドラゴン達はどこか楽しそうでもあった。誰の差し金で飛んできた飛行艇かは分からないが、きっとドラゴンを撃ち落とせるつもりで来た事だろう。


 遠ざかる機体を見つめていると、ラヴァニが咆哮を上げ、ドラゴン達が一斉に飛行艇の真上に集まった。


 プロペラ部分を器用に避け、嘲笑うかのように圧し掛かる。ある個体は尾翼を炎で包み、また別の個体はコックピットに炎を吐きかける。


 もはや、これはドラゴンにとっての狩りだ。ヴィセのドラゴン化が進んでいないのは、彼らが怒っているどころか、楽しくて興奮しているに過ぎないからだった。


 パラシュートで脱出し、この船に舞い降りようと試みる者も見える。対して船長は「あらよっ」と方向を変え、パラシュートの落下予測地点から逃れる。


「あの飛行艇乗り達、目撃されたからか知らねえが、俺達の船にも機銃掃射しやがった」


「見ろよあの甲板の先! 縁が抉れてんのがそうさ。俺達が助けると思ったか馬鹿め」


 全員が飛行艇乗りの救助を拒否する。人の命を狙うのなら相応の覚悟もしている。人を狙った時点で、もう人ではない。船長たちはヴィセにそう告げる。


 その考え方は、どこかブロヴニク地区の村八分にも通じるものがあった。


「ラヴァニ、1人くらい生かして、そいつらのボスに見せつけた方がいいんじゃないか」


 ≪そのような機会ならまたいつでもあるだろう。今回は良い≫


「あ、ああ、そう……」


 ドラゴン達は情けを掛けるつもりが一切なかった。自分達と共存を選ばず銃を向けた者は、ドラゴンにとって敵でしかない。


 ヴィセがいくら人としての立場で慈悲を説いても意味がない。彼らには彼らの生き方と正義があった。ヴィセにそれを否定する権利はない。飛行艇乗りへ同じ人だからと情けを掛けようにも、今度は船長が許さないだろう。


「島に残ったドラゴンは少なかったはずだ。島が無事だと良いんだけど」


「ラハヴ様もいるんだぞ。空ならともかく、船で襲いに来ているとしたら……相手が可哀想なくらいだな」


「ラハヴ様が怒れば大型の船だって沈む。奴らは分かってねえんだ、人が何でも手に入れ制圧出来た時代は、150年前に終わったって事を」


 作戦は中断となってしまったが、幸いにもドラゴンやラハヴ達に被害はなく、浮遊鉱石も奪われていない。ドラゴン達の話が本当であれば、ドラゴニアに運んでいる事も知られていないだろう。


 もっとも、現代に何千キロメルテも飛び続けられる飛行艇は存在しない。先程の飛行艇は、おそらく島から400キルテ離れた大陸から来ている。


 これだけ追い回されて燃料を使っていれば、どのみち帰る事は出来ない。


「……ドラゴンや船を狙わなければ、彼らも俺達が霧から救いたい者の1人だったかもしれないのに」


 貴重な飛行艇を5機も6機も失い、彼らの仲間はどう思っているのか。ただ、ヴィセがその大陸を救う順番は後回しになった。いや、訪れないかもしれない。


 ≪ヴィセ、我が甲板に下りる。鞍がなくても乗れるか≫


「首にしがみ付いていいなら!」


 ≪島の様子が気になる、急ぐぞ≫


 ラヴァニが揺れる甲板へと舞い降り、ヴィセがラヴァニの首にしがみ付く。


 ≪そなたら、仲間が守る故、心配はいらぬぞ≫


 ≪おれ達もお忘れなく! ポンポンで襲い掛かってきたら、体当たりで沈めてあげよう≫


 ≪サカナの棲み処が増えるね!≫


 ≪そうすればジャブジャブ食べ放題だ! さあ来い! 悪いポンポンめ≫


 ラハヴ達は楽天的な考え方をしているようだ。何を話していても楽し気に聞こえてしまう。


「……俺達が心配するよりも、自然は逞しいのかもしれない」


 ≪人は成せる事が他の生き物よりも多い。だが驕らぬことだ。我らは驕らぬヴィセ達が心地よい≫


 ラヴァニが猛スピードで島へと向かい、あっと言う間に島の姿が見えてきた。ドラゴンは負けないと言いつつ、島に残った仲間の事が心配だったのだろう。


「ドラゴン、1体も飛んでないな!」


 ≪我が仲間は助けを求めておらぬようだ。飛行艇の姿もないが、念のため集落から少し離れて下りるぞ≫


 浜に大勢の人が集まっているのが見える。ヴィセ達は少し離れて南へ回り込み、皆から見えないよう森の陰へと舞い降りた。

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