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【Lost Dragonia】ドラゴンと生き残りの少年達は、前人未到の浮遊大地を目指す  作者: 桜良 壽ノ丞
16・【Awake】世界の再始動

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Awake-03



 マニーカの雰囲気が変わった。それまでの穏やかな口調から、急に焦ったような早口に変わる。


「浄化石が浮遊鉱石って事か。いや、モニカの地下にはまだ浮遊鉱石が眠っているよ」


 ≪ヒトハ、コノ地ノ浄化石ニ 手ヲ出シテハイナイノダナ≫


「あると突き止めたのは、俺達と、一緒に調べてくれた1人だけだよ。手は付けていない。地下水に含まれる浮遊鉱石のおかげで町が保たれているからね、余計な事を教えたくない」


 ≪ヨカッタ……≫


 マニーカは浮遊鉱石の事を知っていた。更には、大切なものとして認識しているようだ。


「ねえ、どりゅーのマニーカは浮遊鉱石のこと知ってたの? 俺達ね、浮遊鉱石で霧を全部消したいんだよ」


「マニーカが浄化石と呼んでいるものが毒霧を吸収するんだ。恐らくモニカの地下にあるだけでは足りないけど」


 ≪鉱石ガ必要ト言ッテイタネ。マサカコノ世ガ毒霧デ包マレテイヨウトハ 思ワナカッタケレド、タシカニ浄化石ナラ……≫


 マニーカもまた、ドラゴン達のように浮遊鉱石を巡る争いを見てきた。ヴィセ達が予想していた通り、マニーカはこの地の浮遊鉱石を守って来たのだという。


 ≪我らはドラゴニアのため、空から見下ろせる全てを守ろうとしていたが……ドラゴニアが浮かび上がった跡地以外を探す術がなかった。土の中はそなたが守ってくれていたか≫


 ≪コチラハ 地上ノ見エル範囲ノコトシカ分カラナイ。ケレド土ノ中ハ自由ニ動キマワレル。穢レガ浄化石ニ及ブ臭イガスレバ、手段ヲトワズ阻止シテキタ≫


「この毒霧については説明した通りだ。海を越えた地にいる人々の祖先の仕業で、人は毒霧を消す手段を持っていない。浮遊鉱石が必要なんだ≫


「ねえ、モニカの地下にある浮遊鉱石って使ったらだめ? 使ったら怒る?」


 バロンのお願いを聞きながら、マニーカはとても悩んでいた。バロン達は私利私欲のために浮遊鉱石を求めている訳ではない。ドラゴンであるラヴァニが共に行動していることからも明らかだ。


 しかし、マニーカにとっても浮遊鉱石は重要なものだ。土壌の汚染があった時、マニーカは石の力で大地を元に戻してきた。マニーカ自身が浄化できるとしても、許容量はある。自身を救うためにも欠かせないものだった。


 ≪……町ノ地下ノ浄化石ハ コチラニ必要ナモノナンダ。協力ハ シタイノダケレド≫


「だよなあ、この土の状態で生きていくなら、毒抜きできる浮遊鉱石は必須だよな」


 ≪モニカの地下水に含まれる成分の事を考えても、採掘できる量は限られるであろう。モニカの地下の浮遊鉱石に霧を吸わせ、汚染し尽くす訳にもいかぬ。どのみちそれだけで足りるものではない≫


「ちょっとだけしか使えなかったら霧消えない?」


「ああ、膨大な量が眠っている事を期待していたけど、そこまでじゃないようだな」


 ヴィセ達は少し落胆していた。浮遊鉱石の量が十分でない事は予見していたが、マニーカが協力してくれることを密かに期待していた。ヴィセ達には採掘の手段がないため、マニーカが掘り出してくれたならなお良い。


「ねえ、ちょっとだけもらうのはだめ? 早く霧を消さないと、ドラゴニアが落っこちちゃうんだよ。ドラゴンも浮遊鉱石を探して頑張ってるけど、足りないんだ」


 ≪コノ地ノモノハ……≫


 マニーカはダメと言わず、躊躇うばかりだ。僅かでもあれば、霧は消せなくともドラゴニアが落ちるまでの時間は稼げる。ヴィセはもう一押しだと思い、頼み込む。


「ドラゴニアのために、少しでも分けてもらえないだろうか。それが欠片1つ分でも構わない。それくらい差し迫った問題なんだ、だから……」


 ≪気持チハ、ワカル。コチラモ渡セルナラ、渡シタイ。ケレド……ソレホドノ量ハ、モウ残ッテイナイト思ウ≫


「霧のせいで普通の石になっちゃったの?」


 ≪封印サレテイタカラ、霧ガ出タ後ノコトハ 知ラナイケレド。カツテコノ地ヲ浄化スルタメニ、カナリノ量ヲ使ッテシマッタンダ、スマナイ≫


「じゃあモニカの地下にあるのは」


 ≪ソンナニ大キナ鉱脈ジャナイ。モチロン、コチラノ体ホドノ鉱脈デハ アルケレド≫


 マニーカはかつてのこの地の惨状を語り始めた。当時の町から少し離れた丘に坑道が出来た時、人々は環境破壊という事象に無頓着だった。鉱山からは有毒な重金属が漏れ出し、川は赤黒く染まった。


 マニーカは当然阻止に動いた。鉱山に落盤を起こし、周囲を土砂で完全に埋めた。

 おかげで鉱毒の流出も治まったのだが、汚染された水が溜まった沼や、染まり切った河川まで元に戻すことはできない。


 自身の浄化能力でせっせと土壌や河川を改善していたものの、とうとう許容できる分を超えてしまったという。


 ≪具合ガ悪クナリ、土ノナカニ潜ッテイラレナクナッタ。地表ニ顔ヲ出シタ途端……体内ニ溜メ込ンダ毒素ヲ全テ吐キ出シテシマッタ≫


「そんなに、酷かったのか」


 ≪我らが気付いていたなら、共に浄化に励んだというのに。任せきりですまぬことをした≫


 ≪イヤ、謝ルノハコチラノ方ダ≫


「ん?」


 マニーカはヴィセの膝の上でしょんぼりとし、ボソリと呟く。


 ≪……吐キ出シタ毒素ハ、町ノ真ン中ヲ濁流トナッテ襲ッテシマッタ。黒ク染マッタ大地ハ腐リ、コチラモ瀕死トナッタ。ソレラヲ浄化スルタメ、一帯ノ浄化石ヲ オオヨソ使イ切ッテシマッタンダ≫


「町を、濁流が……おい、ラヴァニの仲間が黒く巨大な濁流を見たって言ったよな」


 ≪ああ、言っておった。そうか、我の仲間はその様子を見ておったのか≫


 ≪……スマヌ、コチラガ無理ヲセズ ユックリト浄化スレバ≫


 マニーカはこの一帯にあった浮遊鉱石を、おおよそ使い切ってしまったと告げる。モニカの地下にある鉱脈は、元に戻った時のマニーカの体ほどしかない。


 それだけの量を使ったとしても、周辺の霧が一時的に薄くなる程度だろう。


「マニーカは悪くないよ。浮遊鉱石で土を綺麗にしたんだよね、俺達がやりたいことと一緒だよ。浮遊鉱石を使わなかったら、マニーカも死んじゃったかもしれない」


 ≪……君ハ、優シイノダネ≫


 マニーカはバロンの膝に這い寄り、感謝の印として頭を擦り付ける。そう言えばまだ防護服のままだったと苦笑いし、ヴィセとバロンは首から下げたガスマスクを外し、防護服を脱ぐ。


「さて、モニカの謎は解けた。そして……いよいよ浮遊鉱石のあてがなくなった。モニカの皆の生活を考えると、水に含まれる浮遊鉱石の成分は必須だ。僅かしかないなら採掘できない」


 ≪他所で僅かな量を集め回るという手段もあるだろう。我の仲間がドラゴニアが飛び立った地を懸命に探しておる≫


「と言っても、その場所以外にどこを探せって言うんだ」


 ドラゴン博士のディットと共に導き出した答えは、大正解だったと言えよう。けれどヴィセ達の旅の目的としては不正解に近い。浮遊鉱石が見つかったとしても、ドラゴニアのため、世界の霧のために使えなければ意味がない。


「あ、ヴィセ、雪!」


「……本当だ。ラヴァニ……はだめだ、消し炭になる。バロン、紙くずを燃やして木を燃やせ。焚火にするんだ」


「うん!」


 ≪駄目とは何だ≫


 雪がチラつきはじめ、話し合いは中断となった。ヴィセは付近の家々の焼け跡を回り、焦げていてもまだ使えそうな柱や板をかき集める。


「ヴィセ、何してるの?」


「簡単でも、雪や風を防げる場所が必要だ。ジェニスさん達が到着しても、野ざらしでは冬を越せない」


「俺も手伝う!」


 バロンがラヴァニとマニーカを焚火の傍に置き、ヴィセの手伝いを申し出る。そんな2人をマニーカは不思議そうに見つめていた。


 ≪ラヴァニ、君達モシカシテ……知ラナイノカイ?≫


 ≪何のことだ≫


 ≪確カニ、コノ付近ニハ浄化石ハ残ッテイナイ。デモ君達ノ話ガ本当ナラ、マダ浄化石ハ沢山アルッテコトジャナイカ≫


 ≪……何だと?≫


 ラヴァニが思わずマニーカに詰め寄る。マニーカはそんなラヴァニに対し、呑気に笑って見せた。

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