3章19話 マオ
第一部のラストです!
「わわっ!?誰です!?」
後ろから急に頭を撫でられた小さな魔王は驚いて飛び上がった。
「お嬢さん。人に名前を聞く時は自分の名前を先に言うといいよ」
「な!バカにしないで!マオの名前はマオ!由緒正しき第3代目のマオーなのだ!」
ぺったんこ少女はそう言った。
「そかそかーマオって言うのかー」
「むー!子供扱いしないでー!」
「はーい。ではそんな大人なマオちゃんにはこれをあげようねー」
ユーはポケットからセラさん謹製の特製飴玉をあげた
「お?それはセラさんが作ったやつか。だいぶ美味しそうになったな」
「ご主人様の教え方が上手なのだと思います」
「セラさんはのみこみが早いからな」
マオは飴玉色々な角度から見たり、匂いを嗅いだり、魔力探知をかけたりした。
「ぺろっ…ん!甘いのだ!これ!」
それを見た修斗とユーは同じように飴玉を取り出して口に入れた食べた。
「な。甘いだろ?」
「美味しい!まだあるの?」
「ああ。あるよ」
「こんな美味しいものがあるなんて知らなかった!」
「そうかそうか。よかったな」
「ありがとう!お父さん!お母さん!」
「「はうっ!」」
修斗とユーはノックアウトされた。
「それじゃあ、お父さんとお母さんと一つ約束してくれないか?」
「いいよ!なになに?」
「もう人間の街を襲うのは辞めよう」
マオはそれを聞くと困ったように俯いてしまった。
「マオもそうしたい。でも、マオはマオーだから。みんなの、魔族のみんなの期待に応えないといけないの…だから…ぐすっ…マオは…魔王として…ぐすっ、魔王らしくしないといけないのだ…」
「…そうか…大変だな…辛かったな…大変だな…」
修斗はぎゅっとマオを抱きしめた。
「マオちゃん…大変でしたね…もう大丈夫ですよ…私達がいますからね…」
修斗とユーは2人でマオを包み込むように優しく抱いた。
「う…う…うわぁああああああん!ああああああん!」
マオはついに我慢できなくなり、堰を切ったように泣き出してしまった。
数分後
「ぐすっ。ごめんなさい。急に泣いてしまって」
「いいよ。辛かったんだね」
「大変でしたねマオちゃん」
「2人ともありがとう、【成長】」
そう言うと小さな魔王は麗しい淑女になった。
「改めまして。私の名前はマオ。今では三代目魔王で、人族とかには『災厄の魔王』とか言われています。
「修斗だ。しがない冒険者をしている」
「ユーです。修斗様の奴隷です。パートナーでもあります」
「そう。それで聞きたいのだけど、2人は小さい方の私に何かようがあって?」
目の前の大きなマオは全力で威圧しているようだ。
「他意はない。この森に山菜を採りに来たら偶然小さな女の子が泣いていたからなぐさm…「嘘ですね」
修斗はいきなりそう言われて面食らった。
「小さい方の私と大きい方の私は色々共有してるんです。貴方がたが小さい方の私と何をしたかは全て分かっています。一体何が狙いで私に近づいたんですか?私は腐っても魔王です。返事によっては、それ相応の手段をとります」
「敵対する意味はない。ただ、このままも行くと、俺たちの住む街がある。だから俺達の街を攻撃するのはやめて欲しい」
「すいません。そうしたいのはやまやまですが、私も魔王。同じ魔族の人達に顔向けができません。それに私、これでも魔王ですよ…」
そう言うとマオはまっすぐ修斗とマオを見据えて、こう言った。
「立ち塞がるものは、全て破壊しててでも通ります」
「【待て】」
「…ぐっ…」
マオは体に激しい抵抗感を感じ、動けなくなった。
「この魔王である私を…拘束するなんて…あなた方は…勇者?……」
「違う。俺はただのしがない冒険者だ。俺は話しに来たんだ。別にお前の前に立ち塞がるつもりはない。【話そう】」
「…ぐぅっ……」
マオはさらに修斗の言葉に強い強制感を感じ、攻撃する事も出来なくなった。
「…わかりました…」
「ん」
そう言うと修斗は近くの岩に腰掛けた。
「その前に一つ、その魔法を教えてください…魔王である私ですら拘束しうるその魔法は?」
「【言霊】だ」
「……初耳です…」
「俺は別にお前に街を破壊するなとは言わない。お前は魔王だからな。魔王は魔王らしくしないといけない」
「ならどうして私を…」
「俺達の住む街を破壊するのはやめてくれ。それだけだ」
修斗は続けてこう言った。
「俺は勇者じゃないし、賢者でもない。俺はただのしがない一般的な冒険者だ」
「一般的な冒険者が魔王である私を拘束できるわけないでしょ…」
「まあ置いといて、俺は世界中全ての人間を救うつもりはないし、その義務もない、そして、お前が魔王として人々に死と恐怖を与えなければいけないのもわかっている。だから、このムークの街だけは襲わないで欲しい。この街には俺に大切な人が多くいる。ユーやギルドの仲間。宿屋のアークさんは超一流の武器を作るし、セラさんの料理は半端なく美味い。ギルド嬢のセリアさんが仕事が超上手なんだ。人間の中でも俺はあの街には特に思入れがある。だから、この街を襲うのはやめてくれ。頼む」
「私もお願いします!」
修斗とユーはマオを見据えてそう言った。
「…それは出来ません…」
マオは俯いたままそう言った。
「…そうか…」
「なぜならまだ私はあなた達の言う街がどれほど素晴らしいかまだ知りませんから!」
マオはそう言うと修斗に向かってこう言った。
「修斗さん。私は魔王ですので街は滅ぼさないといけませんし命は奪わないといけません。ですがそれは無差別ではありません。ですので、私は貴方がたについていきます。あなた方の元で暫く見て回ろうと思います。それでいいですか?」
マオは笑顔でそう言った。
「お、おう。少し待ってくれ」
「ユー。どう思う。これはいいのか?」
「いいんじゃないですか?少なくとも無差別ではないものだと思いますよ」
「しかし、魔王だぞ?街中に入れてもいいのか?」
「でもご主人様についていくと言っていますし」
「お話は終わりました?」
「「うぉっ!?」」
「ふむ。まだ信用できてないようですね。ではこうしましょう。【魔道具製造】」
そう言うとマオは、首輪のようなものを修斗に渡した。
「ご主人様…これ…私がつけていた…」
「ああ。〈隷属の指輪〉だ」
「はい。これで私を拘束すれば大丈夫です。少なくとも首輪は信頼出来ますよね?」
「あ、ああ…じゃあ遠慮なく」
修斗は首輪をマオにつけた
「俺に命令は…【不要な殺害や破壊などを禁ず】だけだな」
マオは驚いた顔で聞いた。
「え?それだけでいいんですか?」
「ああ。あんまり制約つけると、何かと動きづらいだろう?」
「ふふ。既に私を信頼してくれてるみたいですね…」
そう言うとマオは修斗の頰にキスをした。
「これからよろしくお願いします。ご主人様」
ユー「は!先を越された!?ぐぬぬ…」
マオ「そういえばなんでユーさんは首輪をしていないのに奴隷を名乗っているのですか?」
ユー「もっと強い束縛がありますから!」
マオ「…ぐぬぬ」
以上で第一部終了となります!
次回からは第二部に入ります!




