人間の知恵
はいどうもニノハジです〜
ニイルが閃いた作戦とは!?
そんなお話です!
お楽しみいただければ幸いです!
ではどうぞ!
「本当にそんな魔法あんのか?俺は魔法には詳しくねぇが、そんなのがあるならあの『傲慢』野郎が黙ってねぇぞ?」
「残念ながら、その『傲慢』を追い詰めたのがこの魔法よ。だから威力も保証するわ」
ニイルから作戦内容を聞き、にわかには信じがたいと言うディードに、レイが反論する。
序列大会の時を思い出しながらレイが語ると、それに思わずといった様子でディードが吹き出す。
「うはは!マジかよ!?そりゃあの腹黒もテンパったろうなぁ!その時の奴の顔を拝みたかったぜ!」
その様子に、ルエルの嫌われようを垣間見て笑みが溢れそうになるレイ。
そんな気の抜けた雰囲気の2人をニイルが叱責した。
「お喋りはその辺で。流れは先程話した通りに。しかし私達も隙があれば攻撃を与えていくのを忘れない様に、お願いしますよ?」
そう説明するニイルに、荒々しく笑いながらディードが答える。
「ったりめぇだ!コイツにだけ美味しい所を持ってかせる訳無ぇだろ!あのデカブツを殺すのは俺だ!」
そう言いつつ、尚も魔力を吸い取るディードに呆れながら今度はレイへと語り掛けるニイル。
「貴女が頼りです。私達が守ってあげますから、貴女はあの魔法を奴に当てる事だけを考えなさい」
その言葉が少し癇に障ったレイが言い返す。
「舐めないで。あの頃から私も強くなったわ。もう守られるだけの存在じゃないって事、教えてあげる」
「ふっ……知っていますよ」
思わず笑ってしまったニイルに、満足そうに笑い返すレイ。
それを取り繕うように言葉を続けた。
「期待してますよ。くれぐれも彼らの想いを無駄にしないでくださいね」
「彼ら?」
意味深な言葉に思わず訝しむレイ。
その反応に、無意識だったのだろう。
「……忘れてください」
思わず出た言葉にバツの悪そうな顔をして、ケートスへと向き直るニイル。
思わず追求したくなったレイだったが、今はそれどころでは無いと気を取り直し頭を振る。
そして『神威賦与』を全開、情報の波を上手く捌きながら1つの魔法を構築していく。
「では、行きます!」
それと同時、ニイルの言葉で残り2人も動き出す。
まずニイルがナイフを飛ばし、ケートスの魔法を減らしていく。
そうして出来上がった道を……
「行っくぜぇぇぇぇぇ!」
叫びと共にディードが駆け抜けた。
ニイルが消しきれなかった魔法をすれ違いざまに吹き飛ばし、あるいは吸収し。
更に速度を増しながら突き進む。
一瞬でケートスの目の前まで到達し、彼を守るように展開されている水の壁に手を突っ込んでディードが叫んだ。
「喰らい尽くしてやらぁ!」
その瞬間、魔力を奪われた水は制御を失い、ただの水に戻り海へと落下していく。
「しゃあ!このまま殺してやらぁ!」
【甘い!】
その隙を狙いケートスへ攻撃を仕掛けようとするディードだったが、周囲が凍りつき身動きが取れなくなる。
更にそんなディード目掛けて水生物が飛来するが、間一髪ニイルのナイフがそれを阻止し、水が飛び散るのみに終わった。
その間にディードは力ずくで氷を破壊。
体制を整える為に距離を取った。
そんなディードに追撃を狙ったケートスだったが、今までよりも速い動きでその全てを躱される。
【まだ上がるか!忌々しい!】
苛立たしげな声と共に、ディードに重点的に魔法を向けるケートス。
しかしその素早い動きと、更にナイフによる邪魔が入り一向にディードを捉える事が出来なかった。
【ちょこまかと小賢しい!ならばまとめて周囲一帯吹き飛ばしてくれる!】
「ここね」
それに業を煮やしたケートスの意識が2人へ向き、レイの存在が一瞬外れる。
その瞬間をレイは狙っていた。
「穿て!『電磁加速魔弾』!」
2人が時間を稼いだ隙に構築し、待機させていた魔弾を打ち出す。
音を置き去りに、衝撃波を伴い発射された魔弾は狙い違わずケートスの左目に直撃。
それだけに留まらず、どうやら貫通した様で腹部を通り抜け、後方の海水を爆発させた。
【ぐおおおおおおお!!!】
ケートスに限らず、『幻想種』以上の存在は常に魔法障壁を展開している。
にも関わらずそれをあっさり貫いたその威力に、思わずケートスが苦悶の声を上げた。
「まだだ!畳み掛けろ!」
しかしケートスは異常なまでの回復力を持つ。
故にニイルはそれに油断せず、大声で全員に呼び掛けた。
その声に応じ、レイは次弾を装填。
ディードは一気にケートスへと襲い掛かる。
【舐めるな劣種共がァ!】
だがここでケートスが魔法を全力展開。
自身の周囲に魔法を集中させ、更に盾として体の周りに分厚い氷を張り巡らせていく。
そしてどうやらその氷は徐々に厚さを増していっているらしく、レイが放った次弾をなんと防ぎきってしまったのだ。
更に空いた穴はすぐに塞がれ、また厚みを取り戻していく。
その間に、ケートスは回復に専念しようと目論んでいた。
【どうやらその魔法は連射が出来ぬ様だな!大した威力だが、それではこの氷を破る事は不可能!】
氷に包まれながら吠えるケートス。
魔法で回復しながらも、この原因となったレイを始末するべく、魔法をレイへと向ける。
しかしレイは3弾目を準備しながらも、向かってくる魔法を全く見ない。
それどころか意識すらせず、全てのリソースを『電磁加速魔弾』に割いていた。
「やらせる訳ないでしょう?」
何故なら、その全てをニイルが防いでくれると信じているから。
言葉と共にナイフを飛ばし、レイへと迫る魔法を全て吹き飛ばす。
それだけではなく、至近距離まで近付いた魔法は『神威賦与』を用いて水の存在ごと消滅させていった。
「流石にこの同時使用はキツイですが、貴方を殺せるのなら安いものです」
【どこまでも邪魔な!】
血涙を流しながら言うニイルに、苛立ちを隠せないケートス。
そして、ここまで全てニイルの計算の内だと思い知る事になる。
「だから!俺達を忘れんじゃねぇよ!」
レイに向かわせた分、周囲に集めた魔法が少なくなる。
その隙を狙って再びディードが強襲。
氷の壁を殴りつけた。
ただでさえ高威力の拳だ。
その上魔力も吸い取られ、通常より格段に脆くさせられる。
また障壁の復元、厚さを増す行為も阻害され、連続で叩き込まれる拳により徐々に氷が削られていった。
「オラララララララァ!」
【調子に、乗るな……!?】
「させませんよ?」
そんなディードを排除すべく魔法を展開するが、その尽くをニイルのナイフが防ぎ、更に障壁にすら攻撃を与えていく。
次々に、氷に刺さったナイフが爆発していき、ディードの拳も相まってどんどん氷が削れていく。
しかしあと1歩届かない。
ギリギリのところで氷が復活し、ケートス本体へと攻撃が届かないのだ。
【貴様達がどれだけ攻撃を重ねようと!この無敵の壁を壊す事など出来はしない!】
先程の『電磁加速魔弾』を撃ち込まれようと防ぎきれる、そう確信したケートス。
だがその想定をレイは待っていた。
「本当、『傲慢』の様に油断してくれてやりやすいわね」
何故なら複数の『電磁加速魔弾』の砲門が、ケートスを狙っていたから。
確かに、昔に比べて発射までの速度は格段に早くなったが、まだ連射出来る程では無い。
そんなレイが考え出した方法、それが……
「『複製』で数を増やす!『6連』!」
レイがケートスへ向けて魔弾を放つ。
弾はそれを予期して離脱していた、ディードが削っていた場所に見事的中し、氷に穴が空く。
そこに間髪入れず次々に魔弾を撃ち込み、6発撃ち込んだ時には最初の1発目に使った魔法の準備が完了する。
そうして止まらず発射させる事により、連射を可能としていた。
【がああああああああ!!!!】
ほとんどの氷が砕かれ、体が穴だらけになっていくケートス。
そんな姿を見てニイルは1人。
「見てるか皆……人類の叡智はようやく、神を殺せると証明出来たぞ」
そう呟くのだった。
如何でしたでしょうか?
そろそろケートス戦もクライマックスとなります!
最後までお付き合いいただければ嬉しいです!
ではまた次回にお会いしましょう!




