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バケモノが愛したこの世界  作者: 一一
第4章 ???編

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87/90

『幻想』VS『暴食』

はいどうもニノハジです〜

戦闘描写苦手マン、頭を悩ませる日々が続いております……

ちゃんと楽しめているでしょうか?

これからも精進していきますので、今後ともよろしくです!

ではどうぞ!

 ケートスの周囲の海水が荒れ狂い、小さな水の玉が無数に浮かび上がってくる。

 先程の応酬から、魔法で物質を作り出すのは愚策と気付いたのだろう。

 徹底的に海水を利用する戦法に切り替えた様だとレイは考察する。


【貴様達の様な、神を侮辱する不快な存在は塵も残さぬ!彼らに代わり、我が貴様らに神罰をくれてやろう!】

 明らかに地雷を踏んだのだろう、ケートスが殺気を撒き散らしながら叫ぶ。

 それと同時に、多数の水球がレイ達へ向けて放たれた。


 まるで雨の様な光景、その物量と小ささ故の速度は脅威だが、如何せん球が小さい為、殺傷能力は低そうに思える。

 その魔法の解析をしながらも魔法障壁で事足りるだろうと判断したレイ達は自身の周りに障壁を展開。

 ディードに至っては、当たりながらも突貫するつもりで構えていたのだが……


「!?避けて!」

「チッ!」

「クソ!」

 解析の結果、()()()()()()()()()()()()、咄嗟に転移魔法を発動するレイ。

 レイの警告と同時、同じ解析結果を視たニイルも転移魔法を発動。

 ディードはその直感で危険を察知、舌打ちしながら『空底』にて回避を行った。


【遅い】

 しかしその判断は1歩遅く、3人に届く寸前の水球が突然爆発を巻き起こす。

 ケートスの声と共に爆発した水球は、今までのより威力が大分小さい。

 しかし小さいと言っても『幻想神種』が放つ魔法だ。

 その威力は高度な炎魔法並、それが更に周囲の水球も巻き込んで連鎖的に爆発していく。

 最終的に巨大な爆発となったそれは大きなキノコ雲を生み、転移先にてそれを眺めるレイとニイル。


「な、なんて威力……」

「魔法を視ただけでは分からなかったでしょう?」

 ニイルに内心を言い当てられ、思わず頷くレイ。

「えぇ……あの攻撃を視た時、水球の内部温度を急上昇させる魔法が視えた。その結果()()()()()()()()()()()()()()()から避けたのだけれど、これ程だとは思ってもみなかったわ」


 そのレイの言葉に、でしょうねと同意しながら答える。

「奴が行ったのは、水球の温度を急上昇させた事による水蒸気爆発という現象です。それによってただの海水が、凄まじい威力の爆弾となって我々を襲いました」

「水蒸気爆発?」

 聞いた事のない単語に疑問を浮かべるレイ。

 ニイルはそれに頷きながら続けた。

「そうです。水の温度が変わる事により起こる現象ですが、それ故に魔法ではありません。貴女は魔法のみを視ていたでしょうし、()()()()ではまだ解明されていない現象ですから、分からないのも無理は無いかと。しかしあの光景の通り、とてつもない威力を生み出す事も有る。魔法だけを視ていると、足元をすくわれるかもしれませんよ」


 それにレイは目の前を視る。

 そうすると今起きている現象について、色々と判明した。

 どうやら先程の水球が高温になった事により蒸発、それが膨張し天然の爆弾になった様だった。

 正確にはもっと複雑な現象らしいのだが、今のレイの知識量ではそこまでしか理解する事が出来なかったのだ。


 いや、恐らく今生きている人間のほとんどが理解出来ないであろう。

 それ程の複雑な原理で発生していた。


 そして思い出す。

 今と似た様な感想を、かつて抱いた事に。

(これは、そう。『電磁加速魔弾(レールガン)』を教えてもらった時にも感じた事。何故ニイルはこんな事を知っているのかしら?)


神威賦与(ギフト)』によってもたらされる情報では、この現象の名前までは判明しなかった。

 少なくともレイの力では原理までは分かっても、水蒸気爆発という単語の記載は無かった。


(今の私の『神威賦与(ギフト)』は、ニイルとほぼ同等と以前彼が言っていた。なのにこんな差が生まれたという事は、彼が嘘をついているか()()()()()()()()()()という事?)


 力に差が有るというのなら納得出来る。

 実際、処理能力はニイルの方が上であり、使い方も熟知している。

 その影響でレイより解析能力が上だと言うのなら、嘘をつかれた事に不満は有るが、一応の納得は出来るとレイは思っていた。

 ()()()()()()()()()()()


(ニイルはどこで知識を得たというの?)

 その事について言及しようとしたレイだったが、突如キノコ雲の中から飛び出してきた物体が視界に映る。

 レイ達のすぐに降り立ったそれは、近くで見るとボロボロになったディードであった。


「チッ!クソが!道理であの爆発を吸収出来なかった訳だ!」

 どうやら2人の会話を聞いていたのだろう、ディードが吐き捨てる様に言う。

 そんな彼も全身に火傷を負っており、何よりその左足が膝下から無くなっていた。


「腕の次は脚ですか」

「うるっせぇ!いいからさっさと魔力を寄越しやがれ!ようやく楽しくなってきた所なんだ。次こそアイツを殺す!」

 ニイルの言葉に怒鳴り返すディード。

 しかしその顔は久しぶりに現れた強敵に、隠しきれない笑みを浮かべている。

 そんなディードに呆れながらもニイルは言う。

「それは良いですが何か対策は有るのですか?無策で突っ込む輩に分け与える魔力なんてありませんよ?」


 そう言いつつディードに魔法を放ち、魔力を分け与えるニイル。

 その魔力で治療しながらディードは言った。

「確かにあの物量は厄介だか水球に威力は無ぇ。なら爆発する前に突っ切りゃ良いだけだ」


 一瞬にして元通りになった身体を確認して言うディードに、またしても呆れそうになるレイ。

 しかしよく思い返してみれば彼の言う事も一理あると考えた。

(確かに、爆発する前に触れば、ただの海水になって不発に終わる。彼は『神性(アルカヌム)』で対処出来るけれどそれなら……!)


 そこまで思い至った所で、レイは2人に告げるのだった。

「なら、私も役に立てそうね」



【ふむ、まだ生きていたか。死に損ないの獣はこれだから面倒なのだ】

 ケートスが3人に気付き、声を上げる。

 そしてまたしても周囲に水球を侍らせ、レイ達へと狙いを定めた。


「あの程度で死ぬ訳無ぇだろうが!テメェのそのデカイ目は節穴かぁ!?」

 売り言葉に買い言葉、ケートスに挑発を返すディード。

 完全回復を果たし、魔力も十分に貯まったディードが1歩前に進み出る。

 その少し離れた横にレイが並び立った。


【弱い犬程よく吠える……逃げているだけの貴様らに何が出来る!】

 怒りと共にレイ達へ向けて放たれる無数の雨。

 それを目の当たりにしても尚、不敵な笑みを絶やさないディードがレイへと叫ぶ。

「俺の邪魔すんじゃねぇぞ!?足でまといなら助けねぇからな!」

「そのセリフ、そっくりそのまま返してあげるわ。精々遅れないように、必死で付いてくる事ね」


 ディードの挑発に不敵な笑みでもって返すレイ。

 そんな2人を見やり、ため息を吐きながらニイルが言う。

「そんなゴリ押しで何とかなる相手では無いですが、とりあえずやってみなさい。フォローはしてあげますから」

 そう言いながら更にディードに魔力を与えるニイルに、笑みを深くしながらディードが叫ぶ。

「しゃあ!じゃあ……行くぜぇぇぇぇぇ!!!」

「『雷装』!『制限解除(リミットオーバー)』!」


 全身からその髪と同じ色の金色の魔力が吹き出し、一気に力を溜めるディード。

 対してレイも薄紫色の電撃を纏い、剣を構える。


 瞬間、2人の姿が消えた。


【疾い!】

 音を置き去りに、雨の中を一瞬にして駆け抜ける二条の光。

 爆発する暇さえ与えず、刹那の間にケートスへと迫る。


「ハアアアアアアアア!!!!」

「オッラァ!!!!」

 爆発さえしなければただの水滴。

 今の2人はそんな物ものともせず、そして左右から挟み込む様にそれぞれ剣と拳で斬り裂き、殴りつけた。


【ごはぁ!】

 その衝撃は、ケートスの巨体も思わず水面から少し浮いてしまう程。

 遅れて、遥か上空で爆発する水球を背にしながら2人は。


「よし!」

「ハッ!遅ぇんだよ!」

 確かな手応えを感じ、笑みを浮かべるのであった。

如何でしたでしょうか?

作中に出てきた水蒸気爆発ですが、正しい原理などを細かく書き出すと趣旨が変わってしまうので軽〜く説明するに留めました。

なので少し本来の原理と違う可能性もあります。

本来の正しい知識を知りたい方は調べていただければと思いますので、ご了承ください!

ではまた次回、お会いしましょう!

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