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バケモノが愛したこの世界  作者: 一一
第4章 ???編

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74/90

突然の邂逅

はいどうもニノハジです〜

いよいよ話が動き出します!

どんな展開になるのか、楽しみにしていただければ嬉しいです!

ではどうぞ!

 レイ達の報告も終わり、その場は解散となった。

 ニイルの警告を受けたギルド支部長も直ぐに動く事を約束し、他の職員と慌ただしく部屋を出て行った。


「ひとまず、今日のところは皆さんお休みください。状況が変わりましたらご連絡いたしますので」

 ギルドを後にする際、いつもの受付嬢にそう言われ拠点としている宿を伝えるレイ。

 最後に、感謝の言葉と共に深々と頭を下げられながら、一行は宿へと戻るのだった。


「今回の件で、国の連中が余程愚かでなければ傭兵の募集がかかる事でしょう。そうなれば私達も協力出来る様になると思います」


 就寝前、いつもの如く部屋に集まり今後の打ち合わせをしていた時、ニイルはそう言った。

 それに頷きながらレイも同調する。

「そうね。それに原因も明らかになった事だし、相手が魔獣なら私達も役に立てるかもしれないわね」


 そう言ってやる気を漲らせるレイ。

 正直、今回の原因が専門的な物ならレイは参加しないという選択肢も考えていた。

 知識も無いのに参加して、他の人々の足を引っ張りたく無かったからである。

 しかし荒事となればその心配も無い。

 人並み以上には戦えると自負しているし、事実その実力も兼ね備えている。


 故に相手が魔獣なら、と心の奥底で無自覚に油断していたのかもしれない。

 その機微を察し、ニイルは苦笑いで忠告する。

「まだ確定した訳では有りませんので油断は禁物ですよ。ただ単に魔獣の大量発生かもしれませんし、別の要因かもしれません。そして……」


 そこまで言って、ニイルは真顔になり言葉を続ける。

「その中で一番厄介なのは、相手が『幻想種』の時です」


 それに息を呑むレイ。

 ニイルがここまで言う相手は限られてくる。

 ここ最近では無かった事だ。

 有ったとすればそれより前、かの『英雄』達や『柒翼』を相手にした時で。


 レイの考えを裏付ける様に、ニイルが口を開いた。

「相手を魔獣の延長だと考えているのなら返り討ちにされますよ。御伽噺に出てくる存在は伊達ではありません。そうですね、分かりやすく言うのなら……『幻想種』は『神性付与保持者(セルヴィ)』より強力ですよ」

「なっ!?」

 あまりの衝撃に思わず声を上げてしまうレイ。

 いくら強力と言っても、精々がブレイズやマーガの『英雄』レベルだと思っていただけに、その言葉は予想外だった。


 そんなレイを置いてニイルは更に続ける。

「少なくとも『神性付与保持者(セルヴィ)』1人だけでは歯が立たないでしょう。個体によっては『神性保持者(ファルサ)』並の力を有する物も存在します。ただでさえ慣れない水中戦闘の中、そんな存在と相対すればこちらの被害も甚大なものになりかねません」


 続くその言葉に絶句してしまうレイ。

 まさか魔獣で有りながら『神性保持者(ファルサ)』、『柒翼』と同格の存在も有り得るという事実に頭が追い付かない。

 例えるなら、水中という慣れない環境の中スコルフィオと戦う様なものだ。

 実際には戦闘しなかったが、あの実力を目の当たりにしていたレイとしては、想像するだけでも怖気が走る。


「本当に、魔獣とは一線を画す存在なのね」

「その通りです。よく覚えておきなさい。この世には神性保持者(ファルサ)()()()()()()()()()()()という事を」


 そのニイルの言葉の真意は未だ分からないレイだったが、しかしその言葉を心に刻みその日は解散となった。



 そして事態は、レイ達の想像よりも早く動き出す事となる。


 時刻は早朝。

 まだ日が昇りきらない朝方にも関わらず、部屋に接近する複数の気配を感じて目が覚めるレイ。

(他の宿泊客……じゃない。この嫌な気配は……)


 数人の強者の気配、そしてかつて何回か感じた事の有る『神性付与保持者(セルヴィ)』の気配を感じ、ベッドから出るレイ。

 その気配に引っ張られ、一気に覚醒した脳内で周囲を見渡し、現状を把握する。

 見ればランシュは既にベッドから出ており、部屋の扉を見つめていた。

 そしてフィオはといえば……


「すぴー……すぴー……」

 可愛い寝息を立てて眠りこけている。

 それに呆れそうになるレイだったが、しかし思い返してみればフィオも森人族(エルフ)なだけあって感覚が鋭い。

 普段なら起きるであろうこの状況下に、違和感を覚えそうになったレイだが。


(……?敵じゃ……無い?)

 気配を探りその理由を知った。

 恐らくだが、近付いて来る存在は3人。

 その内の1人は『神性付与保持者(セルヴィ)』なのだが、全員殺気どころか敵意すら発していないのだ。

 だからこそフィオは眠ったままなのだろう。

 その証拠に、ランシュも立ち上がってはいるが戦闘態勢には入っていない。


 しかしだからといって油断は出来ないだろう。

 最低限の準備をし、何時でも戦闘態勢に入れる準備をしておくレイ。

 その間に気配を探れば、隣のニイルと接触している様だった。

 ニイルも当然ながら、近付いて来る存在に気付いていたのだろう。


 少しの間の後、ニイルがレイ達の部屋をノックしながら呼び掛けてきた。

「レイ、起きてますね?少し話がしたいので下に降りて来てください」

 そう言って謎の存在を引き連れ、階下へと下がって行った。


「ど、どういう事?」

 困惑しながらランシュの顔を見るレイ。

 その時、先程階下に降りたニイルから通話魔法が飛んで来る。

(ランシュとフィオはそのままここで待機。指示がある迄その部屋から出ない様に)


 それに益々困惑を深めながら、とりあえず準備を進めるレイであった。


 言われた通り、ランシュとフィオを置いて手早く着替えを済ませたレイを待っていたのは、ニイルと見知らぬ獣人族(ビースト)の3人だった。

 困惑を深めるレイに、ニイルが声を掛ける。

「おはようございます。貴女にも紹介しますね」


 そうしてレイに紹介をしていくニイル。

「そして最後に……」

「ベスタと申します。今はこの国でディード様のサポートを行っております。この度は早朝からの訪問、誠に申し訳ありません」


 真ん中に座る男がベスタと名乗った時、一瞬だがレイに緊張が走る。

(やはりこの男がこの国No.2の『神性付与保持者(セルヴィ)』!まさか向こうから接触を図ってくるなんて!)


 ディードの屋敷に手紙を預けたのは2日前。

 当の本人のディードは失踪し、目の前のベスタも忙しいとの事で、連絡が来るのはもう暫く先の事だろうと考えていた。

(それがいきなり向こうから直接やって来るなんてね……)


 突然の事に思わず反応してしまったが、しかしそれを察してベスタが苦笑を浮かべる。

「私達は貴女方と対立したい訳では有りません。寧ろ逆でお礼と、そして協力をお願いしたくやって参りました」

「お礼?」

 その言葉に訝しむレイ。


 この事態解決への協力要請ならまだしも、お礼を言われる様な事をした覚えの無いレイは更に困惑する。

 その態度に想定通りという反応をしながら、ベスタはこう言うのだった。

「詳細な話は我が主から。今から皆様をご案内いたします」



 そうしてベスタに連れられてやって来たのは、2日前にも訪れたディードの屋敷。

 外観は何も変わらないが、中の人達は以前と違い丁寧に接遇(せつぐう)してくれた。

「「「ようこそ、お越しくださいました」」」


 一糸乱れぬ所作でお辞儀をしていくメイドや執事達。

 その全てが亜人種、そして大半が獣人族(ビースト)なのだが、そんな事よりも。


(全員から並々ならない気配を感じる。1人1人には勝てるけれど、この人数を相手にするのは面倒ね)

 と、レイは感じ取っていた。


 そして事前にニイルから聞かされていた、獣人族(ビースト)の特徴を思い出す。

(確か獣人族(ビースト)は魔力を持たず、魔法を使えない代わりに並外れた身体能力を持っているのだとか。確かに彼等の所作で中々の手練だと分かるし、全員魔力は感じない……?)


 そこでレイは思い出す。

 あまりにも当たり前過ぎて、話を聞いた時は思い浮かびもしなかった疑問点。

(じゃあ何で訓練の時、()()()()()()()()使()()()()()()()?)

「お客様をお連れしました」


 ベスタの声でハッとし、意識を現実に戻すレイ。

 気付けば屋敷の1番奥、その扉の前まで辿り着いていた。


「来たか」

 ベスタの声に、部屋の中から反応が帰ってくる。

 その声はどこか野性味が有る様な、粗野な声という印象をレイに与え、そして……


(言われなくても気配で分かる。この声の主こそが……)

 扉を開け、目の前の椅子に座る男を見て確信する。


「よう!お前達が『色欲』が言ってた奴らか!なるほど確かに良いツラァしてるじゃねぇか!」


 そう言って、声の印象通りの凶暴な笑顔を浮かべるこの男こそが。


「それで?()()()に一体何の用だ?」


 この国の首領、『暴食』のディード・ホグウェル本人なのだと。

如何でしたでしょうか?

という事で遂に出ました2人目の柒翼です!

彼は一体どういう人物なのか…

今後も期待していただければ幸いです!

ではまた次回もお楽しみに!

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