そして次なる目的地へ
はいどうもニノハジです〜
遂に3章もこれにて終了となります!
めちゃくちゃ長くなりましたwww
一先ず終わって何よりです…
そんな感じで3章ラストもお楽しみください!
では、どうぞ!
「は〜……」
長い溜息の後、レイを真っ直ぐ見据えるニイル。
少し不思議そうな表情を浮かべる、まだ幼くも自分より強い少女に降参の意を示すべく、口を開いた。
「分かりました。そもそも勝手について来るというのなら、こちらがどうこう出来る話ではありませんからね。好きにしてください」
本気で拒絶すればレイも諦めると分かってはいるものの、あくまでレイに渋々付き合わされているという体で話すニイル。
「ええ、好きにさせてもらうわ」
「あはは!」
それが分かっているからこそレイも笑顔でそう答え、フィオも思わず笑ってしまう。
その反応に照れくささを覚え、不貞腐れた表情を浮かべるニイル。
そんなニイルの背中にランシュが寄り添う。
「…………」
「ランシュ……」
相変わらず一言も発さないが、それでもニイルには伝わったのだろう。
ああ、と小さく頷き真剣な表情でレイを見やる。
「レイ、その道は私でも断念する程の過酷なものとなります。貴女はいつか非情な選択を迫られ、そして他人の死を目の当たりにする時が来るかもしれません。それでもこの道を諦めないと誓えますか?」
レイの覚悟を改めて問うニイル。
それはかつて自身に課し、そして果たせなかった誓約。
如何に強大な力を得ようと、その道程は生半可なものでは無いと言外に告げる。
それを受けてレイもニイルを見つめ返し言った。
「人の死に対して後悔することは有るかもしれない。でもこの道を選んだ事を後悔はしないわ。だって幼い時に果たせなかった願いだもの。今更後悔なんてする筈無いわ」
その言葉を聞き全員が思い至る。
レイの願いの理由。
人の命に固執するその理由を。
それはかつて民を、家族を、故郷を守れなかった事に起因しているのだと。
幼い頃から帝王学を学び、人の上に立つ意味を知り、そして守れなかった辛さを知っているからこそ、他人の命を軽視する事を嫌い、救いの手を差し伸べようとするのだと。
(道理で……俺なんかより余程強い訳だ……)
幼い少女が抱えるには重すぎる覚悟に思いを馳せ、それでも尚折れない信念に、ニイルは苦笑を浮かべる。
かつての自分はその重責に耐え切れず投げ出した。
しかし目の前の少女はその責務を全うするのだという。
その生き様に敬意を評し、ニイルは改めてレイを守り抜く事を誓った。
例え相手がどんなに強大であろうとも……
「そういう訳だから、彼等を解放してちょうだい。それが出来ないというのなら……彼等の為に貴女と戦うわ」
そしてレイは正にその障害となり得るだろう相手、スコルフィオにそう告げた。
全員の視線がスコルフィオに集まる。
それと同時にニイルは彼我の戦力差を分析していた。
(現状、俺達4人が戦ってこの2人に勝てる事はほぼ不可能だろう)
それ程までに『神性』は強力で、そしてニイルの弱体化が激しいのである。
しかしそれでも。
(ここから逃げ出す位なら出来る)
弱体化しているとはいえ『神性付与保持者』以上の実力を持つニイル、それに準ずる力を持つランシュとフィオ、そして何より先の戦いで更に成長し、今やニイル達に迫る実力を付けたレイ。
この4人ならば『神性保持者』相手でも逃走する事は可能であろうと判断する。
(いざとなれば本気を出すしかないかもしれないが……)
そうなってしまえば旅どころでは無くなり、世界崩壊の危機にさえ陥ってしまう。
しかしそうと分かりつつそんな事を考え、僅かに全身を緊張させ臨戦態勢に入るニイル。
それを見てランシュとフィオも警戒し、全身を緊張させようとして……
「分かりました〜。無事に返す事を約束します〜」
「え?」
「ん?」
「あれ?」
予想外の返答にニイルやフィオだけでなく、要求したレイまでも驚きの声を上げる。
その反応に心外だと言わんばかりの表情を浮かべ、スコルフィオが言う。
「彼等を返したところで〜私達の損になる事は無いですし〜。そもそも〜貴女の要望は〜出来る限り叶えるって〜言ったじゃないですか〜?」
それに、とスコルフィオは続ける。
「私も〜大切な事を〜思い出させて貰いましたからね〜。なんで私が〜この国を作り〜守ろうとしたのか〜」
そう言いレイに笑顔を向ける。
「そもそも私は〜要求の内容に戸惑っただけで〜、断ろうとは〜最初から考えて無かったんですよ〜?」
その言葉に4人が呆気に取られ、ヴァイスは呆れた表情を浮かべる。
いち早く正気に戻ったレイが苦笑を浮かべ、代表して口を開いた。
「じゃあ最初から、私達は恥を晒しただけだった訳ね」
「そうですね〜。少々気まずかったですし〜。何より〜それで許されると〜こちらが拍子抜けすると言いますか〜」
先の喧嘩の事を思い出し気恥しげに言うレイに対し、スコルフィオも苦笑を浮かべ答える。
確かに、スコルフィオの立場からすれば非常に居心地の悪い状況だったに違いない。
余計に恥ずかしさを感じるレイだったが、しかしあのニイルとの対話は、今後の自分達の為に必要な事だったのだと気持ちを切り替える。
でなければこうしてニイルはもちろんの事、スコルフィオとも分かり合う事が出来なかったかもしれないのだから。
「そもそも、私は貴女に恨みを抱いてはいないのだけれど?」
だからだろう、レイはスコルフィオに対して本心からこう言う事が出来た。
「え、でも私は……」
困惑し、尚も言い募ろうとしていたスコルフィオを遮り、レイは続ける。
「話を聞くに、貴女はその場に居ただけで寧ろ唯一反対してくれた、謂わば仲間の様な人でしょう?なら貴女を恨むのはお門違いだわ。それに貴女からは人を、民を大事にする気持ちがよく伝わったし、何よりこの国の人達からも貴女への尊敬を凄く感じられた。そんな人の言葉なら信じるに値すると、そう判断したのよ」
だから、と笑顔を浮かべ手を差し出すレイ。
「ここからは罪悪感なんかじゃ無く、対等な相手として私を助けてちょうだい?もちろん、困った事があれば私も力を貸すから」
「……っ!」
レイの言葉に思わず涙ぐむスコルフィオ。
本当ならレイにも思うところは有るだろう。
本来なら、スコルフィオに怨みをぶつけても誰も文句を言わない状況である。
しかしレイはそれすらも飲み込み、人として強く、大きく成長した。
「ありがとう」
そんなレイに震える声で感謝を伝えながら、固く握手をするスコルフィオ。
こうして初の『柒翼』との邂逅は、和解という結果を迎えたのだった。
「ところで〜、貴女達の〜次の目的地は〜決めってるのかしら〜?」
話を終え、一段落したところでスコルフィオがレイ達に問い掛ける。
代表してニイルが難しい表情のまま口を開いた。
「アテは有りますが確証は無いので、当分は他の『柒翼』を探して各地を巡ろうと考えています。何かしらの情報を得られれば目的地も定まるのですが……」
当初、ニイルのアテを頼りにこの国へ赴き、その予想は見事的中した。
しかし次もそれが当たるとは限らない。
時間を無駄にしない為にも、出来れば確実な情報が有る場所に赴きたいと、そう考えていたのである。
「なら〜1人だけ確実に〜、居場所が分かる人が〜居るわよ〜」
しかし、そんな状況にスコルフィオは吉報を届けて来た。
12年前の話から他のメンバーの情報を得られないと思っていただけに、思わず喜色を浮かべるレイ。
「彼は〜メンバーの中で〜1番の〜有名人だから〜。世界的に見ても〜有名だから〜隠し切れないのよね〜」
本人も隠していなかったし、と続けたスコルフィオ。
そして彼女はその人物の名を告げるのだった。
「名前はディード・ホグウェル〜。『暴食』の名を冠する獣人よ〜」
レイですら聞いた事のある、超有名な人物の名が飛び出し思わず目を丸くしてしまう。
しかし残りの3人、特にランシュとフィオは何か別の衝撃を受けた様で。
レイがその意味を知る事になるのは、もう少し先の事であった。
10日後、各所に別れの挨拶を済ませ、旅の準備を万全にし出立の朝が来た。
レイ達が世話になった人達からは惜しむ声が寄せられたが、必ずまた来ると約束し送り出してもらった。
まだ日が登り始めた早朝、レイ達4人の他にスコルフィオとヴァイスも見送りにやって来ていた。
「どうせなら〜もっと〜ゆっくりしていけば良いのに〜」
この10日間でかなり仲良くなったスコルフィオが悲しげな表情で言う。
それにレイは苦笑しながら握手をしつつ答えた。
「これ以上貴女にお世話になるのは気が引けるし、何よりここから目的地まで時間が掛かるのでしょう?なら、なるべくルエルに回復の猶予を与えない様にしないといけないわ」
スコルフィオにはここから目的地までの大まかな道程や金銭的な援助等、ここ数日でかなりの協力を受けていた。
そういった事情も有り、レイは彼女に対してかなり心を許していた。
「なら〜この手紙を〜ディードに渡して〜。そうすれば〜彼も色々〜協力してくれると思うから〜」
最後に別れ際、スコルフィオはレイに手紙を渡してきた。
封蝋に蠍の絵が描かれている手紙を受け取り、礼を述べる。
「じゃあ〜気を付けて〜」
「ええ、また会いましょう」
こうして新たな出会い、そして絆を経て、一同はフィミニアを旅立つのであった。
第3章
色欲花柳編 終
如何でしたでしょうか?
長かった3章もこれにて終了です!
でも実は新章へはまだ入らず、次回は幕間となりますので4章はもう暫くお待ちください。
お話自体はまだまだ続きますので、引き続き応援よろしくお願いします!




