とあるバケモノの真意
はいどうもニノハジです〜
祝!これにて通算50話となります!
まだ書き始めて半年程ですが、三日坊主の私がここまで続けられとは思ってもみませんでしたwww
これもひとえに皆様のお陰です!
いつも応援ありがとうございます!
これからも完結まで走り続けたいと思っておりますので、まだまだ先は長いですがお付き合いください!
「やはりな……」
レイ達の戦闘を遠く離れた場所から眺めている人物が呟く。
誰あろうニイルである。
レイの頼みで結界を張る為離れたニイルだったが、結界を張りつつレイの戦闘も観察し、厳しい様なら介入も辞さないと考えていた。
案の定ニイルの想定通りに進み、現在レイの状況は苦しいものとなっている。
「レイの考えも分かるんだがな。流石に時期尚早だ」
神性付与保持者にも劣らぬ実力者2人が相手である。
2人揃った時、下手をすれば『柒翼』と呼ばれる彼等でさえ手こずるだろうと考えていたニイル。
故に撤退、もしくは全員での制圧を考えていた。
しかしレイからの返答は1人での制圧。
実践に勝る経験は無いと言っても勇気と蛮勇は違う、そう言わざるを得なかった。
それは若さ故の無謀か、それとも仇に近付きながらも遠く及ばない故の焦燥か。
「どちらもだろうな」
かつて自分も同じ道を辿り、遥か遠くに置いてきた感情に遠い目をするニイル。
だからだろうか、身内に甘い事も相まって彼女の願いを切り捨てる事はニイルには出来なかった。
人を捨て、人に忘れ去られたバケモノにとっての、数少ない人間性だった。
そして更に2つの弱点、それの所為でニイルは逃げる事も出来ず遠くから眺めるという現状に陥っている。
「視えた。やはり奴が持っていたか」
レイと戦闘中であるマーガを、その眼でもって視通し呟くニイル。
ニイルが探していたのは『繁栄の証』、今では『過去の遺物』と呼ばれる代物である。
先程マーガが言っていた、転移魔法を妨害した、という言葉。
それを確認する為にニイルは彼等を観察していた。
遥か過去に失われた転移魔法、それを知っている者すら今では稀な存在であるにも関わらず、それを妨害出来る者は今では殆ど存在しない。
であるならば考えられる方法は1つ。
共に失われた技術で作られた『繁栄の証』の存在だった。
そのニイルの考えは正しく、マーガの懐に今のニイルには視えない存在が有るのが視えた。
ニイルは現在、様々な理由により本来の力を発揮出来ないでいる。
それが弱点の1つでも有るのだが、それでも現状でも大抵の存在の構成情報等を視る事が出来る。
しかしその眼でも視えない物が有るとするならばそれはただ1つ。
神の力に類する存在の関与である。
『繁栄の証』はその強力な特性上、ほぼ全ての品で神の力が多少なりとも関わっている。
故に出力の落ちたニイルの眼には、その構成が視えなくなってしまうのであった。
そしてニイルのもう1つの弱点、それは『繁栄の証』の存在である。
ニイル達3人の旅の本来の目的はレイと合流しても徹頭徹尾変わっておらず、それは『繁栄の証』の蒐集であった。
今ではレイの保護を優先としているが、共に旅に出ているのもその為である。
当初レイの仇であるルエルが『繁栄の証』を集めている、そんな不確かな情報を元にセストリアを訪れていたニイル達。
決定打となったのはルエルの部下だったベルリが、その内の1つを所持していた事だった。
その後も序列大会中、ランシュとフィオを使いルエルの集めた『繁栄の証』を回収させ目的を果たしたりと行動していたが、こうなってくると同じく裏の支配者である他の『柒翼』が『繁栄の証』を持っていないとも限らない。
いくらバケモノと呼ばれていたニイルでも、それはかつて、と但し書きが付く現状、特別な力を持つ『柒翼』と渡り合えないニイル達にとって、『柒翼』を狙うレイの存在は渡りに船だったのだ。
当然、今のままでは返り討ちにされるのが目に見えていたニイルはレイの望む通り力を付けさせ、『柒翼』にレイをぶつけニイル達は『繁栄の証』の回収を行う、それこそがニイル達の本当の目的だった。
現状、ブレイズとマーガならニイル、ランシュ、フィオの3人で戦えば、本気を出さずとも勝てると考えているニイル。
しかしここは『柒翼』の一角、『夜の女王』の領地である。
本人が出てきた時、レイを加えた4人でも流石に厳しいと言わざるを得ない今、すぐにマーガから回収した後、レイの力がスコルフィオに届く迄身を隠していたかったのだが。
その計画はレイの願いにより敢無く頓挫となってしまった。
故に目の前に目的の品が有る以上、ニイルはこの場から逃げる事も出来ずにいるのである。
「長引く様なら無理矢理にでも参戦するつもりだが……」
その時大きな衝撃音と共に地面が揺れ、ニイルの結界に衝撃が走る。
どうやら何かが吹き飛ばされ結界に激突したらしい。
意識を現実に戻し3人の方を見てみると、衝突があった結界付近で土煙が上がり、その中に沈むレイの姿が一瞬垣間見えた。
「彼女には残念だがそろそろ出番かもな」
そう判断しレイの元に行く準備を始めるニイル。
未だに『雷装』と『神威賦与』を使っていないにしろ、『神威賦与』はまだ1人では使えないだろう。
『雷装』だけでは厳しいと考えたニイルだったが……
「いや……」
土煙から出てきたレイの表情を見やり、もう暫く静観する事を決めたニイルだった。
「ハア……ハア……これ以上は、厳しいわね……」
身体中傷だらけになりながら呟くレイ。
ニイルの結界のお陰で街への被害は抑えられているが、レイの消耗が思った以上に大きい。
温存出来る相手では無いと判断したが、切り札が『雷装』のみという現状、なるべく今の段階で相手の戦力を削りたかった。
しかしこれ以上は流石に身が持たないとレイは判断する。
もちろん、その努力のお陰で相手にもそれなりの傷を追わせることには成功しているのだが、それでも『+10』の動きは完全にブレイズに見切られ、そのカバーをする事によってマーガもレイの動きに対応出来る様になってきていた。
「ふー……凄まじい成長速度だ。若さも有るだろうが奴は天才なのだろうな。徐々に剣の鋭さが増してきている。手に負えなくなる前にさっさと仕留めたいのだが……」
「そうは言ってもあの子、魔法への対応もこなし始めてきてて決定打が与えられないよ。魔法への造詣も深いんだろうね。これ以上粘られたらこっちが先に魔力が尽きそうだよ」
呼吸を整えながら全身傷だらけのブレイズがレイを手放しで賞賛し、汗を拭いながらマーガもそれに同調する。
2人ともレイ程のダメージを追ってはいないが、それでも疲労の色は伺える。
この2人が共闘し、実践でここまで手こずるのは初めての経験だった。
しかしそれでもそれなりに追い詰める事には成功している2人。
レイを捕らえることは不可能、今は一刻も早く始末するというのが2人の共通認識だった。
焦る理由は3つ、まず第1にここが他国であるという事。
現状かなりの騒ぎを起こしてしまっている以上、捕まりでもすれば戦争に発展しかねない国際問題になり得る。
そして2つ目、レイが先程使用していた回復薬、それがまだ存在しているかもしれないという懸念。
体力も魔力すらも一瞬で回復してしまうあの回復薬は脅威にほかならない。
今この瞬間にも使われてしまえばたちまち形成は逆転してしまうだろう、レイとの間にはその程度しか差が無かった。
そして3つ目、これが一番の不安材料なのだが……
「クソっ!やっぱり持ってたか!」
レイが吹き飛ばされた場所、そこから視た事が無い魔力の流れを視てマーガが叫ぶ。
そう、それは形勢を逆転し得る切り札の存在。
いくら彼女が強いといってもブレイズとマーガの2人を相手に、数の有利を捨て1人で戦うのは不自然だと2人は考えていた。
ただの無謀ならば良かったのだが、やはり2人の想定通りレイは切り札を持ち、今それを使ったのだろう。
吹き飛ばされたレイとの間には少し距離が有る。
ここから接近して妨害するよりも、魔法を飛ばした方が速い。
速度を重視し雷属性魔法を略式にて展開、それを多数作り出しその全てをレイに向けて発射するマーガ。
それと同時に間に合わなかった時の事を想定し、魔法障壁を展開出来る最大まで、マーガとブレイズ2人分展開……
「「!?!?!?」」
……した瞬間2人は遥か後方に吹き飛ばされ、ニイルの結界にぶつかり崩れ落ちる。
何が起こったか理解出来ない2人だったが、その後襲った激しい痛みに混乱した意識を引き戻される。
見れば2人とも体に大きな斬撃の後が付いており、その傷は更に焼かれたかのように黒く焦げ、血も流れていなかった。
代わりにそこから走る謎の痺れによって、上手く体を動かせないでいる2人。
痺れに抗い元居た場所を見てみればそこには。
全身蒼白く輝く、雷の化身の如きレイが佇んでいたのだった。
如何でしたでしょうか?
当初の予定とは違うのですが、期せずして50話の記念という事で今までの伏線回収の回となりました!
マジでこの設定はもっと後半まで取っとくつもりだったので自分でも驚きですwww
まぁ50話記念という事でサービスだと思ってくださればwww
しかしまだ回収していない伏線は大量に有ります!
それは今後回収していく予定ですので今後ともお楽しみに!
ではまた次回お会いしましょう!




