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勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた  作者: 秋月静流


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おっさん、お披露目へ


 結婚当日――

 花婿の家から教会まで花嫁を連れて共に歩む。

 その意味するところは……皆に対するお披露目であろう。

 綺麗に着飾ったこの女性はこの男性の家に嫁ぎ仲間となる。

 だからこそ住民総出でお出迎えし共に祝福しよう。

 これが開拓村からだった頃から伝わる、この地方の結婚に関する慣習だ。

 俺も何度か参加した事があり、その内容は熟知していた。

 練り歩く新婚夫婦に歓声や野次を上げながら花弁や祝いの言葉を投げ掛ける。

 夫婦は都度足を止めお礼の言葉を返すという単純なもの。

 しかし――当事者となると話は別だ。

 領主の館から教会まで伸びた道の両脇に、ズラリと並んだ人々の顔を見て気圧されそうになる。まさかマジに住民総出でお出迎えしてくるとは。

 普段は用事があったり何だりで、半分ぐらいは後から駆け付けるものなんだが。

 期待と憧れと好奇心、そして少しの悪戯めいた瞳が俺達を見据える。

 今迄足が竦んでいる花婿を揶揄する立場だったのだが――これはアレだな。

 確かに緊張するものだ。

 でもまあ、ここで奮い立たねば漢ではない。

 戦闘とはまた別種の緊張に強張る足を強引に捻じ伏せ俺は歩み出す。

 途端、割れんばかりの歓声。

 両脇から掛けられる祝福の声と花弁に囲まれながら俺達は前へ進む。




「おめでとう、おっちゃん!」

「おっちゃんじゃないよ、りょうしゅさまなんだよ!」

「うるせえ、オレにとってはおっちゃんはおっちゃんなんだ!」

「ああ、こらこら。

 喧嘩するなよ、ルーイにエリス」

「だってさ……」

「俺は変わらずおっさんだし、これからは三人の旦那さんだ。

 綺麗だろう、みんな?」

「うん! シアおねーちゃんもリアねーちゃんもフィーの姉御もキレイ!」

「(なんでフィーだけ姉御なんだ?)ま、まあ……という訳でだ。

 これからお嫁さんになる三人と、新しく婚約するミズキを含めよろしくな」

「うん! そっちのおねーちゃんもカッコいい!」

「ああ、もちろん。それにしてもおっちゃん、さっそくうわきかよ?」

「人聞きが悪いからそういう言い方は止めろ。

 ちゃんと正式な手順を踏んでるんだからな……一応」


 不思議そうに首を傾げる幼子達を女性陣は楽しそうに笑っている。




「おめでとう、領主様」

「この度はおめでとうございます」

「よしてください、ダーナ婆さんにバロウズおばさん。

 住民最古参の二人にそんな他人行事に言われたら居所が悪いですよ」

「おやおや、そうかい?」

「まったく――偉くなってもちっとも変わってないね、アンタは。

 まあそういうところがこの娘達の琴線に触れたんだろうけど。

 大事にしてやりなよ? その黒髪のハンサムさんも一緒にね」

「はい!」




「まさか貴方が結婚なんてね……ワタシも歳を取る訳だわ」

「メイア……」

「何よ、その顔は。

 元彼の晴れ舞台に顔を覗かせてもいいでしょ?

 安心して、不貞な事は考えてないから。

 ちゃんとワタシ自身も過去は清算してきてるつもり。だからね、ガリウス」

「何だ?」

「自分よりも他人を優先してしまう貴方。

 それは人として美徳なのかもしれない。

 けど――これからは奥さん達を優先してあげなさい。ささやかな助言よ」

「勿論そのつもりだ。今迄……ありがとう」

「馬鹿ね、早く行きなさいな」


 笑顔のような泣き顔のような左右非対称な貌を見せる元カノ。

 俺は全てを断ち切る様に他の者達に話し掛けながら足を進める。




「まさかおめーが身を固めるとは、な」

「マウザー……お前」

「あん? 勘違いすんなよ。

 今度ここにギルドの支部を作る予定なんだよ。

 その下見に来たら何だか賑やかだから顔を覗かせただけだからな」

「はあ……まったく、素直じゃないな」

「な、何がだよ」

「何でもない。

 ああ、それならこの後の祭りにも参加していけ。

 美味い酒をたらふく用意したし、こういった酒の場では人々の口も軽くなる。

 支部建設に必要な情報を聞き出したいんだろう? 

 余所者のお前も今日ばかりは警戒され辛い筈だ」

「分かってんじゃねえか。

 さすが王都の英雄様は違うね。じゃあな!」

「ああ」


 颯爽と身を眩ます禿頭を見送っていると遠慮がちな呆れ声を掛けられる。




「本当に素直じゃありませんわね、あの方も」

「マリアンヌ……来てくれたのか?」

「それは来ますよ。

 多少忙しくとも、親友であるフィーの晴れ舞台ですもの」

「そうだな。それで何が素直じゃないって?」

「ガリウス様のあの悪友様ですわ。

 早朝から幾度も館の動向を窺う様子が見えましたもの。

 悪態も単なるポーズ。きっと本心ではお祝いを述べてます」

「そうかな……そうだといいな、うん」

「と・こ・ろ・で!」

「はい?」

「どっちが攻めでどっちが受けですの!?

 鬼畜攻め? 誘い受け? それとも全く未知の何か?

 前は疑惑でしたが、此度の事で確証に移りました!

 言い逃れは出来ませんわ、さあ早く!」

「なに、この娘。怖い」


 無駄にヒートアップし鼻息荒く迫りくるマリアンヌ。

 すると手慣れた様にお抱えの従者が彼女をテキパキと拘束。ドナドナされていく彼女を半ば呆気に取られ見送っていると、背後から声を掛けられる




「くっくっく……災難だったな、お前も」

「まったく」

「って、ミスカリファにセレニティ様。来てくれたのですか!」

「精霊都市の救世主であるお前の婚姻の儀とあらば……

 顔を出さない訳にはいくまい?

 姪っ子であるファノメネルの弟子でもあるし、何より我が主ことセレニティ様を探し出せた恩人でもあるしな」

「うむ。その節は世話になった。

 それに媛巫女であるレイナも領主代理であるノービス伯も来ておるぞ。

 おそらくあとで顔を出すだろう」

「その面々では一波乱ありそうで嫌なんですがね、本当」

「王都の英雄ともあろう者が、気弱な態度を見せるな。

 当たって砕けろ!」

「何でいつも脳筋なのだ、我が配下は。

 まあ、お主を祝いたいという想いは一緒。賛同してやってくれ」

「勿論ですよ」


 溜息混じりに答えるとミスカリファとセレニティ様は何故かおかしそうに笑う。

 妖精族の笑いのツボがよく分からない。

 ただ――道中の半分も行かずにこの疲労具合だ。

 前途多難であることは間違いあるまい。

 これから控えているであろう濃い面子を思い……

 俺は再度溜息を洩らすと、深々と深呼吸し気合を入れ直すのだった。










見せ場はオールキャストによる祝辞。

長いので一端終了しますね。

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