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白銀の簒奪者  作者: たかまち ゆう


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第67話

「僕達は……これから、どうすればいいんでしょうか?」

 僕は、思わずそう尋ねていた。

「私としては、ほとぼりが冷めるまで、ダッデウドの里に隠れることをお勧めします。そして、状況次第では、我々の帝国領外への移住を手伝ってください」

 ルーシュさんにそう言われても、僕は頷くことができなかった。

「でも、ベルさんが……」

 そう言うと、先の言葉を察した様子で、ルーシュさんは頷いた。

「ですよね。今さら退くのであれば、最初から独断で動いたりはしないでしょう。ヴェル自身は、ダッデウドの戦力を謙虚に見積もっているつもりなのでしょうけれど……客観的に見れば、かなり過大評価しています」

「まあ、実際に、オットームは驚くほど弱いですけど……」

 僕が思わず呟くと、ルーシュさんは少し困った顔をした。

「一対一で戦えば、ダッデウドの方が強いことは確かです。いいえ……オットームの人数が、ダッデウドの人数の100倍だったとしても、勝算はあるでしょう。オットームが何の準備もせず、ダッデウドのことを侮っていれば、ですが」

「……」


 ルーシュさんが指摘しようとしていることは理解できた。

 ダッデウドの魔法が強力であることが分かっていれば、当然のことながら、オットームだって対策を立ててくる。

 実際に、警備隊の連中は、ノエルを使って僕達を毒殺しようとした。

 それに失敗したら、油を撒いて焼き殺そうとしてきたのだ。


 警備隊の策略は卑劣だったが、それだけ僕達のことを警戒していた証拠である。

 正面から挑めば、多大な被害を出してしまうことを、認識しているのだろう。

 次はどんな手段を用いてくるか、分かったものではない。


「……確かに、何倍もの人数のオットームが、色々な罠を用意して攻めてきたら、勝つのは難しいかもしれません」

 僕が認めると、ルーシュさんは安堵の表情を浮かべた。

「分かってくださると助かります。このままでは、ダッデウドは帝国と決定的に対立し、破滅の道を辿るでしょう。そうならないように、ティルトには、ヴェルの言動を抑制していただきたいのです。そして、どうにもならなくなったら、貴方の手で、あの子を……」

 そこまで言って、ルーシュさんは言いよどんだ。


 ルーシュさんが言おうとしたことを察して、僕は動揺した。

 それは、いざとなったら、ベルさんに全責任を押し付けて帝国に差し出す、ということだ。

 確かに、それ以外には、僕達が助かる方法はないのだろう。


 しかし、それを実行することには問題があった。

 無論、ベルさんを生贄にすること自体が問題だ。

 場合によっては、僕が彼女を殺さねばならないのである。

 そんな事態は、絶対に避けたかった。


 だが、全ての感情を捨て去り、それを実行したとしても……それで、問題が解決するとは思えない。

 ベルさんを差し出せば、他の全員を見逃してもらえるという保証はないのだ。

 僕自身だって、虐殺や虐待行為で責任を取らされるかもしれないのである。


「お母様、ティルト、そろそろ戻らないと……」

 レレが、困った様子でそう言った。

 そういえば、僕とレレが揃っていない状態が、長く続くのはまずい。

「では、ティルトさん。ディフィとヴェルをお願いします。先ほどお話ししたことは、あまり深刻に考えないでください。いざとなったら……私が自分で手を汚す覚悟は、出来ていますから」

 ルーシュさんは、悲しげに言った。

「……その覚悟が、無駄になることを祈ります」

 そう告げて、僕達は別れた。


「……ティルト。覗きに来るなんて、最低です」

 2人きりになると、レレが冷たい目でこちらを睨みながら、そう言った。

「誤解だよ! 君のことが心配だったから、何かあったら助けるつもりだったんだよ!」

「そうですか。では、私が用を足す時にも、そのまま、こっそりと見守るつもりだったんですね?」

「それは……」


 指摘されて、僕は答えに窮する。

 そういえば、その時にどうするかは考えていなかった。


 レレはため息を吐いた。

「デリカシーの無い男性は嫌いです」

「ごめん……」

「……でも、心配していただけたことは嬉しいです」

「そ、そう……?」

「あの……本当に、そういう趣味はないんですよね?」

「ないよ!」

「ならいいです。ティルトは先に戻っていてください。2人で戻ったら、色々と詮索されるかもしれませんから」

「分かった、そうするよ」


 レレと別れて、僕は先に皆の所に戻った。

 皆はまだ眠っている。やはり、夜通し動き続けたことは、彼女達にとって負担が大きかったようだ。

 僕は、元の位置に戻って、レレが帰ってくるのを待つことにした。


 しばらくして、レレが戻って来た。

 彼女も、元のように木にもたれかかり、眠りについた。

 それを見届けて、僕も眠った。

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