表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀の簒奪者  作者: たかまち ゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/116

第60話

 僕は、ベルさん達が起きるのを、ひたすら待った。

 本当は、ノエルの様子を見に行きたかったが……彼女を刺激する可能性があるので、自重する。


 しばらくして、ロゼットが目を覚ました。

「……私は……一体……」

 彼女は、まだぼんやりとしている様子で、上体を起こして周囲の状況を確認する。

「ロゼット、実は……僕達は、宿の主人に眠り薬を盛られたんだ」

「……何ですって?」


 ロゼットは、僕の言葉の意味が、全く分からない様子だった。

 しかし、ロゼット達が眠った後で何が起こったのか話すと、彼女の頭は完全に覚醒したようだ。


「何てことなの……! あの男が、私の身体を狙っていたなんて……!」

 ロゼットは、自分の体を抱いて首を振る。

 顔見知りが、そんなことを考えていたなんて、気持ち悪すぎて耐えられないのだろう。

「信じられないと思うけど……事実だよ」

「……ねえ、ノエルは今どうしてるの?」

「彼女は、まだあの部屋にいるよ。クレアに付き添ってもらってる。本当は、別の場所で休ませてあげたいけど、大分混乱しているみたいで……」

「私も、あの子の様子を見てくるわ。助けてもらったお礼も言いたいから……」


 もしもノエルがいなかったら、ロゼットは凌辱されていたはずだ。

 そのことを考えると、ロゼットにとって、ノエルは恩人である。

 ロゼットが感謝の気持ちを伝えれば、ノエルの罪悪感が軽くなる可能性はあった。


「分かった。ノエルのことをお願い」

 そう言うと、ロゼットは頷き、部屋から出て行った。


「……ティルト、貴方は無事なの?」

 ロゼットが立ち去った直後に、突然、ベルさんがそう言った。

「ベルさん、気が付いていたんですか?」

「さっき目が覚めたばかりよ。まだ、頭がクラクラするけど……貴方達の話を少し聞いて、大体のことは分かったわ。ノエルは、ついにダッデウドとして目覚めたのね」

「嬉しそうに言わないでください。あの宿の主人は、跡形もない状態なんですよ? 今のノエルには、ショックが大きすぎます」

「……そう。ノエルは、あの魔法を使ったの」

「ベルさんは、ノエルが使った魔法のことを知っているんですか?」

「ええ。それは、分類上は防御魔法よ」

「防御魔法!? あれが……ですか!?」

「ええ。自分に接近している対象を、徹底的に破壊する魔法よ。私も、実際に見たことは無いのだけど……たとえ巨大な岩石であっても、塵に変えるほどの効果があると言われているわ」

「そんな魔法があるなんて……」

 僕は言葉を失った。


 それほど強力な魔法の存在について、僕は聞いたことがない。

 もしも、ノエルを本気で怒らせたら……たとえ誰であっても、無事では済まないだろう。


 そこまで考えて、激しい恐怖が湧き上がってくる。

 以前、僕がノエルに酷いことをした時……もしも、ノエルにダッデウドの魔法に関する知識があり、彼女が激昂していたら……僕は、宿の主人の男と同じ運命を辿っていた、ということか……!


「良かったわね、ノエルに殺されなくて」

 僕が考えていることが伝わったのだろう。ベルさんは、楽しそうに僕に言った。

「冗談じゃありませんよ! 死体も残さずに、この世から消え去るなんて!」

「あら、死体なんて、残らなくてもいいじゃない。埋葬するのが面倒だもの」

「……」

 とんでもないことを言われて、僕は言葉を失った。

「それにしても、ノエルがあの魔法しか使えないなら、戦力として計算するのは難しいわね……」

「そうなんですか? あんなに強力なのに?」

「あの魔法は、あくまでも防御魔法なの。あれで攻撃できるのは、触れられるほど近くにいる相手だけなのよ。しかも、全力で使ったら、魔力の残量にかかわらず、当分の間は発動させられないっていう弱点もあるわ」

「……じゃあ、今のノエルは完全に無防備なんですね?」

「本来なら、人を殺した程度で力を使い切ることは無いんだけど……あの子は、魔法を発動させたのが初めてだから、その確率は高いわね」

「だったら、ノエルの様子を見てきます。仮に、誰かが僕達を狙っていたら、クレアもロゼットも、戦うのは難しいでしょうから……」

「やめておきなさい。男性である貴方が行ったら、ノエルを刺激するわ。私が行くから、ディフィをお願い」

「……分かりました。でも、ノエルを刺激するようなことは言わないでくださいよ?」

「当然じゃない。貴方、私を何だと思ってるのよ?」

 ベルさんはそう言ったが、彼女の感性は通常とはかけ離れているので、僕は不安だった。


 まだ薬が残っているらしく、おぼつかない足取りでベルさんが部屋から出て行く。

 やはり、ダッデウドである彼女は、オットームであるロゼットよりも、薬の影響を強く受けているようだ。


 ベルさんの姿が見えなくなり、僕は、まだ眠っているレレを眺めた。

 呼吸は安定しており、普通に眠っているだけのように見える。


「……お母様……」

 レレが寝言を呟く。

 それを聞いて、思わず笑ってしまった。

 戦っている時は、とても頼もしい彼女だが、今は、ごく普通の女の子であるように思える。


 僕はそのまま、レレが目を覚ますまで見守った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ