表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀の簒奪者  作者: たかまち ゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/116

第41話

 ベルさんが、熊に向けて光の糸を放った。


 グラートの魔物ですら、あっさりと切り刻んだ魔法だ。

 ただの熊ならば、簡単に仕留められる。

 ベルさんの魔法の威力を知っている、誰もがそう思ったことだろう。


 しかし、それは違った。

 ベルさんの魔法は、熊の毛皮を切り裂き、出血させたが……それだけだった。


「……!?」

 その結果を予想していなかったであろうベルさんが、補助魔法を使って跳躍し、熊の突進を回避する。


 続いて、僕とレレも跳んだ。

 レレはクレアを、僕はノエルを抱えている。


「逃げなさい!」

 ベルさんが叫んだ。


 ノエルやクレアがいる状態で、この熊と戦うことは得策ではない。

 僕達は、それぞれ異なる方向へ走って逃げた。


 困ったことになった。

 熊は、ベルさんを追って行ったようだ。


 彼女は、補助魔法が苦手なはずである。

 果たして、1人で逃げ切れるだろうか?


「一旦、君をどこかに降ろす。そこで、動かずに待っていてほしい。僕は、ベルさんを助けに行くから」

 ノエルにそう告げると、彼女の顔は青ざめた。

「……ま、待ってください! せめて、手を縛っている紐を解いていただけませんか?」


 そうだった。彼女は、まだ縛られたままなのだ。

 その状態で、1人で放置されるのは、確かに不安だろう。


「分かったよ。じゃあ、降ろすよ?」


 僕は、ノエルを地面に降ろして立たせる。

 そして、両手を縛っている紐を見た。


「えっ……?」

 見たことのない縛り方だ。一体、どうやって解けばいいんだろう?


 そういえば、ベルさんは、身体への負担が軽い縛り方だと言っていた。

 おそらく、血流を止めないような方法なのだろう。


「……あの?」

「ねえ、ノエル……これ、僕には解き方が分からないんだけど?」

「そ、そんな……! じゃあ、私は、このまま1人で置き去りにされるんですか!? そんなの嫌です!」

 焦った様子でノエルは叫んだ。

「でも、ここなら、多分誰も来ないだろうし……少しの間なら、大丈夫じゃないかな?」

「そんな……!」

「……いや、やっぱり、君を置き去りにはできないみたいだ」

「えっ……?」


「ほう、俺がいることに気付いたのか」

 木陰から、男の声がする。

 そちらを見ると、脇に狼のような動物を従えている、赤い髪の男が立っていた。


「お前は……?」

「俺の名はオンド。ディバド人の戦士だ」

「ディバド人? 帝国の少数民族か……!」

「そうだ。そして、我々こそが、貴様らダート人を滅ぼして、帝国にその名を轟かせる存在になるのだ!」

 オンドという男が叫ぶと、脇の狼が、こちらに向かって突進してくる。


 凄まじいスピードだ!

 これは、僕の全速力よりも速い!

 ……少し前までの、だが。


 僕は、狼に向かって走り、鼻先を殴る。

 さらに、のけ反った狼の腹を、全力で蹴り上げた。

 狼は空高く舞い上がり、そのまま落下して動かなくなる。


「なっ……馬鹿な!?」

「どうやら、さっきのベルさんの魔法は、手加減していた結果のようだな」

「くっ……!」


 オンドは逃げ出した。

 僕は、ノエルを抱え上げて走る。


 ノエルを置き去りにするわけにはいかない。

 どこかに、他のディバド人がいるかもしれないし、オンドが操る動物が、彼女を狙うかもしれないからだ。


 カーラの時とは違って、ノエルは騒がなかった。

 目をぎゅっと閉じて、僕が立ち止まるのを待っている様子である。


 ノエルを抱えているとはいえ、オンドに追いつくのには時間がかかった。

 奴は、オットームよりも補助魔法の使い方が上手いらしい。

 だが、それでも、息が切れることもなく追い付くことができた。スピードアップのおかげだろう。


「くそっ! やれ、お前達!」

 オンドの呼びかけに応じて、今度は3匹の猛獣が姿を現す。

 僕は、ノエルを降ろして走った。


 決着はあっさりとついた。

 3匹の動物は、僕に殴られ、蹴られ、投げ飛ばされて、簡単に動かなくなる。


「あ、あ、あ……」

 最後に、もはや呻くことしかできなくなったオンドを殴った。


 確実に頭蓋骨を砕いた。中身もぐちゃぐちゃになっているだろう。

 即死できて良かったと、感謝してもらいたいところである。


「それじゃあ……ベルさん達のことが心配だから、戻るよ? 多分、大丈夫だとは思うんだけどね」

 僕がそう言うと、ノエルは、怯えた様子で頷いた。


 あまりにも僕が強すぎて、怯えさせてしまったらしい。

 可哀相なことをしてしまった。


 僕は、もう一度ノエルを抱えて、元いた場所を目指して走る。

 あまりノエルを揺さぶるのは、良くないだろう。今度は、速度を落として走った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ