表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀の簒奪者  作者: たかまち ゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/116

第27話

 旅を再開した僕達の気分は、最悪のものだった。

 ミアを助け出すことに失敗して、死なせてしまったためである。


 あの後、僕はベルさんに保護された。

 そして、2人でミアの遺体を丁重に葬り、クレア達と合流して町を後にした。


 ベルさんは、僕のことを責めなかった。

 彼女の怒りは、主に、ミアを勝手に連れ出したカーラに対して向けられているようだ。

 おそらく、僕がカーラを逃がしたことはバレていると思うが……ベルさんは、その件について追及しようともしない。

 そのことで、助かったと思う反面、不気味にも思えた。


 クレアとレレは、沈んだ様子だった。

 自分達が、町の人を逃がすことを優先したために、ミアを死なせてしまったと思っているようだ。

 しかし、2人がいたとしても、カーラの不信感を払拭できたかは分からない。

 ベルさんがお金を盗むことをやめたとも思えないし、結局、同じ結末を辿っていたような気がする。

 僕と同じことを考えたのか、ベルさんは、彼女達を責めたりはしなかった。


 僕は、ミアやカーラのこと以外でも、頭の痛い問題を抱えていた。

 今回の一件で、ダッデウドとして覚醒している時の僕の人格は、元のままだと自覚してしまったのだ。

 つまり、人を殺したのも、痛めつけて楽しんだのも、僕自身が行ったことなのである。


 今回は、町で助けた女性に対して、とんでもないことをしてしまった。

 相手が泥棒であっても、あれは明らかにやり過ぎだ。

 それに、ベルさんだってお金を盗んでいる。彼女を裁く権利など、僕達にあるはずがなかった。

 僕があんなことをしたと知られたら、クレアに人でなしだと思われるかもしれない。


 はっきりとしたのは、ダッデウドとして覚醒した僕は、「やりたいと思ったことを、ほとんど制御できない」ということだ。

 これは、恐ろしいことだった。

 殴りたいと思った相手のことは殴り、殺したいと思った相手のことは殺す。そんな人間は、ただの危険人物だ。

 あんな状態になるのであれば、もう二度と、ダッデウドとして覚醒したくないと思う。


「私達は、魔力を回復させる必要があるわ。リスクはあるけど、人が多く住んでいる街の近くを通りましょう」

 ベルさんはそう提案した。


 ミアを助けるために、ベルさんは、繰り返し魔法を使った。

 なるべく魔力を回復させておくべくだろう。


 人が多く住んでいる場所には、争いも憎しみもある。

 自身に対して向けられた感情でなくても、発散されたものを吸収すれば、失った魔力を補えるはずだ。


「……ベルさん。次は、グラートとは関係のない場所で、ダッデウドを保護しませんか?」

 クレアが言った。

「安心して。魔力が回復しきらない可能性ぐらい、考えているわ」

「そうじゃなくて……あんなに多くの人を巻き込んで、その中から誰かを助けようだなんて、無理がありますよ」

「あら。だったら、監禁されているダッデウドのことは見捨てるの?」

「……もっと穏便な方法はありませんか? こっそりと忍び込むとか……」

「無理よ。ゴドルの家に、どれだけの人がいたと思っているの? すぐに見つかるに決まっているじゃない」

「誰かに見つかっても、すぐに、魔法で動けなくすればいいんじゃないですか?」

「同時に、何人もの住人に見つかったら、そんなことはできないわ。そうなったら、すぐに町の警備隊だって押し寄せて来るのよ?」

「……でも、ミアっていう女の子を殺したのは、グラートの魔物ですよね?」

 クレアがそう言うと、ベルさんの顔がひきつった。

「……あれは不幸な事故よ。次は、必ず成功させるわ」

「……」


 クレアは、それ以上は何も言わなかった。

 触れてはならない話題を口にしてしまった、ということに気付いたのだろう。


 そのまま、無言でしばらく歩いたが、突然レレが立ち止まり、ナイフを抜いた。

「レレ……!?」

「気を付けて。囲まれているわ」

 ベルさんがそう言ったので、僕は周囲を見回した。


 道の両脇の木陰や、茂みの中から、武器を構えた男達が次々と出てくる。

 全部で30人近くはいる男達は、下卑た顔でこちらを見た。


「女とガキだけで歩くなんて、無用心だぜ?」

「そんなナイフで、俺達に勝てるわけがないだろ! たっぷり可愛がってやるよ!」

「……ん? こいつら、よりにもよって、髪が銀色だぜ!? 黒い髪の女以外は、始末するか?」

「女なら関係ねえよ! やることやったら、始末すればいいだろ?」

「分かってねえな。あんなのでも、大金を出して買おうとする金持ちはいるんだぜ?」


 男達は、口々に好き放題なことを言う。

 驚くほど醜い連中だ。金と女のこと以外は、頭の中に入っていないのだろう。


「……気持ち悪い」

 レレが、嫌悪感を露わにして吐き捨てた。

「何だとぉ!」

 その言葉が聞こえたらしく、男の一人が刃物を構えて詰め寄ってくる。


「ディフィ、始末しなさい」

 ベルさんが、冷たい声で命じる。

「はい、叔母様」

 レレは、表情を変えずに応じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ