表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀の簒奪者  作者: たかまち ゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/116

第22話

 カーラは、僕と2人で部屋に残されるのを嫌がり、ベルさん達に付いて行った。

 ベルさんは、僕にもついてくるように言ったが、カーラに睨まれたこともあって、1人で残ることにした。


 息を潜める。

 まだ、近くに、魔物がいる可能性だってあるからだ。

 無限にも感じられる時間が流れた。


 突然、遠くから、女性の悲鳴のようなものが聞こえた。


「……!?」

 今のは、ベルさん達のものではないだろう。

 明らかに、宿の外から聞こえた声だ。

 まだ、近くに生き残りがいたのか……!


 どうするべきか、僕は考える。


 ベルさんを呼びに行くべきだろうか?

 しかし、ベルさんが、ダッデウドでない誰かを助けるとは思えない。

 ただでさえ、彼女は大量の魔力を消費している。オットームのために、これ以上消費するつもりはないだろう。


 では、僕が1人で助けに行くべきか?

 普通に考えれば、それもするべきではない。

 僕は、まだ魔法を自由に使えないからだ。助けに行ったとしても、巻き添えで魔物に殺されるだけ、という結果になることは目に見えている。


 合流地点まで行き、レレを呼んでくるか?

 それは論外だろう。とても間に合うとは思えない。


 ここは、何も聞かなかったことにして、見殺しにするべきか……?

 そこまで考えて、僕は首を振った。


 クレアは、命の危険を覚悟で、町の人を逃がそうとした。

 力さえ引き出せれば、彼女よりも遥かに強いはずの僕が、逃げてどうするのか?


 僕は、宿に置いていた剣を抱えて、宿の外へ向かった。


 外に出て周囲を見渡す。

 人影は見当たらない。魔物らしきものも見つからなかった。


 勘で、声がした方を目指して進む。

 フードを被っているとはいえ、誰かに姿を見られないように、足音を殺した。


 再び、女性の悲鳴のようなものが聞こえる。

 それに加えて、男性の声も聞こえた。

 思ったより、近い。

 僕は、そちらに進み、建物の陰から様子を窺った。


 するとそこでは、男らしき人影が、女性らしき人物に馬乗りになっていた。


「何をしてるんだ!」

 思わず、声を上げた。


「……なんだ、ガキが邪魔すんじゃねえ!」

 男が、大きな声でこちらを威嚇してくる。

 僕は、足がすくんでしまった。


 相手が人間ならば、剣を見せれば追い払える可能性もある。

 しかし、こちらが素人であることを見抜かれたら、反撃を受ける可能性も否定できない。

 怒りよりも恐怖心が強いためか、魔法が発動する兆候もない。僕に、この男が止められるだろうか?


「……助けて!」

 女性が声を上げた。

 僕は、覚悟を決めて剣を抜く。


「その人から離れろ!」

 僕は、剣を男に向け叫んだ。

 すると、男は僕のことを鼻で笑った。

 そして、手をこちらに向けて突き出してくる。


「……!」

 僕は、咄嗟に身を投げ出した。


 男の手から、閃光が放たれる。

 オットームが使う攻撃魔法だ!


「いいか、今すぐどこかに行け。ここで見たことは、誰にも言うんじゃねえぞ?」

 男は、勝ち誇った口調で言った。


 オットームの魔法は、善良な心によって使うことができる、と言われている。

 それが正確なものではない、ということは、ほとんどのオットームが知らないはずだ。

 それなのに、この男は、魔法を悪事に使っている……!


 当然ながら、男の魔法は、ベルさんとは比べ物にならないほど効果が弱いはずだ。

 この距離ならば、直撃しても、死ぬ可能性は低いだろう。

 だが、大怪我をする可能性はある。

 もっと近付いて撃たれたら、死ぬかもしれない。


 男は、こちらが戦意を喪失したと判断したらしく、僕の方に注意を向けるのをやめた。

 そして、女性の服を引き裂く音が聞こえる。

 女性は、またしても悲鳴を上げた。


 僕は腹が立った。

 クレアは、本当に善良な心を持ち、常に正しいことをしようとしている。

 それに比べて、ろくでもないオットームが多すぎる!


 特に、この男は最悪だ。

 多くの人が魔物によって殺されたこの町で、どさくさに紛れて女性を暴行しようとするなんて……お前は獣以下だ!


 体が自然に動く。

 僕は、一瞬で男に接近し、首を刎ね飛ばしていた。


 目障りな奴が、これで、また一人消えた。

 何の価値もない男だったが、僕が魔法を発動させる役に立ったことで、ほんの僅かな価値が生まれたと言っていいだろう。


 ダッデウドの魔法は、繰り返し発動させれば、いずれは自分で制御できるようになるという。

 これで、僕も、完全なダッデウドに、また一歩近付けたというわけだ。


 覚醒しているためなのか、今は、人を殺したことへの嫌悪感も、本性をさらけ出すことへの抵抗感も無かった。

 ただ、満足感だけがあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ