第21話
僕とベルさんは、2人の少女を伴って階段を上がった。
ゴドルの部屋に来て、改めてミアを見てから気付く。
彼女が履いているスカートは、やたらと短い。
スーザンが履いていたものより、遥かに短いのだ。太腿のかなりの部分が見えている。
こんなに短いと、ちょっとしたはずみで、下着が見えてしまうのではないだろうか?
「ちょっと、貴方! ミアを、いやらしい目で見ないでください!」
カーラが、僕の視線に気付いて怒り出す。
ミアは、恥ずかしそうにスカートの裾を押さえた。
「ご、ごめん……!」
「あら、怒ることはないじゃない。男の子なら、普通のことよ」
そう言って、ベルさんは笑った後で、急に困った様子を見せた。
「……でも、ちょっと困ったわね。二人とも、その恰好じゃ目立ちすぎるわ」
確かに、ミアは、銀色の長い髪に加えて、極度のミニスカートであり、カーラは、この屋敷の使用人が着ているメイド服だ。
こんな格好のまま外に出れば、いかに魔物に襲われた混乱状態でも、誰かに見られた時に、強く印象に残ってしまうことは間違いない。
「隣に衣装部屋があります。そこで、余所行きの服に着替えましょう」」
カーラがそう提案した。
「そうね。そうしてくれると助かるわ」
「……覗かないでくださいね?」
「そんなことしないよ!」
僕がそう言っても、カーラはこちらを疑っているようだった。
僕達が部屋の外に出ようとすると、廊下には魔物がいた。
「……!」
動揺する僕の前に、ベルさんが飛び出す。
ベルさんは、一瞬で魔物を切り刻んだ。
その凄惨な光景に、ミア達が絶叫する。
「駄目よ、そんな大きな声を出したら。ミアを連れ出すところを誰かに見られたら、騒ぎになるわ」
ベルさんが、顔をしかめてそう言った。
「ご、ごめんなさい!」
「謝ることはないけど……とりあえず、貴方達は衣裳部屋で着替えなさい。ティルトは、ゴドルの部屋にいて」
「は、はい!」
僕は、ゴドルの部屋の中で3人を待った。
しばらくすると、ベルさんが、着替えた2人と共に、部屋に入ってくる。
「……!」
思わず息を飲んだ。
普通の服を着た2人が、想像以上に美しかったからだ。
ダッデウドであるミアのことは、明るい部屋に来た時点で、とても綺麗だと感じていた。
驚くべきはカーラだ。改めて見ると、彼女の美しさは、単なる使用人の域を超えている。
彼女のブラウンの髪も、なかなか素晴らしいものだと思えた。
「……ジロジロ見ないでくれませんか?」
カーラが、こちらに冷たい視線を向けてくる。
「いや、その……君達が、凄く綺麗だから……!」
「……貴方は、いつも、女性にそんなことを言って口説くんですか?」
「口説いてるわけじゃないよ!」
「はいはい、今はそれくらいにして。時間があんまりないんだから」
ベルさんが、手を叩いてそう言った。
普段だったら面白がりそうな状況だが、さすがにそんな余裕は無いのだろう。
「廊下の階段は、誰かに見られる可能性があるから使えないわ。非常階段を使いましょう」
そう言って、ベルさんは非常階段を降りていく。
僕達も、後に続いた。
宝物庫を通り抜け、僕達は一階の部屋まで降りる。
その部屋から出ようとすると、ベルさんに止められた。
「駄目よ。廊下には誰かいるかもしれないわ。窓から外に出ましょう」
ベルさんに言われた後で気付いた。
この部屋の外には、ゴドル達の死体が転がっているのだ。
殺したのがベルさんだとミア達に悟られたら、大変なことになる。
窓から逃げ出すのは、賢明な選択だった。
僕達は、窓から外に出た。
人の気配も、魔物の気配もない。
おそらく、生きている人間は、全て町の外に逃げてしまったのだろう。
魔物は、その後を追って行ったのかもしれない。
僕達は、一旦宿に戻り、荷物を持ち出すことにした。
この時点でも、人や魔物が多数残っているようであれば、宿に残っている物は捨てていく計画だったが……この状況なら、多少時間を使っても大丈夫だろう。
クレアのことは心配だったが、レレの実力は相当なものだというベルさんの言葉を、今は信用するしかない。
宿に戻っても、やはり、生きた人の気配は無かった。
僕達は、今日まで泊っていた部屋に行く。
宿の中にも、魔物が侵入した痕跡があったが、既に外に出ているようだ。
「それじゃあ、ディフィ達と合流しましょう」
荷物を回収して、ベルさんがそう言った。
「……あの……」
ミアが、困った様子で呟く。
「どうしたの?」
僕が尋ねると、ミアは困った顔をして、カーラに何かを耳打ちした。
「……あの、すいません。少しの間、ここで待っていてください」
「トイレに行きたいの?」
ベルさんが尋ねると、ミアは顔を真っ赤にして俯いた。
「ちょっと、男の子の前で……!」
カーラが、僕の方を見ながら抗議する。
「心配しなくても、ティルトにそういう趣味はないから大丈夫よ。私や、一緒に旅をしてるクレアっていう女の子にも、凄く気を遣ってくれるんだから」
ベルさんは笑いながらそう言った。
……女の子の前で、下品な話をするのはやめてほしい。
心からそう思った。




