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白銀の簒奪者  作者: たかまち ゆう


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第17話

「話を戻すけど……その、ミアっていう女の子が虐待されていることは間違いなさそうだから、ゴドルという男は、始末するわ」

 ベルさんは、淡々とそう言った。


「待ってください! ゴドルがやっていることは、やっぱり犯罪じゃないですか! 警備隊に通報して、捕まえてもらうわけにはいかないんですか?」

「どうなの、ディフィ?」

 ベルさんが尋ねると、レレは首を振った。

「ゴドルは、この地方の領主にも、莫大な寄付をしているそうです。ダッデウドを虐待していても、見逃される可能性が高いと思います」

「だからって、なにも殺すことは……」

「ダッデウドを虐げる者は、全て殺すわ」


 ベルさんは、決意を込めた様子で言った。

 この人は、僕達が止めても、ゴドルという男を必ず抹殺するだろう。


「じゃあ、ゴドルという男のことはともかくとして……この町の人は、何とかして逃がせませんか? グラートが仲間でないなら、より多くの人を殺すメリットなんて無いでしょう? 無関係な人は、逃がすべきだと思いますけど……」

「確かに、私達がグラートに、積極的に協力する必要はないわ。でも、彼らを邪魔して、敵だと認識される事態は望ましくないのよ。魔物の召喚をグラートだけに任せたら、ダッデウドも巻き込んでしまうでしょう? ダッデウドを助けることに協力する、という約束は守らせないと」

「グラートは、信用に値しますか?」

「信用なんて、最初からしてないわ。今はまだ、利害が一致しているから敵ではない、というだけのことよ」

「じゃあ……いずれ、グラートは、ダッデウドも敵に回す、ということでしょうか?」

「そこまでは分からないけど。だからこそ、こちらから敵対するようなことはしたくないの」


「グラートは、魔物を操っているわけではないんですよね?」

 クレアが、何かに気付いた様子で話し始めた。

「そうだけど?」

「だったら、いちいち魔物が暴れる様子を監視していないかもしれませんよね? グラートは、召喚魔法以外の魔法も使えるんですか?」

「使えたとしても、オットームよりは劣るでしょうね」

「だったら、魔物を迎え撃っても、町の人を逃がしても、問題はないはずです」

「そうね……貴方が言いたいことは分かるわ。でもね、言っておくけど、オットームを守るためにダッデウドが戦っていた、なんていう話が広まるリスクは犯せないわよ?」

「だったら、私が町の人を逃がします」


「クレア!?」

「そうね……構わないわよ。貴方一人でやるなら」

「ベルさん!?」

「この町に住んでいるのは殆どがオットームだもの。ダッデウドが関わったら目立つじゃない。やるなら、オットームであるクレア1人だけよ」

「それで構いません」

「そんな! 危険だよ!」

「分かっているわ。でも、命の危険があるからって、たくさんの人を見殺しにするなんて、私にはできないもの」


 クレアの決意は固いようだ。

 何とかして止めなければ……!


「……叔母様、私も手伝いたい」

 突然、レレがそう申し出た。

「まあ……」

 ベルさんは、レレの申し出に、困惑した様子だった。


「レレ、ありがとう!」

 感激したのか、クレアはレレに抱き付いた。

「……あ、あの……?」

「嬉しい! 貴方は、ダッデウドなのに、とってもいい子なのね!」

「……」

 レレは、顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにしている。


 クレアは、以前から、妹が欲しいと言っていた。

 村の小さな女の子にも、親切に接していたことを思い出す。


 喜ぶクレアとは対照的に、ベルさんは渋い表情をした。

「それは困るわね……。ディフィがいないと、私とティルトだけで、ゴドルの屋敷に行くことになるわ。今のティルトは、まだ自由に戦えないし……」


 確かに、それは問題だった。

 今すぐ戦えと言われても、僕は困ってしまう。

 となると、当然、ベルさんに頼ることになるが……この人は、長時間戦い続けることができないらしい。

 クレアだけではなく、僕達にも、誰かの助けが必要だろう。


 考え込んでいたベルさんが、何故かクレアを眺めはじめる。

 また、良くないことを思い付いたようだ。


「ベルさん! まさか、クレアに、また何かしようとしてませんよね?」

「しないわよ。クレアには、ね」

「じゃあ……」

 僕の言葉は、ベルさんに抱き付かれたことによって遮られた。

「!?」

 ベルさんの唐突な行動に驚き、僕は固まってしまった。


「ちょっと、ベルさん!」

 クレアが抗議の声を上げる。

「いいじゃない。私はティルトのことが好きだし、ティルトだって何も失うわけじゃないでしょ? クレアに何かしてるわけでもないし」

「いや、えっと……」

「私をからかうために、ティルトに何かするのはやめてください! ティルトも! きちんと断りなさいよ!」

「あら、からかってるわけじゃないのよ? ティルトの士気を上げようとしてるんじゃない」

「ベルさんがそんなことをしても、士気なんて上がりませんよ!」

「でも、ティルトだって男なわけだし……身体の関係になった相手が危機に陥ったら、助けたくなるんじゃないかしら?」


「……!?」

 ベルさんが思い付いたのは、想像以上にろくでもないことだった。


「貴方は……何てことを言うんですか!」

 クレアが、顔を真っ赤にして言った。

「いいじゃない。私達、これから死ぬ可能性だってあるのよ? 今のうちに楽しんでおいた方がいいわ。私だって経験があるわけじゃないけど……こういうことって、勢いが大切よね」


「……」

 レレが、汚い物でも見るかのような目で、こちらを見てくる。

 彼女に軽蔑されると、何だか、非常に心苦しかった。


「ベルさん、離れてください」

「あら……私のこと、嫌い?」

「……そうじゃありませんけど。とにかく離れてください。それと、レレの前で、変なことを言わないでください」

「もう。つまらないわね」

 そう言いながらも、ベルさんは離れてくれた。

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