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無口な婚約者に「愛してる」を言わせたい!  作者: 四折 柊


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21.お見舞い

「この話、国家機密レベル……」


 ロレーヌ様が重々しそうに呟いた。そんなに重たい話だったかしら?

 今日も日課となったロレーヌ様とお茶の時間を過ごしている。わたくしの子供の頃の話が聞きたいとせがまれたので語っていたのだ。

 さっきも祝福の力でリンゴジュースを2杯作り、ロレーヌ様と飲んだ。最近のロレーヌ様はすっかり元気そうだ。肌は艶々で少しふくよかになった。これは太ったのではなく健康的になったという意味だ。以前が細すぎたのよ。


 確かに祝福の力を使うとすごく体力を消費するけど、祝福で作ったリンゴジュースを自分で飲めば元通りになる! 三回作って三回目は自分で飲めば回復するから、再度祝福の力が使える。以前これを繰り返せば何回でもイケるのではと提案したらトリスタンに叱られた。あの時初めてお仕置き用こんぺいとう君二号を食べることになったのだったわね。もの凄く苦かった……懐かしい。思い出しただけで口の中が苦く感じる。恐ろしいことだわ。


「だからロレーヌ様もわたくしの力については絶対に秘密にしてくださいね!」

「しないわ。絶対に!」


 ロレーヌ様は真っ青な顔で何度も頷いた。それはそうよね。もし口外したらトリスにこんぺいとう君のお仕置きをされることになるのだもの。


「ここまでの話はわたくしとトリスとの馴れ初め前編です」

「前編?」

「はい。後編で恋を自覚して名前をトリスと呼ぶようになったのです」

「……長い話になる?」

「それなりに?」

「では次の機会に聞かせてくださる?」

「いいですよ。後編ではアレクセイも出てくるので、乞うご期待。ふふふ」

「それは……楽しみだわ」


 ロレーヌ様がはにかむ。そんなにアレクセイが好きなのね。その魅力はわたくしには全く分からないが。


「そろそろ出発するけどいいかしら?」

「はい。お供します!」


 今日はこれからロレーヌ様と外出することになっていた。訪問先は今回ロベールに誘拐された令嬢の一人のお屋敷にお見舞いに行く。

 さすが王家の馬車は揺れが少ない。ふかふかのクッションまで置いてあるので寄りかかってリラックスしたいが、ロレーヌ様と同乗しているのでわたくしは淑女らしくシャンと座っている。ロレーヌ様が窓の外を眺めながら物憂げに口を開いた。


「マルティナ様。今日これから向かうのはヴァンサン伯爵家のシルヴィ様のところです。残る被害者のお二人はすでに静養のために王都を離れ領地で過ごしているそうです。少しでも気持ちが落ち着くといいのですけど、王太子妃として何もできないことが申し訳なく、また歯がゆいことです」

「ええ……」


 真面目なロレール様らしい発言だ。

 すでに領地で過ごしている被害者となったご令嬢は、マソン男爵家のテレーズ様、メルシエ伯爵家のエステル様、お二人からはわたくし宛てにお礼の手紙を頂いている。

 監禁された恐怖もさることながら自慢の髪を失ったショックにいまだ立ち直れていないそうだ。当然だと思う。心の傷がいえるまでどれだけの時間が必要になるのかと思うと胸が締めつけられる。

 とかく他人は命が無事なら髪くらいというが、社交界では女性の髪の美しさを競いあっている。まさに髪は女性の命! 彼女たちの苦悩を軽んじないで欲しい。

 

 実は我がデュラン伯爵領では(かつら)に関する技術及び育毛剤などの研究が進んでいる。極秘で問い合わせてくる貴族たちも多い。薄毛に悩んでいる人は多いからね。慰めにならないとは思うが領地に行かれたお二人には鬘に関するパンプレットなどをお見舞いの手紙とともに送った。


 異例のことだが王家からは非公開でお見舞いの書簡を送っている。ボワイエ公爵代理からの賠償金もすでに支払われている。

 ロレーヌ様も個人的に何かできることはないかとお見舞いの手紙を出したところ、ヴァンサン伯爵家のシルヴィ様からわたくしにお礼を言いたいと希望があった。最初それを断った。だって救出はわたくしの個人的な目的があってのことで私欲だ。お礼といわれると後ろめたい。でもシルヴィ様がどうしてもとおっしゃるので、ロレーヌ様と一緒にお見舞い行くことになった。


 シルヴィ様は癖のない美しい金髪のご令嬢だ。救助後、騎士団にご家族と婚約者が迎えに来ていた。抱き合って涙の再会をしていたのを覚えている。

 馬車がヴァンサン伯爵家に到着するとわたくしたちは伯爵夫妻から歓迎を受けた。そのまま応接室に通される。


「この度はわざわざお運びくださりありがとうございます。妃殿下の心遣いに感謝申し上げます。妃殿下から心のこもったお手紙を頂き娘も喜んでおります。マルティナ様にも心からお礼を申し上げます。このようなか弱い女性が危険を顧みず娘の救助に助力していただいたこと、本当に、っ……」


 伯爵夫妻は感極まったように涙し言葉を続けられなくなった。わたくしはレアセトロスュクレのために意気揚々と乗り込んだのであって、使命感があってのことではない。そんなに大袈裟に感謝されるとむしろ本当に後ろめたい。返事のしようもなくわたくしは曖昧に頷く。


「ご家族のご心痛を思えば解決に時間がかかったことを申し訳なく思っております。王家として謝罪申し上げます。それでシルヴィ様の様子はどうでしょう?」

「はい。屋敷に戻ってからベッドから出ずに泣いてばかりでしたが、妃殿下が来て下さるとのお返事を受け取ると喜んで……久しぶりに笑った顔が見られたのです」

「そう。お部屋を訪ねてもよろしいかしら?」

「はい。ぜひ! 娘はロレーヌ様にずっと憧れていました。きっと喜ぶでしょう」


 どうやらわたくしへのお礼よりもロレーヌ様がメインね。それはまあ、王太子妃が非公式とはいえ伯爵家を直々に訪ねることなどめったにない。わたくしはおかげで少しだけホッできた。わたくしたちは伯爵夫人の案内でシルヴィ様のお部屋に向かった。



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