EP175.王様ゲーム2
「じゃあ次ね〜。せーの!」
「「「王様だーれだ!」」」
俺だ、江波戸蓮だ。
一瞬しか経っていないはずなのに随分と久しぶりな気がするが……まあ気のせいか。
凛の進行により、俺ら7人は筒に入っている割り箸を勢いよく抜き取った。
結構太い筒なので問題ないが、もし細い筒なら大変なことになるなと今になって思う。
それぞれ自分の役を確認して、それを周りに見られぬように手で覆っている。
その中で、俺は赤い印の付いた割り箸を悪い顔で天に掲げた。
「俺が王様だ」
前に王様ゲームをしたのは12歳なので、実に4年ぶりの王様となる。
割と空気になったから命令を全く考えていないのは、ここだけの秘密だ。
さてさて、どんな命令を下すか今からじっくりと考えてやるぞ……
「蓮って基本緩い命令だしなあ……」
と一人まぬけに悩んでいたら、凛が呑気な表情でふと呟いた。
早く次に進まないかなあ、とでも思っていそうな様子である。
なんか気に食わねえな……
「まあ、なんとなく想像はできますね」
「同感かな。口調はキツイけど、なんやかんやで優しい節があるし」
そう思ってドギツそうな命令を考えていたら、小夜や芙陽に好き勝手言われた。
ただ、普通に褒められている気もしてくるからなんとも言えない。
……まあ、とりあえず命令するか。
キツイやつ、キツイやつ……
「2番は次のゲームで『せーの、王様だーれだ!』という掛け声を一人だけでする」
「ほらね?」
命令を下した途端、凛がそう言って呆れた顔を向けてくる。
『緩い命令』と言われている、と察した俺は、眉を寄せた。
「『ほらね?』って言ってるが、一人だと案外寂しいもんだろ?キツイだろ?」
「そりゃあ精神的にはね?それもちょっとしたセリフを1回だけっていう指定が緩いのよ」
「そんなことないと思うがな……」
みんなも想像して欲しい、黙った空気の中で一人叫んでる状況を。
……何度も経験してきた俺が言わせてもらうが、中々にドギツイぞ。
そう思って他のメンバーの方に視線を向けると、何故か凛と同じ顔をしていた。
……あれ?
凛は続ける。
「で、その命令先が1番ダメージ少ないあたしってのも蓮の緩いところなのだよ」
「すげえ言ってくるじゃねえか。てか、お前なら本当にダメージ低いな……」
どっちにしろ2番が凛なのを知って、俺は色々と諦めて落胆した。
どちらかと言うとムードメーカーな凛が一人叫んでも、そこまで気まづくはならない。
皆で筒の中へ割り箸を戻し、少し混ぜたあとでまた一本持ち直した。
「じゃあ行くね〜。せーの、王様だーれだ!」
凛が一人宣言して、皆で割り箸を勢いよく抜き取った。
それぞれの番号を確認し、周りに見られないように軽く隠す。
「って、次はあたしが王様なのね」
「終わった……」
「さっきから江波戸姉弟の漫才が凄いわね」
凛の言葉を聞いて絶望した俺に、薫が半目になりながらそう指摘した。
これが漫才かどうなのかはよく分からないが、それよりも、だ……
4年前の事を思い出しながら、俺は俯いて頭を抱えた。
「……もしかして、蓮さんとは真反対に、凛さんの命令はドギツいとか?」
「なんか癪に触るが……まあ、腹を括った方が良いとはアドバイスしとくぞ……」
首を傾げる芙陽に、俺は頷く。
あの時は……俺も従兄弟も、この姉貴の蹂躙に絶望してきたものである。
さすがに命に関わることでもないし、一応一瞬で終わる事だが……
「じゃあ、命令するね〜」
凛が影が落ちるその顔で告げると、俺の反応を見た他の皆が息を飲む。
俺はもう、震えた足を止められなかった。
「3番と6番が、鼻と鼻をくっつけるほどの近さで10秒間見つめ合う!」
「「「「え?」」」」
凛が絶望的な命令を告げると、俺と瑠愛以外の4人がそんな素っ頓狂な声を上げた。
……何故かは知らないが、俺は4年前の精神的なキツさを思い出す。
「失礼なのですが、蓮くんが言うほど厳しい内容には聞こえないような……」
「マジ?」
しかしそんな俺の近くで、小夜が信じられないようなことを口にする。
聞いただけでも、従兄弟には失礼だが俺は少しだけ吐き気がしていたというのに……
「はいは〜い、3番と6番は誰かな〜?」
しかしそんな俺に割れ込み、凛は被命令者であるその二人を探る。
腐女子である凛にとっては、俺と芙陽の方にキラキラとした視線を向けてきていた。
……3番である俺は、もう諦めて、大人しく手を上げることにした。
前回までずっと影が薄かったのに、何故今回ばかりは目立つのだろうか?
「って、まさかのカップル二人なのね……」
「は?」
そう思っていた俺だったが、残念そうにそういう凛の言葉に顔を上げる。
俺の他に被命令者として手を上げていたのは……ほんのりと顔を赤らめた、小夜だった。




