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16 銀色天使との楽しい雪国ライフ(1/2) ※エルヴィラ視点


 エルヴィラは、南からの客人を迎えてからというもの、先月の自分には信じられないくらい楽しい生活を送っていた。


「エリーちゃん、おはようなの」

「リアちゃん!」


 子ども部屋の朝ごはんに現れる銀色の天使を、エルヴィラは満面の笑顔で出迎える。


「エリーったら、いつもあんなに不機嫌なのに。リーディアちゃんが来てからずっとご機嫌ね」


 からかう母ナタリーの言葉も、エルヴィラには響かない。


 何しろ、いつも一人だったこの子ども部屋に、毎日可愛い天使が現れるのだ。

 ご機嫌どころか、人生で一番絶好調なのは、自然の摂理である。


「あら。エルヴィラちゃんは、いつもとってもいい子ですよ。リーディアも見習わないとね」

「うん! リーも、エリーちゃんみたいになりたい!」

「リアちゃん……!」


 しかもそう、天使はエルヴィラのことを尊敬し、大好きでいてくれているのだ。

 これ以上ご機嫌になる事態があるだろうか。

 エルヴィラは、幸せの絶頂である。



   ~✿~✿~✿~


「エリーちゃんはね、お姫様なの?」

「え?」


 ある日、内緒話をするように、天使はエルヴィラに尋ねてきた。


「エリーちゃんは、雪の中の立派なお屋敷に住んでるでしょう。物語にでてくる、お姫様みたいなの」

「!!」


 自分に向けられたキラキラ輝く紫色の宝石に、エルヴィラはハッとする。


 エルヴィラは、この雪に囲まれた辺境伯邸が嫌いだった。


 けれども、その邸宅のお陰で、天使にお姫様扱いされている。

 それに、素敵なキャベツも、雪の中から出て来た。


 雪に囲まれた邸宅。悪くないかもしれない。

 天使にお姫様扱いされるなら、うん、全然、悪くないかもしれない……。



   ~✿~✿~✿~


「エリーちゃん。ディエゴは、異国の王子様なの?」

「え?」


 今日も今日とて、エルヴィラに会いに来た草原の民の王の子、ディエゴ=テオス=タラバンテ。

 彼を見たリーディアは、はわわわ、と頬を林檎色にして動揺したかと思うと、エルヴィラにそう聞いてきたのだ。


 エルヴィラは改めて、豪奢な刺繍が施された水色の布地の民族衣装に身を包み、コートのように毛皮を羽織っているディエゴの姿をまじまじと見る。


 そんなリーディアとエルヴィラを見て、ディエゴは珍しく、朗らかに笑った。


「ははっ、リーディア。君は面白いことを言うね」

「だってね。ディエゴはとってもキラキラしてるの。お顔も、なんだかリー達と違う感じで、でも格好いいの!」

「ありがとう、お姫様。……そうだね、リーディアには、こういう礼の方がいいのかな?」


 エタノール王国風の紳士の礼をとるディエゴに、リーディアはきゃあきゃあ喜んでいる。


 エルヴィラは、なんだか胸の中がむずむずするのを感じた。


 ディエゴは、言われてみたら、ちょっとだけ、その、格好いいかもしれない。

 白い肌も、高い鼻も、悪くないかもしれない。


 でも、いつもエルヴィラに会いに来るときには、そんなことはしないくせに。

 格好いい紳士の礼もしないし、そんなふうに、笑ったりしないくせに!


 何故か不満で一杯になってしまったエルヴィラは、ディエゴをむーっと睨みつけていると、それに気が付いたディエゴが不思議そうに首を傾げた。


「エルヴィラ?」

「なんでもないもん!」

「うん? ええと、本当に?」

「本当よ! リアちゃんにばっかり優しい悪いディエゴのことなんて、なんとも思ってないのよ!」


 眉を顰め、ぷくぷくほっぺを育てるエルヴィラに、ディエゴは目を丸くした後、声を上げて笑った。

 それがなんだか嬉しくて、でも悔しくて、エルヴィラはますます眉を顰め、ぷくぷくほっぺを育ててしまった。




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