一回戦:ミナスVSジークフリート①
『まもなく第一試合の開始時間です!実況はルーキー戦に引き続き、NWO新聞局クランマスターミリムがお送りします!そして、同じく解説は──』
『ラピスッス。ルーキー戦と違ってオープン戦は忙しそうッスね』
第一試合をまもなくに控え、私達は観客席でその時を待っていた。
「実況と解説ってプレイヤーだろう?どうやって決まったんだい?」
「運営から依頼されたそうよ」
NWO内で一番の情報通であるラピスには解説は適任でしょうね。
「ロータスさんの試合まではまだ時間がありますね。第四試合ですし。ところで、このローズという人は強いんですか?」
「今大会唯一の決勝トーナメントに進出した魔法使いよ。魔法使いに不利なルールの中で決勝トーナメントに進んでいるんだから実力は確かよ」
認めるのは癪だけれど。
「掲示板で話題になっていたねぇ。マーネとどちらが上かって」
「そうみたいね。同じ魔法使いとしてどちらが上かというのはβ時代から話のネタにされていたわ」
魔法使いは同じでもタイプが全然違ったからそう意味でもどちらが上か気になったのでしょう。
「実際どうなんだい?」
「直接戦った事はないからなんとも言えないわね。でも、負けるつもりはないわ」
この大会でロータスは最強のプレイヤーになる。たかが魔法使いという枠組みの中で一番になれないようじゃその隣に立つ資格なんてない。
『ここで選手がやって来ました!最初に姿を見せたのは今大会優勝候補筆頭!No. 1クランニーベルンゲンのクランマスター!竜殺し・ジークフリートォォォォォ!!』
最初にリングに現れた漆黒の鎧に身を包み、右手に騎乗槍、左手に大盾を持った男。
重量級の装備だというのにその歩みには一切の淀みもなく、堂々とした足取りでリングを進む。
『職業は特殊職の一つ重戦士ッスね。圧倒的なSTRとVITを持つ職業ッス。装備も相まって自分の知る限り物理防御力に関しては右に出る者はいないッス』
『最強の矛と最硬の盾を持つ職業という事ですね』
『そうッス。物理攻撃力に関しても対抗できるのは一人だけッスね。ただ、強力な職業ッスけど、弱点もあるッス。物理防御力に反して魔法防御力はかなり低いッス。AGIも全職業中トップクラスで低いッスから下手したらただの的になってしまう扱いの難しい職業ッスね』
『なるほど!おっと、ここでもう一人の選手もやって来ました!』
『今大会唯一のソロプレイヤー!百発百中の腕を持つ正体不明の弓の達人!アルテミス・ミナスゥゥゥゥゥ!!』
ジークフリートに遅れて現れたのはすっぽりとローブで体を覆い、仮面で顔を隠して弓を背負ったプレイヤー。No. 1弓使いミナス。
「何故アルテミスと呼ばれているんですか?」
「アルテミスっていうのはギリシャ神話に出てくる弓の名手でもある月の女神の事よ。ミナスっていうのは月の事で同じく弓の名手でもだからそう呼ばれているの」
「女神って……。あの人、女性なんですか?」
「さあ?ロータスならわかるかもしれないけれど、私にはわからないわね」
あれだけローブで隠されていると体格もわからないし。ただ、かなり小柄だから女なんじゃないかとは言われているけれど。
『職業はシーフ系特殊職の一つスナイパーッスね。STR、AGI、DEXが高い職業で本来はこういう一対一の戦いは得意としていないッス。ただ、動きの遅い重戦士に対して遠距離から一方的に攻撃できるッス。勝負を分けるのはジークフリートさんが距離を詰めて攻撃を当てられるか。ミナスさんが距離を詰めさせずにHPを削り切れるかッスね』
『人気は圧倒的にジークフリート選手ですけど、どちらが勝ってもおかしくないと?』
『案外いい勝負になるんじゃないッスかね』
「マーネはどちらが勝つと思うんだい?」
「わからないわ。ミナスっていうプレイヤーはβ時代も今もソロを貫いているから。関わりがあるのなんて装備を作っている生産職くらいじゃないかしら」
弓の腕は間違いないのでしょうけど、戦いは上手い方が勝つとは限らない。
「そもそも、ここでどちらが勝つかなんて予想しても仕方ないわ。どちらが勝つかなんて見ればわかる」
私は一定の距離を置いて対峙するに視線を向けた。
『長らくお待たせしました!第一試合開始の時間がやって来ました!それでは始めましょう!一回戦第一試合、始め!』




