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神殿攻略②

「だいたいここのモンスターの特徴は把握できたわね」

俺達は三体のガーディアン・パトロール相手に色々と試しながらも危なげなく撃破した。

「全てがそうとは限らないけれど、ヘイトではなく純粋なダメージ量で狙いを決めるみたいね。それに、ガーディアン・パトロールに限れば特殊な攻撃はないみたい」

ガーディアン・パトロールの攻撃方法は鋭く切れるプロペラによる突進くらいで他には確認できなかった。

ミナスがその気になれば近づける事なく完封できるはずだ。

「防御に関してはこれといった弱点もなかったわね。色々な属性で試してみたけれどダメージは変わらなかったし」

「当然毒とかも効かなかったねぇ」

「それから、やっぱり気配察知に反応がないというのは厄介だな」

ガーディアン・パトロールは音でわかったが全てがそうとは限らない。

「攻撃はともかく、それ以外の要素はここのモンスター全てに共通かもしれないわね」

「そうだな」

「とりあえず、ロータス」

「ん?ああ、わかった。ガーディアン・パトロールに関しては俺一人で戦うよ」

「ええ、お願い」

ガーディアン・パトロールだけに限っていうなら少し硬いだけで脅威にならない。あの程度なら俺一人でもどうとでもなる。

それなら、この神殿がどれだけの広さがあるかわからない以上なるべく消耗は避けるべきだ。

マーネのMPもミナスの矢も有限なのだから。

特に、自動で回復できるマーネのMPと違ってミナスの矢はここでは補充できない。

抑えられる消費は抑えておくべきだろう。

「む」

歩みを再開させてしばらくすると、再び音が聞こえてくる。

先手必勝と蓮華を抜いて駆け出し、壁から飛び出した矢を掻い潜り、床から突き出した槍を横にずれて躱して現れたガーディアン・パトロールに肉薄する。


(サークルスラッシュ!)


体を回転させながらの横薙ぎ。白いエフェクトを纏った蓮華によって通常よりも広い斬撃が三体のガーディアン・パトロールを纏めて斬りつける。

これで狙いを俺に向けさせればあとは各個撃破していくだけ。

すでに手の内を知れている相手に苦戦するはずもなく然程時間もかからずに三体のガーディアン・パトロールを撃破した。

それからも罠を無理矢理突破し、襲いくるガーディアン・パトロールを倒しながら進んでいった。

そして、しばらく進んでいくと上へと昇る階段を発見した。

「階段だねぇ」

「昇るんスか?まだこの階を全て探索した訳ではないッスけど」

「何かアイテムがあるかもしれないけれど、いいわ。まだ先は長そうだし」

「情報屋としては隅々まで把握したいところッスけど、我慢するッス」

「ええ、そうしてちょうだい」

他に異論もなく、俺達は階段を昇った。

「二階もあまり変わらなさそうッスね」

「何階あるんだろうな?」

「落下時間と天井の高さ、それに階段の長さを考えると十階くらいね」

「まだ先は長いな」

このまますんなりも行かないだろうな。

「時間的にもうここまでね」

「ああ、もうそんな時間か」

時間を確認してみれば確かにいい時間だ。

ラピスも同年代くらいだし、全員明日も学校があるのだからこれ以上はやめておくべきだな。

「それにしても、あのマーネが自分からゲームをやめると言うんだから成長したな。前は一人でも続けて夜中までゲームをやろうとしていたのに」

「……貴方とやる方が楽しいもの」

そうつぶやいてマーネは顔を赤く染めながらそっぽを向いた。

「そうだな。俺もみんなでやる方が楽しいと思うよ」

「はぁ……そういう意味ではないないのだけれど」

「む?」

マーネの言葉に首を傾げていると、クイクイと服を引っ張られた。

「……わたしも……ローくんと……一緒……楽しい……よ」

「俺もミナスが仲間になってくれて今までよりももっと楽しいよ」

「……ん」

みんなといえばと、ここにいないもう一人の仲間の事を思い出す。

「そういえば、ユーカはどうしてるんだ?」

「師匠の所に行くと言っていたねぇ」

師匠といえば、刀の打ち方を習った鍛治師か。

「……ユーカ?」

「そこにいるユーナの妹でうちのクランのもう一人のメンバーだ。始まりの街に戻った時に紹介するよ。俺の一個下でミナスとは同い年だ。仲良くしてやってくれ」

「……頑張る」

ミナスはキュッと小さく拳を握った。

人見知りのミナスだが、これから同じクランとしてやっていくのだ。まあ、二人共いい子だから心配はないだろう。

「さあ、雑談はこれくらいにしてログアウトしましょう」

「そうだな」

神殿攻略一日目はこうして幕を閉じた。






「順調だな」

神殿攻略二日目。昨日の続きとなる二階の探索を始めたが、探索は順調に進んでいた。

それというのも罠やモンスターが一階とほとんど変わらないからだ。

「貴方に言う必要はないと思うけれど、油断はしない事ね。モンスターがあれ一種類という事はないでしょうから」

「ああ、わかってる」

ガーディアン・パトロールは音で接近がわかるが、全てがそうとは限らない。仮にジッと身を潜めて獲物を待つようなモンスターがいたら──。

「ッ!」

突如俺の知覚範囲に入ってきた存在に蓮華を抜き放ち、そのまま振り抜く。

ガキンッ!と音を立て頭上から迫っていた槍の穂先のようなものを弾き、その出所を確認するべく頭上を仰ぐ。



ガーディアン・アサシンLv27

種族:魔法兵器



そこにいたのは機械でできたクモのようなモンスター。どうやら槍のようだと思ったのはガーディアン・アサシンの脚だったようだ。

天井が高いせいで前を見ていると天井付近はどうしても死角になってしまう。それが音も気配もなく襲ってくるとなるとまさに名前通りのアサシンという訳だ。

俺に気づかれたガーディアン・アサシンは次々とその脚を突き出してくる。

ふむ……。

「ミナス!頼む!」

「……ん」

即座に放たれた矢が的確に天井に張り付いている脚に直撃していき、ついに耐え切れなくなったガーディアン・アサシンが落下してくる。

俺はその胴体部分をある場所を狙って蹴り飛ばした。すると……。

床に落ちた瞬間、床から突き出した何本もの針がガーディアン・アサシンを貫いて串刺しにする。それによってHPは瞬く間になくなり、光の粒子に変わって消滅した。

「今、罠の場所がわかって利用したのかい?」

「あそこに誘導しようという意思を感じたんだ。だから何かあると思って試してみたんだが、なかなか物騒な罠だったな」

「罠を利用するモンスター……厄介ね」

「おかげで罠の場所がわかったんだけどな」

たまたま近くにあった罠を利用したというよりもガーディアン・アサシン自体が罠の近くに待機しているというモンスターかもしれないな。

ガーディアン・アサシンを見つけた時は同時に罠も警戒した方がいいな。

「とりあえず、気配察知に反応がないというのは確定かしらね。こうなるとロータスの感覚が頼りよ」

まあ、この中だと一番五感が鋭いのは俺だろうしな。

今まで以上に警戒を怠らずに行こう。

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