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ダンジョン:試練の洞窟・絆⑤

 ◇◆◇◆◇◆




 試練の門番の攻撃を掻い潜って肉薄した俺は勢いそのままに斬りつける。

「駄目か」

 だが、そのHPはさっき見た時と変わらず、反撃に激しい斬撃が飛んでくる。

 それを身を屈めて躱し、一旦距離を取る。

「だー!どうやって倒せばいいんだよ!」

「何か仕掛けがあると思うんだけど……」

「仕掛けってなんだよ!」

「それを今考えているの!」

 コータとカレンの言い争いを聞き流しながら俺は改めて試練の門番のHPを見る。

 俺達の攻撃はほとんどが通用せず、激しい反撃が返ってきていた。

 だが、()()()()なのだ。

 全ての攻撃が通らなかった訳ではなく、わずかだがHPが減っていた。

 ダメージが入ったのはコータの投げた短剣。しかし、もう一度試してみるとダメージは通らず激しい突きが返ってきた。

 カレンの言った通り、ダメージを与えるには何かしらのルールがあるのだろうが、そのルールがわからない。

「魔法なら!」

「待て!」

 考えている間に痺れを切らしたカレンが試練の門番に杖を向ける。

 咄嗟に制止の声をかけるが、それよりも早く火球が放たれる。

 火球は一直線に試練の門番に向かい、直撃する。

 だが、結果は同じ。ダメージは通らず、お返しとばかりに巨大な火球を放ってくる。

「やべぇ!カレン逃げろ!」

 コータが慌てて駆け寄ろうとするがあれでは間に合わない。

「すまん」

「キャッ」

 それよりも早く駆け寄った俺はカレンを抱き抱え、なんとか火球を回避する。

「あ、ありがと」

「ルールがわかるまでは攻撃を控えてくれ」

「う、うん」

 カレンを下ろし、試練の門番を観察する。

 攻撃直後の反撃は見た目にそぐわぬ俊敏さを持つが、それ以外の攻撃は見た目通り鈍重だ。

 となると、あの反撃はルールを外れたペナルティのようなものなのかもしれないな。

「ユーナ!」

 時間をかければ俺でもわかるかもしれないが、他にできる奴がいるなら任せればいい。こういうのはユーナの領分だ。

「だいたいわかったよ」

「流石だな」

 試練の門番は門番という特性故か距離を取ると追いかけてこない。その特性を利用して俺達はユーナの元に集まった。

「試練の門番で気になる事はないかな?」

 集まった俺達にユーナがそう問いかけてくる。

「気になる事?なんかあるか?」

「うーん、色々あるけど……」

「顔の部分にある球の色か?」

 俺の言葉にユーナがニヤリと笑う。

 試練の門番に視線を向けると、およそ三秒間隔で緑色の球が青色に、そして黄色、赤色と変わり、また緑色に戻った。

「マジか!全然気づかなかった!」

「え、本当に?」

「カレンは気づいてたのか?」

「そりゃ、あれだけ目立っていれば」

 あれが何か関係があるというのは予想がついていたが、どう関係するのかまではわからなかった。

「なら、ダメージが通った時の球の色は覚えているかな?」

「覚えてない!」

「流石にそこまでは……」

「たしか、黄色だったか?」

「その通りだよ」

「ふむ、そういう事か」

 つまり、色と攻撃の種類に特定の組み合わせがあってそれが一致した時だけダメージが通るという事だ。

「攻撃の種類は魔法、斬撃系、刺突系、打撃系の四つだろうね」

「黄色の時に通った攻撃は短剣の投擲だから刺突系か。たしか、俺が斬りつけた時に駄目だったのは赤と青。なら、斬撃系は緑という訳だ」

 魔法と打撃系がどちらの色と合うのかはまだわからないが、試してみればわかる。

「色が変わるまでの間隔が短いから魔法はたぶん当てられないと思う」

「ああ、カレンはサポートに回ってくれ。攻撃は俺とコータでやる」

「よっしゃ、任せとけ!」

「あ、待て!」

 止めるよりも早く駆け出したコータが試練の門番に向かっていく。

「斬撃は緑だったよな。たしか、赤の次だったはずだ!」

 短い攻撃のタイミングを逃すまいと赤の球が変わる瞬間目掛けて短剣を振るう。だが……。

「あれ?」

「チッ」

 変わったのは黄色。緑になると疑わずに攻撃を仕掛けたコータを止まる事ができず、そのまま直撃する。

 結果ダメージは通らず、激しい斬撃が返ってくる。

「ヤベッ!」

 わずかに遅れてコータに追いついた俺はそのまま襟を掴み、試練の門番を足場にして跳び上がる。

「わ、わりぃ」

 眼下を通り過ぎる斬撃をギリギリで回避したコータは肝を冷やした顔で謝ってきた。

「色が変わるのはランダムだ。予測するより見てから動いた方がいい」

「お、おう」

「俺がメインで戦う。コータもサポートに回ってくれ」

「わかった」

 頷いて離れていくコータを見送り、改めて試練の門番と向かい合った。

 役割を明確にすれば二人共トップクランの主力メンバー。そのサポートは的確で俺は攻撃だけに集中できる。

 緑の時には斬撃系アーツヘビースラッシュ。黄色の時には刺突系アーツトリプルスラスト。

 判明していなかった青と赤は試してみた結果、青が打撃系だったためスマッシュを適宜(てきぎ)見極めて叩き込んでいく。

 特性上連続で攻撃を当てられないため一撃の威力を重視する必要がある。

 そのため、アーツメインの攻撃になるがアーツ発動後は隙ができる。それを補うのがコータとカレンだ。

 試練の門番はヘイトに関係なくルールを外れた相手に反撃する特性がある。それを利用して攻撃を引きつけてくれるのだ。

 距離がある状態で何が来るのかわかっていれば二人なら十分回避できる。

 そうして三人が役割を果たし、試練の門番へダメージを積み重ねていった。

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