決勝:ロータスVSジークフリート①
◇◆◇◆◇◆
『この試合も激しい闘いでしたね。ラピスさんは今の試合どう思いましたか?』
『そうッスね。途中、ヴェントさんが戸惑ったように動きが鈍る部分があったッス。何をしたのか気になるッスね』
『たしかに、ありましたね。傍目からは何かしたようには見えなかったんですが、ロータス選手が何かをしたという事なのでしょうか?』
『そうだと思うッスよ。見ただけじゃわからない何か。ふふ、興味が尽きないッスね。自分、益々ファンになったッス』
「その辺りがロータスの強みね。一瞬で近づいたように見せる技術。相手の死角に入り込む技術。こうして傍目からじゃ何をしたのかわからないわ」
「対面していたとしてもわからないと思いますけど。相手の人も何をされたのかわかっていませんでしたし」
「それでも、即座に全方位攻撃に切り替えたのはいい判断だったわ。その後、守りに回るのは不利だと判断して攻勢に出たのは流石ね」
あれには一矢報いようという強い意志を感じた。
ロータスはその程度の感情論で勝てる甘い相手ではないのだけれど。
「残すは決勝戦だけだねぇ」
「そうね」
これで誰が最強か決まる。
「勝ちなさいよ、ロータス」
◇◆◇◆◇◆
「静かだな」
誰もいなくなった控え室で俺は一人その時を待っていた。
最初は四人いたが、一回戦で一人減り、準決勝で二人減って今では俺一人だ。
賑やかだったのもあって少し寂しくもある。
まあ、それもあと少しの時間だけだ。じきに決勝が始まる。相手は因縁のある相手、ジークフリート。
「マーネの言った通りになったな」
決勝で待っていろ。決勝で叩き潰す。まさにその言葉通りの展開だ。
「これもマーネの強運の力か?」
まあ、俺が勝たなければそれまでだが。
「そろそろ時間か」
『さあ!闘技大会もいよいよ大詰め!残すところ決勝戦だけとなりました!それでは決勝に残った二人を改めて紹介しましょう!まずはこの人!優勝候補筆頭にして現最強の男!一回戦でミナス選手を!準決勝でヨシアキ選手を撃破!危なげなく勝ち進んできました!そのまま優勝も手にするのか!竜殺し・ジークフリートォォォォォ!!』
騎乗槍と大盾を携え、向かい側からやってきたジークフリートが悠然とリングの上を進む。
『そして、対するはこの人!大会が始まる前は全くの無名!しかし、一回戦でローズ選手を!準決勝で優勝候補の一人だったヴェント選手を撃破!しかも、一撃もくらわない完勝!もはやこの人の実力を疑う人はいないでしょう!最強の挑戦者!無名の剣士・ロータスゥゥゥゥゥ!!』
自分の紹介を聞きながら俺はリングを進み、一定の距離を取って立ち止まる。
「本当にここまで上がってくるとは思っていなかった」
「なんとかな」
「謙遜はよせ。たしかに俺は愚かだったようだ。お前の力を見誤っていたのだからな」
そういえば、元々はジークフリートが俺達に対して侮った発言をした事にマーネがキレたのが始まりだったな。
「ロータスといったか。魔女王と共に俺達のクランに入らないか?お前が言えば魔女王も納得するだろう」
ふむ、悪意の類は感じない。どうやら、純粋に勧誘しているようだ。
だが、それを相手の都合を考えずにやるから誤解されてしまうのだろう。
「悪いが断らせてもらう」
「何故だ?」
「俺は今の仲間達といるのが気に入っているんだ。これからもマーネ達と離れる気はない」
「そうか。だが、約束では俺が勝てば魔女王は俺達のクランに入るという話だったな」
「そうだな。だから俺は負けない。勝つのは俺だ」
俺は腰の蓮華を抜き、その切っ先をジークフリートに向けた。
「いいや、勝つのは俺だ」
ジークフリートは騎乗槍と大盾を構え、腰を落とす。
『両者激しく火花を散らしています!勝つのはいったいどちらか!決勝戦、ロータス対ジークフリート!始め!』




