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悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される  作者: ぷにちゃん
第7章 仮面の下の素顔
91/225

1. 乙女ゲームの恋愛事情

本日、

小説6巻&コミック1巻が発売です~!

どうぞよろしくお願いいたします。

 妖精に愛されている大国、マリンフォレスト。

 普段なら太陽の光が降り注ぎ心地よいけれど、今はしんしんと雪が降り冬の訪れを告げていた。そんなにたくさん積もることはないけれど、小さな雪だるまを作るくらいはできるだろう。


 ティアラローズは自室の窓から外を見て、「冷え込むはずね」と呟いた。


「冬っていうと、チョコレートが食べたくなる季節ね……!」


 こたつがあればアイスクリームも食べたいと考えるけれど、残念ながらこの世界にこたつはない。なので、冬の季節になるとコンビニなどでよく季節限定のチョコレートを思い出して食べたくなるのだ。

 指を折りながら食べたいチョコレートの種類をあげているティアラローズに、ソファに座っていたアクアスティードと紅茶の準備をしていたフィリーネが笑う。


「しばらくデザートはチョコレートかな?」

「アクア様! 冬は食べたくなってしまうんです」


 からかう様子のアクアスティードに、ティアラローズは苦笑する。


「紅茶を淹れましたから、ゆっくりしてください。あまり窓の近くにいると、風邪を引いてしまいます」

「そうね。ありがとう、フィリーネ」


 アクアスティードの隣に腰かけて、温かい紅茶を口に含む。

 ふうとひとつ息をついて、こてんとアクアスティードの肩に寄りかかった。


 彼女は、ティアラローズ・ラピス・マリンフォレスト。

 ふわりと揺れるハニーピンクの髪はとても愛らしく、穏やかな笑顔は誰もを惹きつける。

 マリンフォレストの隣に位置するラピスラズリ王国からここへ嫁いできた、ゲーム『ラピスラズリの指輪』の悪役令嬢だ。


「どうしたの、ティアラ。甘えてる?」

「少し冷えてしまったので、アクア様でぬくもろうかと思って」

「……またそんな可愛いことを言って」


 アクアスティードはそう言って、肩に預けられたティアラローズの頭を優しく撫でた。


 彼女の夫であり、マリンフォレストの国王。

 アクアスティード・マリンフォレスト。

 ダークブルーの髪に、金色の瞳。その身に宿す力は強大で、星空の王として妖精王とともにこの国を支えているのだ。

 冷静で厳しいけれど、ティアラローズには甘いという一面も持つ。


 そんな二人の様子を微笑ましく見ていたのは、ティアラローズの侍女のフィリーネだ。

 何事にもティアラローズを第一に考え、小さなころから仕えてくれている。


「すぐにチョコレートをご用意はできませんが、チョコレートを使ったクッキーでしたらご用意出来ますよ」

「本当? 嬉しい!」


 フィリーネがそう告げると、ティアラローズはぱあっと顔を輝かせた。

 ティアラローズは乙女ゲームとスイーツが大好きで、普段からたくさんのお菓子などが贈り物として彼女の下へ届けられている。


 食べ過ぎると太ってしまうという懸念はあるが、そこは運動やストレッチをすることでどうにかしたいところだ。

 フィリーネがチョコレートクッキーを用意するためにいったん下がると、「そういえば」とアクアスティードが話をきりだした。


「ここから南西の方にある、サンドローズという国は知っている?」

「サンドローズですか? もちろん知っています」


 アクアスティードの言葉に頷いて、ティアラローズはサンドローズの情報を思い浮かべる。

 マリンフォレストに負けないほどの領土を有している大帝国だが、その国土の半分は砂漠になっている灼熱の国だ。けれど、砂漠の中に点在するオアシスはとても美しい作りになっていて、自然の神秘を見ることが出来ると評判がいい。

 もしここからサンドローズへ行こうとすると、馬車を使って最低でも片道二ヶ月はかかるだろう。


 ――そういえば、恋愛が盛んな国だと本で読んだことがある。


「確か、一夫多妻制でしたよね。マリンフォレストとは、大きく文化も違いそうですね」

「さすがティアラ、詳しいね」

「いえ、そんな……」


 けれど、いったいサンドローズがどうしたのだろうとティアラローズは首を傾げる。


「実は取引を持ちかけられてね。なんでも、ティアラローズの花を欲しいみたいだ」

「花をですか?」


 予想していなかった言葉を聞いて、ティアラローズはきょとんとする。まさか、普段関りのない国からマリンフォレストの国花が欲しいと言われるなんて。

 〝ティアラローズの花〟は、ティアラローズの魔力で育ち咲いた花だ。国民たちからとても大切にされていて、街には花が溢れている。

 ただ、少しだけ手入れが難しいのだけれど――そこは、森の妖精たちがせっせとお世話をしてくれているので問題はない。


 なるほどと思うティアラローズだが、サンドローズで育つだろうかと不安に思う。

 もしも、王妃であるティアラローズの名がついた花を贈り枯れてしまうようなことがあったら……両国ともに、気まずくなってしまうのではないだろうか。

 かといって、国花を切り花として贈るのもよろしくはないだろう。鉢よりも長持ちをしないし、そもそもサンドローズまで枯れずに持ちこたえるとも思わない。


 などなどのことを考えると、正直……微妙だなと思ってしまう。


「やっぱり、花をサンドローズへというのは難しいか」

「……そうですね。向こうの国にも森の妖精がいればいいのですが、いませんから」

「うん。サンドローズには、丁重に断りを入れよう」


 アクアスティードはそう言って、ティアラローズの髪に指を絡めた。遊ぶようなそのしぐさにティアラローズは笑い、「くすぐったいです」と告げる。


「でも、花をほしいなんて……。どうせなら、マリンフォレストのお菓子を贈ってサンドローズでも流行ってくれたらいいのですけど」

「ティアラらしいね」


 花をはやらせるのもいいけれど、スイーツを! と、ティアラローズが力説する。

 けれど、確かにアクアスティードもそれは疑問に思うところだ。実物の花を見て欲しがるならわかるけれど、サンドローズの王族がマリンフォレストへ訪問したことはない。


「ああ、でも……」

「?」

「もしかしたら、女性へのプレゼントかもしれないね」

「恋愛大国、ですからね」


 それならしっくりくるなと、ティアラローズも思う。


「でも、身分がないわけではないですよね?」

「サンドローズ帝国は、皇帝が一人いて……その下には貴族がいるね。皇帝は、側室が五人いるって聞いたよ」

「五人……」


 アクアスティードの話を聞き、ティアラローズは顔をしかめる。

 一対一の恋愛が基本であるティアラローズは、自分のほかに奥さんがそんなにいたら絶対に嫌だと断言出来る。


 ――ちゃらそうな皇帝だ。


 会ったことはないけれど、間違いなくちゃらいのだろう。

 側室同士の争いもありそうだし、人間関係はどろどろしていそうだ。


「ああでも、側室側も家の身分によって優劣が決まるのでしょうね」

「貴族もいるけれど、平民から選ばれた側室もいるよ」

「!」


 泥沼を想像していたティアラローズだが、アクアスティードの言葉を聞いて目を見開く。

 マリンフォレストやラピスラズリでは、王族との結婚には令嬢の身分が必要になる。けれど、サンドローズにはそれが必要ないようだ。


 ――つまり、自由恋愛も出来るのかな?


 一夫多妻は嫌だけれど、その点に関しては好感が持てる。

 ティアラローズの雰囲気が変わったことに気付いたアクアスティードは、「何か気になる?」と声をかけた。


「政略結婚だけではなくて、そういう風に自由に恋愛をして結婚をする文化はいいなと思って」

「ティアラが暮らしていた日本という場所も、そういうところだと言っていたね」

「はい。血筋を尊びたいのも……確かにわかるんですけどね」


 こればかりは、難しい問題だ。


 ――でも、やっぱり乙女ゲームということを考えると……。


 正当な血筋のキャラなんて、乙女ゲームでは鉄板の人気要素になる。でも、実際自分の身の回りで同じようなことが起きていれば話は別なわけで……。

 ティアラローズの周囲で政略結婚となると、オリヴィア、アイシラあたりだろうか。エリオットは貴族ではないけれど、貴族の令嬢を好きになってしまったらきっと大変だろう。


「チョコレートクッキーをお持ちいたしました」

「ありがとう、フィリーネ」


 考え込んでいると、フィリーネがチョコレートクッキーを持ってきてくれた。けれど、その表情はどこか元気がないように見える。

 先ほどまでは、普段通りだったのに。


 ――準備に時間がかかっていたし、もしかして何かあった?


 けれど、アクアスティードがいるまえで「どうしたの?」と聞くわけにもいかない。

 命令のようになってしまい、フィリーネを困らせてしまうだろう。


「クッキーと一緒に、ホットミルクもお持ちしました。砂糖などは入れていませんが、どうなさいますか?」

「わ、温まりそう。クッキーがあるから、そのままでいいわ」

「はい」


 ティアラローズの言葉にアクアスティードも頷いて、ホットミルクを受け取る。雪の日に温かい室内でホットミルクとスイーツとは、なんて贅沢なのだろう。


 フィリーネはにこにこ笑顔のティアラローズに、頬を緩める。

 そのまま窓際に行き、冷え込んでしまう前にとカーテンに手をかける。そしてふいに、その雪が積もり始めていることに気付いた。


「ティアラローズ様、アクアスティード陛下、雪が積もってきたみたいです」

「本当? わたくしがマリンフォレストへ来てから、雪が積もった年はなかったのに」

「温暖な気候だから、雪が積もることはまずないからね。珍しい」


 ティアラローズとアクアスティードも立ち上がり、窓から外を見る。


「わあ、すごい! かまくらを作って中でチーズフォンデュしたら楽しそう……」

「かまくら?」


 ティアラローズのはしゃぐ声に、アクアスティードは首を傾げた。


「雪で作る洞窟のような家のことです。本当は、中でお鍋を食べたりするんですよ」

「へえ……。面白いね」


 雪を目で楽しんでからソファへ戻ると、窓に触れていた指先が少し冷えてしまった。ティアラローズが思わず吐息で温めようとすると、その手をアクアスティードに取られてしまった。

 反論する余地を与えられず、ちゅっとアクアスティードの唇がティアラローズの指先に触れる。


「……っ! アクア様」

「ティアラの指先、冷たいね」


 くすりと笑い、アクアスティードはティアラローズの手に頬を摺り寄せる。


「アクア様の頬は、あったかいです」


 恥ずかしくなりながらも、ティアラローズは微笑む。そのまま触れたアクアスティードの頬を指先でくすぐってみると、アクアスティードが笑う。


「くすぐったい」

「くすぐってますから」

「なら、私もお返しさせてもらおうかな?」

「えっ!」


 アクアスティードの言葉を聞いて、ティアラローズはぱっと手をアクアスティードから離そうとして――けれど、アクアスティードにがっちり掴まれていて逃げることが出来ない。

 ティアラローズはぎゅっとアクアスティードに抱きしめられてしまい、観念する。


「アクア様の指先も冷たいので、わたくしが温めてあげます」

「ありがとう」


 ティアラローズの申し出にくすりと笑い、アクアスティードはその頬に優しくキスをした。

毎週金曜日に、のんびり更新していこうと思っています。

コミックも無料掲載などありますので、お楽しみいただけると嬉しいです!


◆悪役令嬢、ビーズログコミックさんのCMにちょっと載っています~!

アクアが喋っててふおっとなりました。

https://www.youtube.com/watch?v=bFxUalYiqQY


また、ニコニコ静画さんではティアラローズとアクアスティードにデートしてほしい場所!の結果&イラスト発表をしています。

とても可愛いので、ぜひ見てみてください~!

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