8話:ガチ勢VSエンジョイ勢 PART1
朝に話していたとおり、放課後は琥珀宅にてゲーム大会を開催。
夏彦、未仔、琥珀の3人がプレイしているゲームは、4人の生存者と1人の殺人鬼に別れてプレイするサバイバルホラーゲーム。未仔が初めて夏彦と一緒に観た実況動画と同じゲームだ。
生存者となった夏彦と未仔は扉から脱出すべく、殺人鬼と化した琥珀は生存者を抹殺すべく、各々が自身のスマホと睨めっこし、ゲームの世界へと完全に入り込んでいた。
舞台は薄暗い廃校。
「よし! 修理完了!」
夏彦が操るキャラクターが、最後の発電機の修理を終える。
あとは通電した扉から脱出するだけ。
なのだが――、
「ナツ、見~~~っけ♪」
「ひっ!」
廊下からヌッ、と殺人鬼出現。
2メートルはあるであろう筋骨隆々な巨躯に、身の丈ほどある大鉈を軽々しく握り締めた怪物。何よりも不気味なのは、頭部をすっぽり覆う三角形の兜だろう。
通称、三角様。
琥珀お気に入りのキャラである。
「ひ、ひぃぃぃいぃ~~~~! こ、殺される!」
いつまでも教室に残っていれば処られる。夏彦は琥珀と反対の出入り口から廊下へと飛び出し、そのまま猛ダッシュ。
「ひゃははははは! せやせや! 頑張って逃げんかい!」
笑い声を上げつつ、サイコなパス女が弱者を追いかける。
逃げ惑う最中にも、仲間『だった』生存者が、身体を真っ二つされて床に転がっていたり、フックに吊られてピクリとも動かなくなっていたり。夏彦と未仔以外の生存者は既にゲームオーバー。
夏彦もまたリーチが掛かっている状況で、あと1回でもダウンしてしまえば、ほぼほぼ詰みにまで追い込まれていた。
追い込まれているというより、弄ばれているという表現のほうが近しいのかもしれない。
それくらい、夏彦たちと琥珀の力量は火を見るより明らか。
夏彦が背後から迫る琥珀を怯ませるべく、遮蔽物をぶつけようとするのだが、
「!? は、外した!?」
「無駄無駄ぁ! そんな板っぱち、当たるわけないやろボケェ!」
寸でのところで停止して回避されたり、
「はぁ!? お前どっから湧いてきた!?」
「え? ウチが発見したバグスポットからやけど」
「当たり前に言うんじゃねえ!」
生存者さえ通れない隙間から、無理矢理出てきたり、
「な、何でこの場所に隠れてるって分かった!?」
「その場所、確かに見えづらいけど、スマホの明るさ設定高めたら透け透けやで」
「新しいステージなのに、どんだけ把握してんだよ!」
「新しいステージ? アホか。もう5日も前の話やん」
「価値観の違いが怖い!」
情弱な人間は、知識を有す人間に搾取される。
それは学校生活や社会生活だけでなく、ゲームの世界でも御多分に漏れず。
痺れを切らした夏彦は、思い切って2階の窓から中庭へと飛び降りる。
「そら悪手やわ」
着地間際、一瞬の硬直時間の合間。同じく降りてきた琥珀の強烈な一振りが、夏彦の背中をザックリ。そのまま地面にばったり。
「ぐえっ……! む、無念……」
「はい♪ ナツお疲れさ~ん♪」
鼻歌交じりの琥珀がダウンした夏彦を軽々担ぐと、近場にあるフック目指して移動開始。あとはフックに吊るだけの簡単なお仕事。
「チクショウ……! 今回こそ脱出できると思ったのに……!」
「本当弱いのう。ウチ、何の能力も装備してへんで?」
「お前が強すぎなんだよ! てか、ゲームは一日30分だろ! お前どんだけの犠牲払ったらそんなに強くなれんだよ!」
「ノンノンノン。犠牲と思っとるうちは強くなれんで」
「志がプロゲーマーの域……」
ついには処刑場であるフックが目の前に。
「ほれナツ。最後に言い残す言葉はあるか?」
「覚えとけコノヤロウ! 次生まれ変わったときは、絶対脱出してやる!」
「その言葉、さっき死んだときも言っとったな」
ちなみにその前も言っていたのだが、琥珀にとっては栓無き事である。
「ほな、さいなら」
夏彦が地獄へ召される、寸でのところだった。
「隙アリですっ!!!」
夏彦は驚きを隠せずにはいられない。近場のロッカーから未仔が飛び出してきたから。
三角様。
映画で始めて観たときは、チビリそうやった。
懐かC。
おっぱいフレンズは、フォローの程、よろしくどーぞ。
Twitterもやってますʅ(◔౪◔ ) ʃ





