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43話:破局? それとも……? PART3

「な、何で未仔ちゃんが謝るの?」

「……えっとね。ナツ君と離れた後、やっぱりおかしいなと思って、こっそり私だけジャグジープールに戻ってみたの」


 初耳情報に驚く夏彦に、尚も未仔は申し訳なさげに言葉を紡いでいく。


「ナツ君や伊豆見先輩はいなかったんだけど、ナツ君クラスの先輩たちはまだ残ってて、真相を教えてくれたから」


 涼花たちが弁明してくれたのだろう。


「『勘違いさせてごめんね。でも、傘井君たちとは偶然ココで出会っただけだよ』って」

「……その話、未仔ちゃんは信じてくれるの?」

「信じるよ」


 即答だった。

 未仔はゆっくりと微笑みつつ言うのだ。


「理由無しに私を傷付けるようなこと、ナツ君は絶対しないもん」

「っ!」


 夏彦の心臓がまたしても強く締め付けられる。

 今回は悲しさからくるものではない。彼女の健気さ、愛しさからくる心苦しさだった。

 未仔の誠実な答えに対し、夏彦は何と答えるのだろうか。


「……よ」

「よ?」

「良かった~~~~~…………!」

「ナ、ナツ君?」


 腰が抜けたと言えるくらい。安堵の息を盛大に洩らしつつ、夏彦はカーペットへと倒れ込んでしまう。

 心配そうに顔を覗き込んでくる未仔に、本音を打ち明けていく。


「ずっと最悪なことばかり考えてたんだ。『もう別れよう』と言われちゃうかもって」

「!? そんなこと――、」

「未仔ちゃんを悲しませることをしちゃったのは事実だから。彼氏失格な行動だよ」


 いつまでも仰向けになっている場合でないし、自分ばかり安堵している場合でもない。

 誠心誠意きちんと謝るべく、夏彦が立ち上がろうとする。


 そうは問屋みこが卸さない。


「失格なんかじゃないよ!」

「うおっ!?」


 立ち上がろうとする夏彦に、感極まった未仔が飛びついてくる。


「ナツ君は私の理想の彼氏だもん!」

「未仔ちゃん……」

「ずっと大好きなんだもん!」


 尻もちづく夏彦にまたがり、対面状態で思いの丈をぶつける姿は真剣そのもの。


『大好きだから理想』


 具体的でないし、根拠にも乏しい。第三者からすれば何も分からない。

 けれど、夏彦には彼女の熱い気持ちが目一杯伝わって来る。

 当たり前だ。夏彦は第三者ではなく、未仔の彼氏なのだから。

 理想の彼女が、自分のことを理想の彼氏と言ってくれている。


 だとすれば、答えは1つしかない。


「俺、未仔ちゃんの理想の彼氏でい続けるために、これからも頑張るよ」

「!」


 瞳を大きく見開く未仔の頭を、夏彦の手がゆっくりと何度も何度も撫で続ける。「これからも、よろしくお願いします」という意味を込めて。


「ナツ君は私のこと許しくれるの……?」

「全く気にしてないって。そもそもの話、未仔ちゃんは何も悪いことしてないでしょ」

「そ、そんなことないよ! ナツ君をココまで追い詰めちゃったから!」

「いやいやいや! それは俺の自業自得だから!」

「違うよっ! 私のことを最優先に考えてくれたからだもん!」

「いいや俺が悪い!」

「ううん私が悪いの!」

「……」

「……」



「ははは!」「ふふっ!」



 あまりにも馬鹿らしい罪の引き受け合いに、2人は声を大にして笑い合ってしまう。

 なんと不毛な時間だ。お互いは元から怒ってなどいなかったのだから。

 互いに笑顔が戻れば、それはバカップル復活の合図。

 ずっと甘えたくて仕方なかったのだろう。未仔は夏彦に跨ったまま、ピットリと擦り寄るかのように抱き着いてくる。甘く華やかな香り、柔らかくて温かな感触が、これでもかというくらい夏彦を幸せへと誘う。


「えへへ……♪ 安心したら、ギュウしたくなっちゃった」

「お、お恥ずかしながら、全く同じこと考えてました……」


 恥ずかしい者同士万歳と、コアラと化した未仔が夏彦を木に見立ててハグし続ける。

 そんな甘えん坊なミコアラに、夏彦はネタばらし。


「俺、草次と一緒にレジャープールでバイトしてたんだ」

「バイト?」

「うん。未仔ちゃんに相応しい男になるためには、社会経験を積むことも大事だなって」


 少し前の自分同様、初耳情報に目を丸くする未仔に、夏彦は照れ気味に笑ってしまう。


「あとさ。来週の夏祭りデートを最大限に楽しんでもらうために、少しでも準備資金を蓄えたいなって」

「! ……ということは、ナツ君は私のためにもバイトしてくれてたってこと?」

「あはは……。ネタばらしになっちゃうけど、そういうことかも」


 格好がつかず申し訳ない、と夏彦は思う。

 けれど、未仔は違う。


「み、未仔ちゃん!? ……んっ――、」


 驚く隙も与えてなるものかと、未仔が夏彦へと唇を重ね合わせてくる。

 自分を喜ばせる夏彦が悪い、溢れ出る愛情を受け取ってもらわないと困ると、小さな体で無我夢中にキスし続ける。

 爪先から頭のてっぺんまで、彼女の愛情で満たされていく。未仔でいっぱい。

 唇を離し、少し呼吸を乱しつつ、いつもの照れ混じりの笑みで教えてくれる。


「えへへ……♪ やっぱりナツ君は、私の理想の彼氏さんです♪」


 この後、夏彦が理想の彼女を抱きしめ直したり、キスし直したのは言うまでもなく。

 仲直り後のイチャイチャが激しく燃え上がるのは、ご定番である。

 もとより、この2人は喧嘩などしていなかったわけだが。







というわけで、夏彦と未仔が元の仲良しカップルに。

喧嘩するほど仲が良いともいうけど、カップルそれぞれですよね。


新シーズンも最後の章にいよいよ突入!



【暇つぶしにどうぞ】

『構って新卒ちゃん』の連載版も不定期投稿をスタートしたので、暇が有り余ッティな方は是非是非。

日本酒好きの先輩LOVEな後輩ヒロインです。( ̄^ ̄)ゞ



-作品はコチラから-

https://book1.adouzi.eu.org/n6108gr/

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『おっぱい揉みたい』って叫んだら、妹の友達と付き合うことになりました。3巻書影
― 新着の感想 ―
[一言] チクショォォォォ! 破局かと思ってワクテカしてたのにっ!! 爆発してしまえっ!(´༎ຶ۝༎ຶ)
[一言] ゴファァッッ。砂糖吐くの耐えるつもりが耐えられませんでした。未仔ちゃんそこでキスするのは反則!
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