破壊者を探して
「どこだ、陰陽寺……どこにいるんだ……」
校内を走り回りながら悠希は大雅の居場所を探す。
そもそも教室にいない時点で、大雅がどこか別の場所で爆発装置を起動させていたことは明らかだった。
だが、いざ飛び出してみると、大雅がどこにいるのか全く見当がつかない。
ここ数日もあまり学校に来ていなかったから大雅だけが居座っている場所などもわからない。
そんな場所などあるのだろうか。
「くそっ……もっと計画的にするべきだったな……。あいつがどこにいるのかさっぱりわかんねぇ」
悠希は手当たり次第教室を見て回った。
だが大雅の姿は一向に見つけられない。
「学校にはいるよな……靴もあったし」
実は悠希は大雅を探す前に、ひとまず下駄箱に行って大雅が学校にいることを確認していたのだ。
悠希が確認しに行った時にはまだ靴は入れられていて、上靴だけがない状態だった。
「俺たちが教室にいる間に逃げたのか……?」
悠希は不安になり、急ブレーキをかけて廊下を曲がると、階段を駆け下り下駄箱の方へ走って行った。
下駄箱に着くと、息を切らせながら大雅の靴の有無を調べていく。
「あ、い、う、え、お……あった! 陰陽寺、まだいるな!」
大雅の下駄箱に靴はまだ残されていた。
悠希は安堵のため息をつくと、すぐさま大雅を探しに向かった。
※※※※※※※※※※
その頃、龍斗と茜は、他学年の先生に連れられて学校の近くの公民館に足を運んでいた。
玄関には無数の靴が散乱していてどれが自分のものかわからなくなるくらいだった。
それでも仕方ないと腹をくくり、二人は靴を脱いで綺麗に並べた後、階段を上って生徒たちが二列に並んでいる大広間に向かった。
ドアを開けると何百という視線を浴びる。
だがそんなことを気にしている場合ではない。
龍斗と茜はそれぞれ自分が並ぶべき位置に腰を下ろした。
二人を見て仲良しの生徒たちがそれぞれ声をかける。
「おい、龍斗、岸と二人で来てデートでもしてたのか?」
その男子生徒はニヤニヤしながら龍斗の二の腕を肘で小突く。
「ち、違ぇよバカ! んなわけねぇだろ!」
龍斗は慌てて否定するが、そんな様子がたまらなく面白いらしく、周りからどっと笑いが起こる。
思わず顔を赤らめた龍斗だが、それは茜も同じだった。
これで根も葉もない噂を流されたらどうしよう……。
何よりも早くその心配が茜の頭に浮かんだ。
勿論、龍斗のことは嫌いではない。
だがそれは友達として仲良くしているのであって、そういう関係を意識してのことではなかった。
「ねぇねぇ、ぶっちゃけどうなの?」
茜の隣に座っていた女子生徒がこっそり茜に尋ねた。
茜は手と首を必死に横に振った。
「何もないよ! 本当に!」
「へぇ〜、本当かなぁ」
女子生徒は信じていないようだった。
(何でよ、何でこうなるの……?こんな状況で目立ちたくなかったのに……)
茜は膝を抱えて頭を埋める。
恥ずかしさで顔が火照っている。
身体中がすごく熱かった。
だが今はそんなことを考えている場合ではない。
悠希を置いてきてしまった。
それは勿論、彼を信用してのことだったがそれでもやっぱり心配で不安だ。
もし何かあったら置いてきてしまった自分の責任だ。
何より悠希に申し訳ない。
一刻も早くここに来てほしかった。
悠希を信じて置いて行ったことを、茜はひどく後悔した。
そして祈るように両手を握り、ドアの方を見つめた。
(お願い、悠希! 戻ってきて……!)
※※※※※※※※※
「どこだ……?」
悠希は息を切らしながら、学校中を走り回って大雅を探していた。
さっきからどれくらいの時間が経っただろうか。
ふと、窓から外を見ると真っ青だった空がほんのりピンク色になっていた。
もうすぐ日が暮れる……。
そう思った。
「まずいな、早く陰陽寺を見つけ出して公民館に行かないと……」
ここで少し悠希は立ち止まった。
これ以上走ると息が続かなくなるかもしれない。
ちゃんと深呼吸をしなければ……。
悠希は両手を膝小僧に置き、少しだけ体を丸めて息を整えた。
汗が、大量の汗が、ボタボタととめどなく床に滴り落ちている。
「どこにいるんだ、ったく……」
悠希は思わず天を仰いだ。
このまま見つからずに永遠に探し続けると思うと気が遠くなる。
あれから奇跡的に爆発は起きていないが、いつまた起こるかわからない。
早く止めなければ、学校が潰されてしまう。
悠希たちの、青春が。
天を仰いだ先に悠希の目に飛び込んできたのは、屋上に続く階段だった。
「そうか! 屋上だ!」
悠希は叫びそうになるのを抑えて、階段を見据える。
この先に、これまでたくさんの学校を焼き、罪のない生徒たちを虐殺してきた大雅がいると思うと、やはり通常の心持ちではいられない。
生きるか、死ぬか。成功するか、失敗するか。
この二つしか道はない。
だが間違っても、失敗して死ぬ道に進んではいけない。
それだけは絶対に避けなければならない。
ここまで残って大雅を探し続けてきた。
その努力が水の泡になってしまう。
それだけは、それだけは、絶対に嫌だ!
「よし、行くぞ」
教室を出るときよりも心臓の鼓動が早い。
いよいよだ。悠希次第で未来が、運命が変わるのだ。
「絶対に……止める!」
悠希は意を決して、屋上へ続く階段を一段一段しっかりと踏みしめて上っていった。
その目にもう不安の色は見当たらなかった。




