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考えあっての

総合ユニーク3900人突破ありがとうございます!

 その後、森から色々な説明を受けた龍斗りゅうとは、自身の為に用意された白いベッドに腰を下ろしていた。


「なるほど。つまりは社会をより良くする為に発足したはずの組織が今ちょっと傾いてるってことですか」


「まぁ、簡単に纏めればそうだな。お前、なかなか飲み込み早いじゃねぇか」


 長ったらしい説明を受けても即座に状況を把握した龍斗に、森は脂肪たっぷりの顎を太い指で撫でながら言った。


 森の言う通り、一度に沢山の説明を受けた割に龍斗は現在の状況をしっかりと理解出来ていた。


「ややこしい話がどうも割に合わないんで、馬鹿な俺でも分かりやすいように勝手に纏めてるだけですよ」


 だが森という名の敵に塩を送られた龍斗にとっては、彼からの褒め言葉は嬉しいものではなかった。

 とは言え、森に放った言葉もまた事実なのに変わりは無い。

 軽く笑って流し、頭を掻きながら龍斗はそれに応じた。


「お前みたいに飲み込みの早い奴をスカウトするんだったぜ。あんな裏切り者なんぞ最初から切るべきだった」


 そう言う森の眉間にシワがより始める。

 自身を裏切った者達のことを思い出して腸が煮えくり返っているようだった。


 そんな森の態度を見て、龍斗は密かにその『裏切り者』が未央みおりんであることを察した。

 二人から組織を脱退した事は聞いていた。

 それに仮に彼女達の他に脱退者が居たとしても、森がわざわざ目の前の龍斗と比べて表情を曇らせることはないだろう。

 高校生の龍斗を見て『裏切り者』のことを思い出したのであれば、その対象者は同じ高校生の未央と凛であることはほぼ間違いない。


 暗い森の顔を覗き込むように、龍斗は意を決して尋ねた。


「もしかしてその裏切り者って俺と同じ高校生なんですか?」


 あえて二人の名前は出さない。

 森がどこまで龍斗達の関係を把握しているのかが分からないまま、安易に名前を出すのは危険だ。


 森は龍斗をちらりと見やってから頷いた。


「おうよ。全く使えねぇ野郎共だったぜ。ちょっと叱っただけで大事おおごとにするし、おまけにゃ組織辞めるだとよ。良い度胸してやがる。次に俺の視界に入ったらタダじゃおかねぇぞ……」


 気に入らなさそうに顎を撫で、独り言のように呟きながら徐々に怒りを募らせていく森。


 その目に怒りが芽生えているのを見て取って、龍斗は危機感を覚えた。

 この男は只者ではない。万一にも怒り心頭なんて事があれば何をしでかすか分からないような人間であることは一目瞭然だ。

 凛が組織の基地の路地裏に連れ込まれて脅迫まがいな行為を受けたというのも、やはり間違いない。森ならやりそうな事である。


(こいつ、想像してたよりもヤベェな……)


 俯いたまま顎を撫でるのを止めることのない森を見ながら、龍斗は森のただならぬ人間性を確信した。


(こんな奴が纏めてる組織なんてそもそもの時点で終わってるだろ……)


 夜だからというのもあるが、闇のように暗くて狭い部屋を見回しながら、龍斗はそう思った。


「ふぅ、悪ぃ悪ぃ。ちょっと気持ちの整理に時間がかかってな」


 やがて表情を緩めた森は、龍斗に微笑んで言った。


「心配すんな。別にお前を食って取ろうなんて思っちゃいねぇさ。ただ俺達相手じゃやりづらかったんでな。まぁ、気楽にしてくれや」


「あ、はい」


 右手を軽く振って龍斗の返事に応じ、森はドアノブを捻って部屋の外に出た後、がチャリと鍵を閉めた。


 ※※※※※※※※※※


 その後、龍斗を拘束している部屋を出た森を待ち構えていたように丸刈りの男が走り寄ってきた。


「森さん、あんなガキにぺらぺら喋って良かったんですか?」


 丸刈りは、森が龍斗にいとも簡単に組織の事や森自身について話していた事について心配でならない様子だった。


「大丈夫だ。俺だってそこん所はちゃんと考えてるさ」


 自分よりも背の高い丸刈りを見上げて、森はニヤリと笑う。


「高校生っていっても実質はまだガキだ。そんな奴、適当にそれっぽいこと喋って納得させてりゃ良いんだよ」


「あ、そ、そうですよね」


 森の言葉に、丸刈りは安心したように笑みを浮かべてペコペコと会釈をする。

 森はそんな部下の顔を覗き込むようにして、


「もしかして俺が何の考えも無しにべらべら喋ってたって思ってたのか? お前」


「い、いえ! 決してそんなつもりはありません」


 慌てて頭を下げて丸刈りは図星を否定した。


「素直な奴も嫌いじゃないぜ」


 笑いながら丸刈りの肩をトントンと叩いて、森は自身の部屋へと続く長い廊下を歩いていった。

 それに遅れを取る事なく、丸刈りも従う。

 その額には命の危機を感じた大量の汗が出ていた。


 ※※※※※※※※※※


 森と丸刈りが姿を消した後の部屋の中。

 龍斗は一人、考え込んでいた。


「さっきのあいつ、ヤバかったな。下手したら俺まで殺されそうな勢いだったぞ……」


『裏切り者』と口にした瞬間の森の表情が一瞬にして曇ったのを思い返しながらホッと息をつく。


「にしても、聞いた話と見た事とを照らし合わせてみても、ここにずっと居るべきじゃねぇな。いつ解放してくれるのかは知らねぇが、大人しくそれを待ってると間違いなく死ぬぞ」


 森から感じた背筋が凍るほどの殺気。

 あれをビンビンに感じ取ってしまえば、最早ここに居ることが適切な判断ではないとすぐに分かる。

 一刻も早くここから脱出しなければならない。


「しかし、どうすれば良い」


 次に考えるべきは脱出方法である。

 拘束者を置いておく組織として鍵が必須なのは当然だ。

 現に龍斗が拘束されているこの部屋も、さっき森が出ていく時に鍵の閉まる音がした。

 従って、ドアを蹴破っての脱出は不可能と考えるのが妥当だろう。


 龍斗は部屋を見回して何か脱出の助けになるものはないか探した。

 だが、流石に脱出に対する対策も万全に取られてあり、この部屋の中にベッドを除く物は何も置かれていない。


「……そうだ。このベッドがあるじゃねぇか」


 今、座っているベッドを見下ろして龍斗は呟いた。

 そして次に夜空が映る小窓に視線を移す。


「このベッドであの窓を割れば……」


 少し高い所にある小窓だが、身長170cm近い龍斗よりも長いベッドだ。不可能ではなさそうである。


 龍斗は立ち上がって、白いシーツがかかっているベッドに手をかけた。

【このはか劇場】


森「なぁ、俺、本当に余計なこと喋ってなかったよな?」


丸刈り「えっ!? 俺、森さんがあいつと喋ってる時は席外してたんで知らないですよ!? ていうか、森さんが『席外せ』って仰ったんじゃないですか」


森「だよなぁ。それは良いんだけどよ、ちょっと気になっちまって……」


丸刈り「大丈夫ですよ。いつでも証拠隠滅は出来るんですから」


森「そうやって銃向けられるとやっぱり怖いよなぁ」


丸刈り「えっ!? マジですか!? 森さんこういうの慣れてる方かと」


森「実はちょっと怖いんだよ。人に向ける分には何の躊躇もねぇんだが、自分が向けられるとなると……」


丸刈り「あぁ、前に麗華れいかに銃向けられた時、真面目に焦ってましたもんね」


森「お、おまっ、……み、見てた?」


丸刈り「はい。こっそりと拝見させて頂きました」


森「見てたんなら助けろよぉ! 結構怖かったんだぞ!?」



※一足先に【このはか劇場】追加しました。少しでも笑える所があれば本望なのですが……。

現在一話から順に追加しておりますので、興味のある方は覗いてみてくださると嬉しいです♪

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