第八十二話 破壊神が俺の下僕になりました
俺の中の俺じゃない部分が俺を侵略してくる。
「やっと会えたな元学年2位さんよぉ!」
「貴様は妾が封印したやろ、だから妾がトップや!」
「お前は俺から逃げただけだろうがよ! 白黒はっきりつけんぞコラァ!」
「上等ややったんぞオラァ」
俺は必死に抵抗したが、破壊神の名は飾りではないらしい。俺は身体を動かすことが出来なくなっていた。アルテミスと俺ではない俺が戦っている間、俺は何も出来なかった。俺じゃない俺がアルテミスをボコボコにしていた。だが、その戦いはすぐに終焉した。
「また君達の争いですか。私がいる限り大事にはさせませんよ」
割って入ったのは執事さんだった。破壊神とアルテミスを両腕で捕まえ、完全に動きを止めた。
「ま、まさか!」
「嘘やろ!?」
「あれは、先生なのじゃ!」
「今まで気付いていなかったんですね、君達もまだまだです。学年トップの争いも結構ですが、まだ見ぬ伏兵がいるかもしれませんよ? それに、学年でトップになったところで、この私には敵わないでしょう?」
「ぐっ、ならば今ここで!」
「私に掴まれた状態からどうするつもりですか」
「クソッ!」
俺は何が起こったかわからなかった。おそらくミツハたん以外のみんなもそうだろう。一番困惑していたのは魔王様だった。は? 魔王様? えっちょっ、一番困惑してんの俺だったわ。どうなってんの?
「なんで魔王様生きているんですか!?」
そう言おうとして声が出ないことに気付く。だが、魔王様は俺の気持ちを汲み取ってくれた。
「荒巻君、さっきやられたのは私の分身体だよ」
なっ!? そっかたしかに分身作れるとか言ってたな……。忘れてたわ……。
「それで執事さん? どうなってるのか説明してくれる?」
「申し訳ありません魔王様、私は執事などでは無かったのです」
「それってどういう……」
「全て説明致しましょう。ですが、まずは破壊神、あなたは荒巻様に身体の全権を委託しなさい」
「嫌に決まってんだろ!」
「へぇ? 嫌と言いましたか?」
執事さん……いや、神の先生なのか? とにかくその人が……いや、その神が、破壊神、つまり俺に向かって睨んできた。怖い。
「すいませんでした」
その瞬間、俺は身体が動かせるようになった。とりあえずよかった。
「荒巻様に……これはお願いなのですが、破壊神を従えてほしいのです」
「破壊神を従える!?」
「はい。こんなに危ないことを言うのは酷だと思っていますが、もしなにかされそうなら私が助けます。ですから、そこまで身の危険はないと思います。ですが、精神的にという面で言いますと、私にはどうすることも出来ませんので……」
「というか従えるって言ったって何をすればいいんですか?」
「破壊神をこき使ってくれればそれで構いません」
「は?」
いや、破壊神をこき使うって……。
「破壊神はあなたの身体でしか活動出来ません。ですので、例えば強敵が現れた際に破壊神に戦わせるとか、レベル上げをやらせておくとか色々出来ます。とりあえず1週間試してみてはくれませんか?」
「は、はあ。まあいいですけど……どうやって俺の身体を使わせたらいいんですか?」
「委託と言うと身体の全権を委託することが出来ます。何か特定の権利だけ委託することも出来るんですが……まあ今はいいです。とりあえず委託って言ってみてもらえますか?」
「わかりました。委託」
その瞬間、俺の身体を動かすことが出来なくなった。まるで自分をゲームのキャラとして見ているようだ。上から自分を見るっていう感じだな。なかなか慣れそうにない。
「俺はこいつにこき使われるのか!?」
「はい。まあ、荒巻様ならそんなに悪いようにはしないでしょう」
「俺もずっと見てきたけどよー、こいつ意外と悪いこと平気でしてたぞ? 盗賊団のアジトから金盗んできたりよー」
「あなたの何億倍もマシです」
「そりゃそうかもしれんがよー」
「荒巻様には申し訳ないですが、荒巻様がお亡くなりになったらその身体を自由に使えるんです。抜け出すことも出来るんです。それまでほんの数千年待つだけでしょう?」
「そうか……わかりました先生」
「よろしい」
盗賊団のアジトのやつはあれはゲームでもあるから仕方ないだろ? いや、たしかに全て盗んだのはアレだったかもしれないけどさー。あと、俺数千年も生きれねぇから。百年もったらいいほうだから。
「とりあえず荒巻様、回収って心の中で唱えてください。それで元に戻れます」
俺は心の中で回収と唱えた。すると、俺の身体はまた動くようになった。とりあえずすごい気持ち悪い。感覚が無くなるって怖いな。
「これで基本的には終わりです。まだまだ色々活用方法はありますが、とりあえず呆然としている魔王様や、他の方々にも説明をさせていただかなければならないのでね」
「ええ、わかってます」
俺もそこらへんすごく気になるしな。とにかく、破壊神が下僕として手に入ったのは棚からぼたもちだぜ!
『下僕だと!?』
あっ、破壊神にも心の中覗かれるのね。もうこの世界はそういうもんだと思うしかないか。破壊神が訂正しろとかなんとか喚いてるけど、まあ無視安定ですよね!




