表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/259

メイア嬢に関わる秘密

 夕食時に、私はメイア嬢の元へお茶を一緒に持って行った。


「あまり豪華なお食事ではなくて、申し訳ないのですが……」


 パンとスープにチーズ、焼いたチキンをという取り合わせは、前世の夕食と比べるとちょっと寂しい。主菜がチーズって感じだし。この世界での暮らしに慣れてしまったので、平気だけど。

 でも貴族令嬢なら、おそらくは前世基準の豊富なメニューを口にしているのではないだろうか。

 いやいや。これだけ細いのだから、普段から管理した食生活を送っていたのかも?

 と思っていたら、予想外な答えがきた。


「いいえ問題ありませんわ。わたくしのいつもの食事とそう変わりません。お恥ずかしい話ですけれど私、公爵家では厄介者で」


 そういえば、と私は思い出す。


「隠居していらしたと言ってましたが……」


 つい口にしてから、こんなストレートに聞いちゃいけなかったとうろたえる。

 マズイ。まだ若い女性が隠居なんていうのはおかしいなと思っていたけれど、そうなるには理由があるだろうし、きっと言いにくいことだろう。しかも公爵家では厄介者だとまで言っていたのに。


「すみません、立ち入ったことを言ってしまいました」


「いいえ、気になさらないでくださいユラさん。時々貴族の家ではあることですわ。後妻の子供だった私は、前妻の子である異母兄には良く思われていないのです。……というのも建前ですわね」


 そこでメイア嬢が小さく笑う。


「他にも事情があって、他所にお嫁へ行くにも難しいものですから、それならと別荘の一つを与えられてそこで暮らすようにと言われたのです」


 メイア嬢はじっと紅色のお茶を見つめた。


「使用人の数も限られましたし、食事のことについても市井の人よりは少し……という程度のものだけしか与えられない生活は、それほど嫌ではなかったのです。ただ、わたくしは何もするわけにはいかない自分が……」


 そこで言葉を一度止めたメイア嬢が、微笑んだ。


「冷めてしまう前に頂きますわね。どうぞユラさんもお食事をしていらしてください」


 そう言われて、私は部屋から下がることにした。

 食後、メイア嬢は早めに眠るようにオルヴェ先生に指導されて、夜が更けて間もないけれど就寝した。

 着替えの手伝いなどはいるのかと思いきや、それぐらいなら召使いが少ない生活で慣れていたからと微笑まれる。

 公爵令嬢という王家の流れをくむ家のお姫様だというのに、なんとも気の毒な話だ。


 その後私は、お茶を淹れて人を待つ。

 すると今までよりもずっと早い時間に、彼は現れた。


「邪魔をするぞ」


「団長様、お待ちしてました。それに邪魔じゃありませんよ」


 報告を聞きに来ると思って待っていたのに、邪魔も何もない。おかしいなと思ってそう言えば、団長様が苦笑いした。


「時間は知らせていなかったからな。一人になりたい時もあるだろうかと」


「大丈夫ですよ。夜はどこかに出歩いたりもしませんし、基本的に一人でお茶を淹れてるだけですから」


 喫茶店を始めても、お客さんがいない時間というのはある。フレイさんだって居ない時はあるし、イーヴァルさんすら顔を出さない時間も多い。一人の時間なら沢山ある。

 団長様は「そうか」と言いながら、定位置になりつつある席に座る。


「はっきりとは言えなかったが、メイア・アルマディール嬢はお前の目から見てどうだった? 仲間のように見えたか?」


「魔女かどうかってことですよね?」


 確認すると、団長様はうなずく。


「結論から言うと、魔女かどうか確認はとれませんでした。精霊を連れて行ったんですけれど、あまり興味がない様子で」


 ステータス画面にも、他人の情報って出ないし……。魔物も種別名が表示されるだけだもんね。


「なるほどな。今度はお前の得意なクッキーで聞いてみてくれ」


「そういえば……。明日焼きます」


 昨日のクッキーは全部無くなってしまったので、新たに焼かなければ。沢山あったのはソラにあげちゃったし。

 むしろソラを呼び出せばいいのかな? 1回呼び出すにつき、クッキー10個だっけ。

 明日以降用意するべき、お客さんに出すクッキーの数も合わせて考える。すると団長様がぽつりと言った。


「メイア嬢が、お前と楽しそうに話しているとオルヴェが言っていた」


「はい。失礼かもしれませんが、同年代の女性と話すのは久しぶりなので、私も楽しかったです」


 答えると、団長様が少し嬉しそうな表情になった。


「彼女も気の毒な人だ。すぐに居場所を移すとは思うが、それまでは優しくしてやってくれ」


 団長様が私にそう頼む。

 私は素直に不思議に思った。


「あの、なぜ婚約が上手くいかなかったのですか? お二人ともの間で、問題があったようではないみたいですし……それなら、と思ってしまったのですけれど」


 親族にも疎まれ、適当に嫁ぐわけにもいかずに数少ない召使いと別荘に押し込められているメイア嬢。彼女に穏やかな気持ちでいてほしいのなら、団長様がそのまま結婚する方が話が早いだろう。いくらでも自由に守れるはずだ。

 けれど婚約も上手くいかなかった。団長様もあまり関わりたくはないらしい様子。

 何の問題があったんだろうかと、気になるのは仕方ない……よね?


「気になるか?」


 団長様にそう言われて、私はやっぱり詮索しすぎたんだと思って慌てた。


「あの、団長様は私が従属してるご主人様ですしっ。そんな方が婚約って聞いたらちょっと意識しますよね? それにメイア嬢が、親族に疎まれて隠居なさってるっておっしゃってて……」


 言い訳を重ねた私は、団長様がちょっと顔をそらしたことに気づいた。しかも額に手をあてて、何か悩んでいる様子。


「ああああああ、疑問にお答えにならなくて大丈夫です団長様! 無理には聞きませんから!」


 慌ててわたわたと手を振って言ったのだけど。


「違う。そうじゃない……」


 少し呻くような声で団長様が言ってから、こちらを振り向いた。


「今のは気にするな。ただ頼むから、私と二人だけの時以外に、ご主人様だなんて呼び方はしないように。外聞が良くないだろう」


「大変申し訳ありませんでした……」


 なるほど。ご主人様呼びをしたことで、私のことを心配したというか……あれは呆れていたのか……。

 従属ときたら団長様はご主人様だろう、と思って言ってしまったが、言葉選びが悪かったようだ。


「あと……そうだな。メイア・アルマディールとの婚約のことについては、従属しているお前だから話せる。ユラ、お前に命じる。この後するメイアに関する話を決して他者に口にしてはならない」


 ぴりっと静電気が弾けたような感覚が首筋にあった。たぶんそれで、団長様との契約が発動したのだと思う。

 うなずいた私に、団長様が言った。


「彼女は公爵の娘ということになっているが、先代王の弟の子供だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ