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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました

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まずは城に帰ります

 精霊教会とは、あれだ。

 私の職名の決定を待ってくれずに、さっさと紅茶師と登録してくれた、司祭がいるあの教会である。


 そもそも教会は、精霊王を崇めている。

 神様もいるけれど、その神様に願いを届けてくれるのが精霊王ということになっているらしい。これはゲームでもそうだった。

 教会になら、何らかの精霊についての情報を得られるんだろうな。


 精霊といえば……。

 帰り路の間、どうしても気になったのは、あのプレイヤー然とした精霊達のことだった。

 あれは何だろう。

 もしかして、私が戦わなくても精霊達がプレイヤー役をやってくれるということだろうか。だとするとここは、ゲームに似ているのではなく、ゲームの世界ということに……。


 いやいやいや。

 ゲーム内世界なら、沢山のプレイヤーがいないとおかしい。

 精霊の数はそれほどじゃなかった。

 ……クエスト以外のレア魔物にたかっている姿は、まだ確認できてないけど。そもそも安全策をとってる私なので、そんな魔物を探しに行かないけども!


 だから今の所、精霊が本当にプレイヤー役を遂行しているのか確認しようがない。

 そもそも私がここに来た時に精霊も行動したわけで。


「何かスイッチでも押してるのかな私」


 クエスト発動のスイッチとか。

 そもそも、戦闘以外のクエストぽいものは私がやっているわけだし。……まさか、分担してるの?

 考えても答えはわかりようがない。

 とにかく紅茶で出来る限りのことをする。それしか私にはできないのだ。


 あと、あんまり突き詰めて考えてもいられなかった。

 戻りはそこそこ急いで歩かなくてはならなかったからだ。


「馬を待機させている所へたどり着いたらどうにでもなるから、そこまでがんばって」


 フレイさんが優しげなことを言いいつつ、私を厳しく追いたてたので、ぜーはー言いながらも置いて行かれないように必死に早足で進んだ。


 なにせフレイさん達は身長が高いから、足の長さも私よりずっとあるわけで。

 当然ながら彼らの一歩は、私の一歩より大きい→追いつくためには倍足を動かさなくてはならない→相手が早足だと、こちらは小走りになる。

 おかげで休憩した場所まで戻った時には、足も疲労でがくがくしているし、息はきれているし、頭ももうろうとしていた。


「はいお疲れ様」


 フレイさんが笑いながら私を抱えて馬に乗せてくれる。もう、気分は毛布のかたまりだ。

 ぐでっとした毛布のかたまりが自分だと思えば、抱えて馬に乗ってくれることも、もうどうでもいいような気がした。落ちなければそれでいい。

 だって口から魂が抜け出そう……。


「もう少し、体力をつけた方がいいのではないですか? 彼女は」


 やや心配そうに言うイーヴァルさん。優しいね。だけどゆっくりでいいとは言わなかったので、その辺はきっちりしている人である。

 そしてイーヴァルさんの言う通り、騎士団の人と行動するのなら、私はもっと体力がないと無理だ……。


「これから毎日、訓練に参加させてはどうですか?」


「俺たちの訓練にかい? さすがにそれは無理だろう」


「初めからそれは無理でしょうけれど。とすると、誰かに彼女を鍛えさせるとか」


「誰がやるんだい?」


「あなたでは? 確かユラ係でしょう」


「ユラ係って何だよ。オルヴェ先生が適当に言ったやつだろうそれ」


「団長も言いやすくて、たまに使ってますよ。ユラ係のフレイは、と」


「団長、地味にひどいな……」


 私を抱えたフレイさんと、イーヴァルさんが馬を歩かせながら話している。

 うう……なんか楽しそうですねお二方。


 でも疲れ切った私には、返事をすることも、二人の間に割って入って『ユラ係』という呼称に異議を申し出ることもできない。

 揺れる馬の上で、荷物よろしくフレイさんに抱えられたままだ。


 くっ……。今度紅茶を飲みに来た団長様に抗議するんだ。なんか、常にお世話をしなくちゃいけない問題児みたいな呼称じゃないですかと。私暴れたりいたずらしたりして、困らせていないですよ。

 ただそう、変な実験をされたせいで、魔法って感じと素直に言えない能力やスキルがあったりして、そのせいでちょっと団長様を眠らせたりもしちゃったけれど。


 うわああああ、私は正真正銘の問題児じゃないかあああ。

 だめだ、抗議すらできない……。

 目からしょっぱい液体が流れ出てきそう。

 ごめんなさい……。帰ったらがんばって運動します。


 自分の心の中で答えを見出した私は、結局何一つ言わないまま、騎士団のお城に連れて行ってもらったのだった。

 

 お城に戻ると、門の前にいた騎士さんにびっくりされた。


「え、怪我したんですか?」


「違うよ。歩き疲れたみたいなんだ」


「まぁ女の子だからね……」


 騎士さんにはかわいそうにという目を向けられたので、同情してもらえたらしい。良かった。

 軟弱者めと言われたらどうしようかと。

 その後も、通りすがりの騎士さんに「ユラちゃん怪我したのか?」と聞かれることになって、さすがに私は恥ずかしくてたまらなくなった。


 ごめんなさい、怪我じゃないんです、ただ元ひきこもりには騎士さんのペースに合わせて森の中を走り続けるのは辛くてですね。精根尽き果てたというか。

 でもこのままじゃマズイ。こっぱずかしい。さすがに歩いた直後よりも回復はしているのだから、甘えていてはいけないのだ。

 私はがんばって姿勢を正した。


「大丈夫かい?」


 フレイさんが心配そうに尋ねてくれるけれど、問題ないと答えるしかない。

 このままでは城中に、私が怪我をしたというデマが広まってしまいかねない。もしくは、体力がなくてぐったりしていたという話が。どっちもよろしくない。


 そうしてへろへろしながらも、なんとかフレイさんの支えなしの状態で、城の居館までやってきた。

 そこには、誰かから戻って来たことを聞いたのか、団長様がオルヴェ先生と一緒に待ち構えていた。

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